「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

冬銀河サービスエリア基地めいて 加藤信子

2021-02-28 05:57:56 | 日記
サービスエリアに天球に冴えつつ透き通るように輝く冬銀河。冬銀河はメルヘンチックな感じがする季語だと思うが「基地」と、最初は何やら自衛隊車両が止まっているようで物々しく思われたが、行動の基点となる所と解せば、たくさんの車が冬銀河を見に訪れたサービスエリカかと思えるほどに止まっている。そんな感じだろうか。この冬は雪の夜が多くてなかなか見られなかった冬銀河でしたね。(博子)

数へ日や消毒済みの籠の嵩 鈴木清子

2021-02-25 18:27:17 | 日記
日数の残りも少ない年末。コロナ禍で帰省を控えた人も多く、東京に暮らす長男家族も叔母家族も来なかった。それでもお正月を迎えるための買い物には行かなければならない。「消毒済みの籠の嵩」はスーパーの入り口に積んである「買い物カゴ」でしょう。手指消毒液も置かれ、感染対策ための商品はなるべく手に取らずに見て下さいなどの注意書きも貼ってある。皆マスクをし、静かに買い物をしている異例の年末の光景が思われた。安全に買い物が出来るように気遣って下さっている事への感謝の句として読ませて頂いた。新型コロナウイルス感染のリスクにさらされながら私たちのために働いてくださっている方々に感謝し、そんな方々の負担を増やさないために自分の出来ることをしょう。(博子)

夜半の冬宇宙の砂の玉手箱 八島敏

2021-02-23 04:05:41 | 日記
さえざえと空気が澄んだ12月の夜半、小惑星リュウグウの試料を収めた探査機「はやぶさ2」のカプセルが豪州に着地、無事に回収された。6日午後の記者会見で、「6年間の宇宙飛行を終えて、今朝私たちはオーストラリア・ウーメラの地に『玉手箱』を舞い降ろすことができました」と語られたことで、玉手箱イコール「はやぶさ2」のリュウグウの砂が採取されたカプセルが同義語になったと言っても叱られはしないだろう(?)。カプセルは、神奈川県相模原市のJAXA 宇宙科学研究所に運び込まれ、黒っぽい砂の粒が多数、確認されたそうだ。その砂粒から太陽系の初期にどのような物質が存在したのかや太陽系の歴史の解明も期待できる。小惑星の地球衝突を回避するための手段の解明にも繋がるという。壮大すぎて、何やら私のなでは分かりかねる資料としての砂ではあるが「はやぶさ2」の帰還にワクワクしたことだけは確かである。(博子)

和紙人形一体仕上げ冬籠り 服部きみ子

2021-02-21 04:09:40 | 日記
パッときれいな千代紙が思い浮かび、外に降り積んだ雪との対比もあって美しい句。
ひと冬をかけて仕上げた大作への充実感が伝わってくる。コロナ禍で、発表の場がなかなか持てない今を残念にも思うでしょう。両親の器用のDNAを全部持って行った私の妹は『きっこまざぎ教室』という「つるし飾り教室」や「布小物教室」「アクセサリー教室」などを主宰しているが生徒さんの発表の場に苦労している。冬籠りが終わってもコロナ籠りはまだ続きそう。手仕事で紛れる時間は心の糧になるのかもしれませんね。(博子)

笹鳴やむかし此処から海の底 齋藤善則

2021-02-19 04:04:16 | 日記
冬の間餌を求めて人里で暮らす鶯。茂みからチャッ、チャッ、という地鳴が聞こえているのだろう。今作者がいる「此処」が何処かは分からないが地球が誕生してから約46億年。気の遠くなるような長い年月をかけて変化してきた現在地であり、地殻変動や火山活動など、今も変化し続けている地球を思わせられる句である。自然の中で暮らす鶯と人間が生き物として同列に置かれ、生きるための「適応力」のようなものを思った。2月13日の夜11時過ぎに起こった福島県沖を震源とする震度6強の揺れが東日本大震災の余震とみられるとの発表に驚いたこともこの句の鑑賞に影響を与えている。今、コロナ禍で「命を守る行動をとってください」と、毎日テレビから流れるメッセージは地震や台風の時にも使われ「生きて下さい」と激励されている感じがする。それを願って奮闘してくださる方々がいらっしゃることに感謝しなければならないと思う句でもあった。(博子)