「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

噴水のてっぺんにありモーツアルト 小野憲彦 「滝」9月号<滝集>   

2012-09-30 05:18:37 | 日記
 音楽に合わせて噴水の水が上下したり、模様の組合わせが
変わったりする噴水ショーの光景でしょうか。外国の広場か
もしれませんね。モーツアルトの軽快なピアノ曲「トルコ行
進曲」が浮かびます。てっぺんという措辞が噴水の勢いを感
じさせモーツアルトともぴったり合っていて、夏らしい青空
も見える句と思いました。(中井由美子)

夏休み星のしたたる島に着く 服部きみ子 「滝」9月号<滝集> 

2012-09-29 04:28:49 | 日記
 満天の星空、船に乗り南の小さな島に着いた少年たちにど
んな冒険が待っているのだろうか。したたるの季語が自然豊
かな孤島を連想させ、夏休みの季語がわくわくする物語の始
まりを予感させる。少年のような冒険心をいまも持ち続けて
いる作者なのでしょう。(中井由美子)

さまざまな靴音過る桜桃忌 村上幸次 「滝」9月号<滝集> 

2012-09-28 05:24:47 | 日記
 歩き方にも人それぞれ個性がある。足音にも確かに、その
人らしさを感じる。作者は駅のベンチにでも座っていて、忙
しく通り過ぎる人々の靴音を何気なく聞いていたのだろう。
今日が太宰治の命日だと気づいた作者は、太宰の人生を思い
ながら、行き交う人々の靴音に人生の哀愁を感じたのではな
いだろうか。(中井由美子)

銅鏡の百の行方や夕ひぐらし 菅原鬨也 「滝」9月号<飛沫抄>

2012-09-27 04:27:01 | 日記
 揚句、百の銅鏡とは、「魏志倭人伝」にも記されている通
り邪馬台国の女王、卑弥呼が皇帝から金印とともに下賜さ
れたものだろう。銅鏡は日本各地で出土するが、この卑弥
呼の銅鏡と断定できるものは出土されていないようだ。そ
れも理由の一つで邪馬台国の近畿説と北九州説はいまだに
決着がついていない。どちらの説も資料を読むと興味深い
内容だ。謎が多いだけなおのことロマンが広がる。夕暮れ
時の蜩の声が一層作者を古の都に誘っているようだ。(中井由美子)

捻花のねぢれ具合の素直なり 宇野成子 「滝」9月号<滝集>

2012-09-26 04:49:19 | 日記
 捻花は草地や畦道に、細い茎に淡紅色の筒状の小花が捩れ
たように咲きあがっていく、そんな咲き方が名の由来にもなっ
ている。咲いているとつい、しゃがみ込んで捻じれ具合を確認
したくなりますね。成長と共に花が螺旋状にのびて行くこの花
の見ごろは、そう、捻じれ具合の素直な頃ということになりま
すね。「あれ」、と思って、「そうか」、と思う、楽しい句でした。(H)