「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

土佐犬の紅白の綱草萌ゆる 服部きみ子 「滝」6月号<滝集>

2013-06-30 05:11:19 | 日記
 化粧まわしをした土佐犬の横綱姿ですね。紅白の綱は引き
綱で、左右で人が握っています。土俵入りは、その大会時に
横綱になった犬を披露するためのものですから、化粧回しの
下は咬み傷だらけなのかもしれません。闘犬に虐待に近いよ
うなイメージを持っていましたが、土佐闘犬は、闘うことの
好きな犬であり、皆尾を振りながら闘技をしているそうです。
きちんとしたルールがあり、犬のダメージが深くならないよ
うに配慮され、獣医師が治療にあたるそうですから、私はボ
クシングと似ている気がしました。「草萌ゆる」という「下
萌」の傍題は、若い草の芽吹く勢いをより強調しているよう
な趣があり、明るい躍動感が感じられ、戦いを制した土佐犬
の晴れがましさに良く合っていますね。(H)

惜春や紅型の蝶とび出しぬ 大友みつ子 「滝」6月号<滝集>

2013-06-28 04:30:19 | 日記
 その当時、ホテルのお食事券付の着物や宝石の展示即売会
があり、分割払いという買いやすい方法が流行していた。姉
について着物の展示会へ行ったところ、姉は下見をしていた
らしく即、ひわ色の訪問着と螺鈿入りの帯等の一揃いを買っ
た。私もつられて、明るいからし色の地に、赤やみどり、黄
色や、えんじ色で花や鳥を染めた沖縄独特の紅型に魅かれ買
うか買うまいかと迷った。しかし、数日前テレビで目にした
岸恵子のシルバーフォックスのコート姿がちらつき、同じく
らいの値段ならと、結局その一隅にあったシルバーフォック
スのコートを買うことにしてしまった。ネームを入れてもら
い三週間後に届いたコートは、あの時決めたコートと、どこ
かが違っており、着るたびに毛が少し抜けるのである。その
上、動物愛護協会とかが毛皮反対の声をあげだしたので何と
なく着るのが憚られ、今は洋服ダンスに眠っている。あの時、
紅型染めの着物に決めていたらと思わないでもない三十年前
の話である。(遠藤玲子)

青饅やヒッチコックの二重顎 小林邦子 「滝」6月号<滝集>

2013-06-27 04:36:09 | 日記
 青饅は、胡葱や分葱をさっと茹で、酢味噌で和えて色と香
を味わう、酒好きにはたまらない一品だが、味覚はそれぞれ
なので句にするのは難しい。しかし、掲句は、ヒッチコック
との取り合わせである。青饅を食べた時の食感と、あのぬめ
っとしたヒッチコックの目と二重顎の取り合わせは絶妙。
(遠藤玲子)