「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

初晴や海を真横に一輪車 赤間 学 「滝」3月号<滝集>

2011-03-31 23:51:43 | 日記
 橋本多佳子の<乳母車夏の怒濤によこむきに>を下敷
きにした句であろうか。しかし、夏と冬との相反する季
節、乳母車と一輪車の差異。また、同じ海の景でも、表
現の違いがあり、多佳子句と似て非なるものがある。揚
句は、日常的な海の大景に非日常的な一輪車を配した構
図のすっきりした句であり、元日の晴れを意味する<初
晴>により何とも清々しい句となった。私も四十歳代前
半、一輪車に挑戦する機会があり、何度か試みたが結局、
乗れずじまいに終わった。(M)

引き返すこと考えてゐる雪の道 太田 杖 「滝」3月号<滝集>

2011-03-30 23:51:23 | 日記
 雪の中を出掛けて来たが、雪は更に強くなる。「どうしよ
う」と迷う気持ちは出かける時すでにあったが、少々無理を
しても行かなければならない何かがあったのだろう。意を決
して出たが、迷いは引き返すことを考える所まで至っている。
しまく雪の中で葛藤する心が詠まれ、共感が容易い。(H)

底冷えや女の別れいさぎよし 齋藤伸光 「滝」3月号<滝集>

2011-03-29 22:08:11 | 日記
 別れると決めたら、女性は男性ほどに恋をひきずらないと
は言われるが、あまりのそっけなさに、驚いている作者だろ
うか。しんしと冷える寒さに、そのダメージを感じるが、女
性はたぶん「ふられた」を恋歴に残したくないから、先回り
して潔い別れを演出しているだけ。だって私は一度好きにな
った人はズーと好きです。(H)

人日や厚く死海の泥パック 松ノ井洋子 「滝」3月号<滝集>

2011-03-27 21:44:40 | 日記
 かなづちの私でも体が浮く死海。高い塩分濃度により、殺
菌効果に優れ、カラダのあらゆる不調を解消する奇跡の水は、
まさに生命力の源です。泥も例外ではありません。作者は「き
れい」と思っていただきたい方と会うのでしょうね。いつもよ
り厚く泥をぬって、おうちエステです。人日は一月七日。万病
を除く七草粥がくつくつ煮えている音が聞こえるようです。
健康管理は万全です。が、目と口のまわりだけ残して真っ黒
な顔。ドアチャイムが鳴ったら困りますね。(H)