「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

巻貝にもどる波音十三夜 平川みどり 「滝」12月号<滝集>

2014-12-19 05:32:50 | 日記
 潮と月は切っても切れない関係にあり、静かに満ちてくる
その潮の音と、十三夜の静謐な風景。それだけ書いて鑑賞を
終えた方が良いと思わせるような詩情を持った句であるが、
抒情の部分に触れたくなってしまうのもこの句の深さ。「巻
貝」は、樋口一葉小説『十三夜』の主人公おせきで、「もど
る」に淡い恋心を秘めていた間柄であった幼馴染の高坂録之
助との再会シーンなど思い出して、感傷的な気分をそそられ
る。十三夜の月光のみの秋の浜で、「巻貝にもどる波音」と
働いた聴覚に、私にはかなわない俳人の資質を思う。(H)