「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

ふるさとの小さき山も眠りたる 庄子紀子 「滝」1月号<滝集>

2014-01-31 04:58:15 | 日記
 冬の趣を強くする山が、「も」と「たる」よって強まる景。
子供の頃のテリトリーだった山までも眠りに付いて、唇にシ
ィーと指を当てて誰かと頷き合っているのかもしれませんね。
静かな故郷の佇まいが詠まれて安らぐ句ですね。(H)

洋梨の断面ムンクよぎりけり 鈴木幸子 「滝」1月号<滝集>

2014-01-30 04:59:53 | 日記
 言われてみればなるほどな断面ですね。その発見の目も、
「切り口」ではなく「断面」としたことにも、作者の俳人と
しての修練を思いました。
「ムンクの叫び」は、描かれている人物が発しているので
はなく「自然を貫く果てしない叫び」に怖れおののいて耳を
塞いでいるのだそうですから、震災の惨事にまで思いが膨ら
んで詠まれた句かもしれませんね。(H)

凩や掃きのこしたる一つ星 及川原作 「滝」1月号<滝集>

2014-01-28 05:18:22 | 日記
 凩は木々の葉っぱを飛ばし、積もった落葉をも舞い上げる
初冬の強い風が吹き荒ぶ。落葉掃きも風情があるもの、その
後の落葉焚きが子供の頃の楽しみであった。今は環境問題で
落葉焚きが出来ないのが残念である。
 凩という大きな箒が夜空を掃き清めたが、薄暮の空にダイ
ヤモンドの如く光はじめた、「一つ星」を凩は掃けなかった
のである。宵の明星が西の空に輝きを増してくると、夜空に
は冬の星座が灯りはじめ、満天の星空へと輝きはじめる。
 星めぐりのメルヘンの世界へ誘う。(今野紀美子)

ランボー忌ビニール傘の中の空 赤間 学 「滝」1月号<滝集>

2014-01-27 04:06:30 | 日記
 予期せぬ雨に買ったビニール傘を透かして空を見ている作
者。<巷に雨の降るごとく/わが心にも涙ふる/かくも心にに
じみ入る/このかなしみは何やらん?>と堀口大學により訳
されたランボーの詩から季節は分かりませんが、詩全体を流
れる哀切が晩秋の雨の寂しさと良く合うと思いました。まだ、
いろんなシーンで、お兄様を亡くされた愁傷にかられてしま
う作者なのかも知れませんね。(H)