「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

譜面より小春日和の流れ出し 倉基七三也

2018-01-27 05:30:58 | 日記
 一読、寒さにこわばっていた身体がほぐされていくような句である。♪ラララ赤い花束 車に積んで・・・♪そんな歌を思い出した。譜面という四角四面の白さと、オタマジャクシのような音符に「冬の中の春」を感じ取ったのだろう。季語の持つ暖かさ、明るさ、優しさに、胸の中までほっこりするような、けれども、長くは続かない小春日和のはかなさとも響きあって、コンサートが終わって会場を出た時の外気の寒さを、なんか、思ってしまう句でもあった。(博子)

綿虫やゆつくり下りる遮断棒 鎌形清司

2018-01-25 06:21:48 | 日記
静かに舞っている綿虫は幻想的ですらあり、そっと掌に受けてみたい衝動にかられる。そんな気分が遮断棒にもあるのか「ゆっくり下りる」と雪虫を驚かせないようにと気遣っているように読めるが、綿虫「に」、ではなく「や」である。それに、遮断機がカンカンと鳴っているはずで、決して静かな景ではない。たぶん綿虫が思わせる雪の季節の到来と、遮断機が列車の通過を告げて遮断棒を降ろすことに「感知」の呼応があるのでしょう。配合の妙ですね。そして、第24回滝奨励賞おめでとうございます。(博子)

一病も多病もつどひ石蕗の花 鈴木清子

2018-01-18 05:16:17 | 日記
 私は忙しくて市民検診にすら行かないので病気は持っていないことになっているが、還暦祝いの時の同級会を思い出した。病気談義と介護談義と年金談義ばかりだった。それでも皆、元気だから集えるのだ。暗緑色の葉と鮮やかな黄色の花をもつ「石蕗の花」に暗さと明るさを託して、季語使いが上手いですね。(博子)