「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

サマータイム覚えきれない英単語 瀧川實樹男 「滝」8月号<瀑声集>

2015-08-22 04:39:33 | 日記
 作者が英単語を勉強努力している姿がこの句から見える。
しかも季語が「夏」でなく洒落て、「サマータイム」の英
語である。恐れ入った。
 日本の英語教育は、リーデングの英文読解は出来るもの
の、スピーキング、ヒアリングの英会話が問題であること
を言われて久しい。まさに受験勉強の為の英語教育であっ
たことは否定できない。近年この弊害を打破しようと英語
教科書の中味がオーラル中心に変わっているものの成果が
出てきてない。そこで文部省は、小学生から英語を勉強す
るように正式科目に決定している。
 イフの世界だがあの第二次世界大戦でアメリカに勝利し
日本国が世界の覇者になっていたら、日本語が世界の公用
語になっていただろうか。言語も歴史的にみれば勝利者の
論理である。(梅森 翔)


手品師の普通の両手はたた神 小林邦子 「滝」8月号<瀑声集>

2015-08-21 03:56:05 | 日記
 テレビで見る手品師をみると、話術で人を笑わせ煙に巻く
タイプと本格的な芸で人を驚かせるタイプの二つに大別され
る。いずれにしても手の指の繊細な動きにより一瞬見る人を
狂わせ驚かせている。手品師の芸の命は手(指)に掛かって
おり、文字通りの手品師である。
 この句のように、手品師の手は一般人の手とほとんど変わ
りはない。手品には隠された種があると思うが、長年の手指
の訓練によってあのような離れ業ができるのであろう。この
句の季語の「はたた神」は夏の季語の雷である。一瞬の雷鳴
や閃光で人を驚かせてその隙に技を完成する手品と共通して
いる。地震、雷、火事、親父の怖さの順番が、近年親父の権
威失墜で落ちているのは容認できるが変って放射能が一番に
なる世の中が来ないことを祈るだけだ。(梅森 祥)

ふる里の鯉も被曝や夕焼雲 冨澤栄子 「滝」8月号<滝集>

2015-08-20 04:52:31 | 日記
 二〇十一年三月十一日、あってはならない事がおきてしま
った。大地震による原子力発電所の放射能の拡散である。周
辺の住民は全国に避難を余儀なくされ、その状況はいまも続
いている。だが被曝したのは人間だけではない。環境省は直
後から、野生の動植物、メダカ、ミツバチ、カエル、ネズミ、
蝶、イワナは胃の内容物、東北サンショウウオの卵、松、杉
等あらゆる生物の観測を、中長期的に続けている。作者の親
しんできた鯉も例外ではない。季語の夕焼雲がせつない。
 これを書いている今日は八月六日。まもなく広島平和記念
式典が始まる。福島のこともいっしょに考える日である。(小林邦子)

たまはりし真綿のやうな昼寝なり 谷口加代 「滝」8月号<滝集>

2015-08-19 03:47:49 | 日記
 今年のこの夏の暑さは尋常ではない。身体じゅうが溶けて
しまいそうだ。が、仕事はしなくてはならないし、家中の雑
用も片づけも、すこし省略はするが、やらねばならぬ。テレ
ビを見ながら簡単に昼飯をすませたが、テーブルに突っ伏し
たか、そのまま横たわってしまったか、眠ってしまった。ま
さに賜ったのである。中七の「真綿のやうな」がえも言われ
ぬ表現で、作者の寝顔が想像できる。昼寝の習慣のない私だ
が、こんな昼寝なら、賜ってみたいものである。(小林邦子)

子燕の骸にとどく怒濤音 佐藤時子 「滝」8月号<滝集>

2015-08-18 04:23:02 | 日記
 子燕が大きな口をいっぱいに開き、親から餌を貰おうとす
る様子は、いつ見ても愛らしい。首を伸ばし過ぎてバランス
を崩し、巣から落ちてしまったり、蛇やカラスに襲われて命
を絶やす子燕もいる。親にはどうすることもできない悲しみ
を癒すのは、遠く聞こえる波音か。近くに逆巻く怒濤か。
 もしかしたら、震災で海に消えた子ども達の魂に応える怒
濤であるかもしれない。(小林邦子)