「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

鉄棒のむかうは風の蕎麦の花 遠藤玲子 「滝」12月号<滝集>

2014-12-21 07:01:17 | 日記
 色彩や質感の対比、近遠。句作の時に心がけるべき奥行を
生む詠み方である。更に「むかう」と、時間がワープする。
素直に景色を写したようでいて、今と昔という作者の感傷を
思ってもいいのかもしれないと思った。宮沢賢治の目をフィ
ルターとして詠まれていているような気にもなった。蕎麦は
山畑などの痩せた土地に植えられ、雑草のような逞しさを持
ちながら、一つ一つは頼りなげな白い小さな花の集まり。真
っ白な蕎麦畑に吹く風は、子供達の頭を撫でながら物語を語
って聞かせる賢治の手のようだ。これは「鉄棒」が置かれて
いる事で教師でもあった賢治と私の中で絡み合って見えてく
るのかと思う。ファンタスティクな描写に魅かれた。(H)