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『サクラダリセット』

2016年10月20日 | BOOKS
『サクラダリセット』
河野裕 (コウノ ユタカ)
KADOKAWA


 いわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」の青春小説ではあるのですが、きわめて複雑。
 出来事はからまり、時系列はこんがらがるので、ちょっと記憶力と思考の柔軟性が必要かもしれません。

 特殊能力を持つ人たちが住む街「咲良田(さくらだ)」。
 そんな街で、さまざまな能力を持つ少年少女が出会っていくことで物語は進んでいきます。

 「時間を巻き戻す」「未来が見える」「全ての記憶を保持する」
 最後の巻を読む頃には、読者も、幾通りもの過去と未来の記憶を持って本を読み進めていくことになります。
 彼らの能力を、本当にわずかだけれど疑似体験しているような感覚です。

 優しくて、残酷で、人を疑って、人を信じて、人を傷つけて、人を助けて、どうしようもなく恋をして、人をうらやんで、自己嫌悪して……。
 人間らしい矛盾と、若者らしい真っすぐな正しさと切なさは、けっしてライトではないのですけれど、今の若者はこういう複雑さも含めて「ライトノベル」を読みこなしているんでしょう。

 それにしても、世界を変えられるのはやっぱり少年少女なんですね。(「君の名は。」も然り)
 大人としては、彼らのその細い肩に責任と罪悪感を負わせてしまうのは不本意なんですけれど、その苦難を乗り越えられる若い人こそが世界の希望なのかもしれません。

 世界を変えてしまえるほどの力を持っていても、好きな人の「一番」が自分ではないことを許容することは難しいのだなぁ。

 シリーズは実写映画化が決まって、ライトノベルの角川スニーカー文庫版から、角川文庫でも刊行がスタートしました。
 角川文庫化では書き直されたシーンもあるいうことです。
 「加筆・修正・改題」ってあるので、角川文庫版ではそれぞれの巻にタイトルがついたんですね。
 イラストが変わってしまったのはちょっと残念。
 アニメ化の企画も進行中だとか。コミックスもあるようですから、幅広いメディアミックスになりそうです。

<角川文庫版>
(1)『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』 (発売日:2016年9月24日)
(2)『魔女と思い出と赤い目をした女の子 サクラダリセット2』(発売予定日:2016年10月25日)
(3)『機械仕掛けの選択 サクラダリセット3』(発売予定日:2016年11月25日)
(4)『さよならがまだ喉につかえていた サクラダリセット4』(発売予定日:2016年12月25日)
(5)『片手の楽園 サクラダリセット5』(発売予定日:2017年1月25日)
(6)『少年と少女と、 サクラダリセット6』(発売予定日:2017年2月25日)
(7)『少年と少女と正しさを巡る物語 サクラダリセット7』(発売予定日:2017年3月25日)

<角川スニーカー文庫版>
(1)『サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY』
(2)『サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』
(3)『サクラダリセット3 MEMORY in CHILDREN』
(4)『サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY to SAY』
(5)『サクラダリセット5 ONE HAND EDEN』
(6)『サクラダリセット6 BOY, GIRL and -』
(7)『サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA』
 
<関連サイト>
『サクラダリセット』原作特設サイト 河野裕 | KADOKAWA
コメント
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