「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

百歳のラメ入り化粧秋うらら 中井由美子

2019-11-23 03:29:20 | 日記
「化粧療法(メイクセラピー)」ですね。化粧やおしゃれをすると、表情も気持ちも自然と明るくなり、外へ出てみたくなり、外出が増えれば、人と交流する機会も多くなり、社会とのつながりを保つことができ、健康寿命を伸ばしたり、認知症を防いだりする効果が期待できるのだそうです。敬老の日に詠まれた句かも知れませんね。今年、100歳以上の高齢者は7万1274人となったそうだ。春の「麗か」にかよう、美しく輝き、心がうっとりするような日和を言う「秋うらら」が配されて、「ラメ入り化粧」という特別感が存分です。(博子)

疣神の拉げし柄杓萩の風 及川源作

2019-11-21 03:04:04 | 日記
 疣神(いぼがみ)は私の暮らす町にもあり、何度かお参りをしたこともあります。簡素な建物で自由に入ってお祈りをします。お願いした疣が取れたら年齢と同じ数の鶏卵をお礼として置いて来るのですが、管理者はいるようなのですが、いつ行っても誰もいないのです。詠まれた疣神様もひしゃげた柄杓がそんな佇まいを思わせます。風に揺れる萩の風情も手伝って尚更です。因みに、ある皮膚科医のブログに「教科書には治療法の最後に暗示療法という記載があり疣神に通じるものであるかもしれない」と書いてありました。「信じて願えば・・・」という事でしょうね。(博子)


何をしに出て蚯蚓のミイラかな 塗 守

2019-11-17 03:50:21 | 日記
灼熱の太陽の下、蚯蚓が路上で干からびて息絶えている痛々しい姿を誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。その「何故こんなところで・・・」が句になり、詠めそうで詠めない句に「だよね~」と、声に出して言ってしまった。さてその理由をこの機会に調べてみると。環形動物の蚯蚓は、呼吸のための装置を持っていなく、からだの表面全体で呼吸をする皮膚呼吸。呼吸器が無いために、雨水が溜まった土の中ではやがて息苦しくなり、また、土が太陽光で熱くなった時、体温調節のできない蚯蚓は必死で地上にはい出てしまうのだそうです。「生きるための逃避の結末としてのミイラ」という事になるようですが、地中深くへの避暑という蚯蚓のほうが圧倒的に多いのでしよう。そうでなければ路上が蚯蚓だらけになってしまう。結局、ダーウィンが40年も夢中になった蚯蚓の生態を簡単に理解できるはずもないというと事になりますかね。(博子)

スクラムの骨の軋みや鰯雲 佐藤憲一

2019-11-15 03:02:55 | 日記
 スクラムはラグビーの代名詞。ラグビーをよく知らない私でも、100kg以上はあろう8人×2チームの選手のかたまりが押し合ってボールを確保する様子は「骨の軋み」と詠まれて激闘を想像させます。今年はラグビーワールドカップが初めて日本で開催され、兜の前立てをモチーフにした、一目で日本と分かる日の丸カラーに桜のエンブレムのジャージは史上初のW杯8強進出を遂げました。その戦いぶりを鰯雲が受けて、観ている側の心情を語っているのでしょう。手に汗を握る好試合に、晴々とした心で拍手を送っている作者ですね。我が夫もテレビの前で一喜一憂していました。私は「スクラムによって、前列の選手にかかる衝撃は、軽トラックと事故にあったくらいすごい」と聞いて、何だか少しこわい気がしました。(博子)