「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

出初式列に災害救助犬 小林邦子 「滝」3月号<滝集>

2012-03-31 05:58:12 | 日記
 東日本大震災の津波で瓦礫と化した街で生存者の捜索にあ
たった災害救助犬が消防隊の一員として出初式の行進に三頭
加わっていました。作者は救助犬へのありがとうの気持ちを
込めて掲句を詠まれたのだろうと思いました。私は、震災発
生の翌日から救助犬は仙台で捜索に当たり、その中に瓦礫で
足をけがしてもひるまず、水の中も泳いで捜したという「金
剛丸」という救助犬のいたこと。そしてその犬の死亡を後で
知りました。作者には列の中に「金剛丸」も見えていたのか
もしれませんね。(H)

独り事みな雪虫になる日暮 相馬カツオ 「滝」3月号<滝集>

2012-03-29 06:29:37 | 日記
 この句は解釈を持たないかも知れないが、念のために一言
二言を費やして置く。ふともらした独り事がみな雪虫になっ
てしまう晩秋の寂しい日暮れであるなあという感慨。人生の
晩秋を迎えつつある中、見えるものみな雪虫のように懐かし
くも儚く消えてゆくが、それも又楽しからずやと達観してい
るようだ。(赤間学)

子鈴鳴る成人の日の交差点 田口啓子 「滝」3月号<滝集>

2012-03-28 06:18:59 | 日記
 成人の日の交差点には勿論成人式に向かう着飾った若者が
見えてくるが、大人への道への分かれ道としても機能してい
るように思う。「子鈴鳴る」には躍動感や、若者が一時も離さ
ない携帯電話のストラップの鈴などが思われ、若さの象徴と
して配されたかと思う。眩しいほどの二十歳という年齢への
憧憬も含め、この交差点は明るくて賑やか。(H)