「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

しゃぼん玉弾け世界のどこかでテロ 鈴木三山 「滝」7月号<滝集>

2013-07-31 04:33:47 | 日記
 春光を反射して虹色に輝きながらふわふわ飛んで、パチン
と弾けるシャボン玉。はしゃぐ子供の声が聞こえ、それを見
ている大人の笑顔が、幸せな家族のひと時を思わせるが、そ
んな幸せに割り込んでくるテロ事件。最近は私達の生活のす
ぐ傍まで迫ってきているような危機感を持たずにはいられま
せん。テロリストにも、それぞれ何らかの主義、主張、目的
があるのでしょうが、暴力行為により、罪もなければ関係も
ない多くの人々を、犠牲にする行為は許しがたい。天変地異
に遭うことは避けられないにしても、せめて、人的な噴煙の
あがらない平和な世界であってほしいと願う作者でしょう。
(H)

しゃぼん玉弾け世界のどこかでテロ 鈴木三山 「滝」7月号<滝集>

2013-07-30 04:58:50 | 日記
 思わず流行語で「今でしょう!」と言ってしまう句である。
世界は今、惑いの時代の中に在る。「アラブの春」も束の間、
エジプトで軍事クーデターが起き中東は争いが絶えない。ユ
ーロ圏の金融政策のミスから連鎖して世界の経済は不安定。
中国はバブルが弾け「影の銀行」の拡大がリスクに。尖閣問
題が示すように中国ほど狡猾な国はなかろう。エネルギッシ
ュに大股で歩いていたはずのアメリカも惑っている。ボスト
ンマラソンのテロ、デトロイト市の財政破綻。リトルドラゴ
ンと呼ぶアジアの国々やW杯を待つブラジルも荒れている。
揚句は、こんな有様を斜に構えて見た鮮度抜群な句。(あいざわ静子)

女湯のピカソの眼ほととぎす 及川原作 「滝」7月号<滝集>

2013-07-29 04:25:32 | 日記
 女湯を覗くピカソかと動転したが、そんなはずはなくピカ
ソ展のポスターでも貼ってあったのでしょう。ピカソの挑み
かかるような三白眼の大きな瞳が睨んでいます。そこからの
連想の非凡に惹かれた。「アヴィニョンの娘たち」というピ
カソのキュビスムの発祥に繋がる絵は、セザンヌの「大浴場」
という作品を参考にしたとう説があり、そのセザンヌは人間
と自然の幸福的調和がテーマであったそうで、川、木々、空、
それに裸婦が描かれています。そこに時鳥を鳴かせて見せた
作者のセンスに痺れました。(H)

天蚕のゆれて大地の軋みかな 加藤信子 「滝」7月号<滝集>

2013-07-27 05:18:25 | 日記
 繊維のダイヤモンドと呼ばれる絹糸を作る天蚕は白い家蚕
よりかなり大きな青虫で大人の中指ほどあるという。淡い緑
色の糸は光沢があり優美。中でも樟蚕糸は細く強いので医療
用縫合糸や釣り糸に用いられている。桑の葉での飼育ではな
く地面にクスギ、コナラ、柏等の飼料樹を植え網で覆って幼
虫を放し飼いにする。以上は天蚕?と興味をもってネットで
検索し初めて知ったことである。安曇野辺りが産地だそう。
列島は3.11以来未だに微震が収まらない。好物の葉を食べ緑
の美しい繭をつくることのみに生命を懸ける虫。その営みが
いかに尊いものであるのかを考えさせてもらった。(あいざわ静子)