「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

月涼し庵訪なふ影のあり 小林邦子 「滝」9月号<滝集>

2011-09-30 19:34:52 | 日記
 旅のお作だろうか。夏の月に涼しさを感じている作者。一
枚の絵のように動かない庵のある静かな景に訪ね来た影。こ
の影は人ではなく、獣と思うが、それも見えているというよ
りは、茂りの揺れに感じた気配としての影のような気がする。
月の明から、影の暗に絞られた視線。少し感傷的になってい
る作者と思う。(H)

夕星や屋号の褪せし鰻筒 及川原作 「滝」9月号<滝集>

2011-09-28 20:09:56 | 日記
 何処かの街を散策中のお作だろうか。鰻を焼く匂いがして
いる。もう夕星が出る時間。お腹の虫に急かされて見つけた
鰻屋の入り口に、屋号の褪せた鰻筒が飾ってあったのだろう。
その古さに目が留まったという事は、店舗が新しいのではな
かったのだろうか。1メートルはある長い竹筒に褪せてはい
るが屋号を読み取った。天然鰻を出す老舗なのだと、もう入
口の戸に手がかかっている。(H)

ふりむいてふと昼顔と気付きけり 服部きみ子 「滝」9月号<滝集>

2011-09-26 12:21:25 | 日記
 誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。真夏の真っ白
な時間に日傘をさして佇む作者を思った。それも何やら考え
事をしていたらしい。なにかの気配を感じて振り向くと、昼
顔。感じたのはたくさんの昼顔の視線だったのかもしれない。
不意に広がるピンク色が、考え事は然もない事と、言ってい
るようである。(H)