「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

小鳥来るカイザー像の髭の先 鈴木ひびき 「滝」10月号<滝集>

2014-10-31 04:48:27 | 日記
 カイザーは皇帝・帝王を意味する言葉。日本では天皇にあ
たるでしょうか。髭を蓄えているのですから明治天皇像を思
いました。小鳥が秋と言う寂しさを運んできて、一層孤独な
空気と威厳を像に引き出しますが「小鳥来る」の愛らしい響
きが、髭をくすぐったがっているとも思えて楽しい句。(H)

日高見の朽ちし祠や稲光 佐々木經義 「滝」10月号<滝集>

2014-10-30 04:20:18 | 日記
 日高見の名前の由来は、日輪を高く仰ぎ見る意味で、日本
列島全体が、日高見国。「大和」または「蝦夷」の地を美化
して用いられた語。とされ、嘗て河北新報でNHK大河ドラ
マ「炎立つ」に関連して「日高見の時代」という連載があり、
その中で石巻の「日高見」という酒が紹介されたそうである。
そんなことから<地>を思うと、「朽ちし祠」から東日本大
震災を思わないではいられない。夜空の彼方に、音も雨も伴
わない突然の閃光は稲を実らせると信じられて来た。米どこ
ろの明るい兆しとして配されたと思う。塩害を受けた田圃に
黄金色の景色を思い描かせる句。(H)

秋暑し小石ばらまくやうな雨 木下あきら 「滝」10月号<滝集>

2014-10-29 04:48:37 | 日記
 季語に込められたムシムシと嫌な気分に、不安も内包して
雨を詠みあげている。
 平成20年に「ゲリラ豪雨」が新語・流行語大賞に選ばれ盛
んに用いられるようになったが、気象庁の予報用語では、一
時間雨量80㎜未満の雨を「滝のように降る」と言い、80㎜以
上の雨を「猛烈な雨」と表現し「息苦しくなるような圧迫感
がある。恐怖を感ずる」と人の受けるイメージをもとに雨の
強さと降り方を言う。さすれば「小石ばらまくやうな雨」も
豪雨を表す用語として言い得て妙ではあるまいか。(H)

遠花火少年の日の蹉跌かな 佐藤憲一 「滝」10月号<滝集>

2014-10-28 05:03:32 | 日記
 蹉跌とは挫折のこと。少年の挫折とは、多分受験に失敗し、
いろいろと悩んだことをいうのだろう。遠花火を聞きながら
少年時代の挫折を懐かしく思い起こしている句と思った。人
生には誰でも二度・三度の挫折を経験している。その挫折を
乗り越え、ひと廻りもふた廻りも成長している。苦しかった
こと、悔しかったこと、すべて人生生きる為の薬となってい
る。現在自分があるのは挫折があってと考えるのは考え過ぎ
だろうか。少年時代の試練の一つ、これ一つで終わらないの
が世の常である。(鈴木弘子)

アルバムの角のほつれや終戦日 横田みち子 「滝」10月号<滝集>

2014-10-27 04:07:11 | 日記
戦後六十九年にもなると、戦争を知らない世代が大半であ
る。昔のアルバムを開いて子や孫に思い出と戦争の悲惨さを
語り繋がらなければならない。戦争を二度と起こさない為に
女は強く・賢くならなければならない。子や孫を戦場に送ら
ない為にも。アルバムの角のほつれで、在りし日を懐かしみ、
亡くなった人達への追慕を感じました。(鈴木弘子)