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『死ぬ気まんまん』

2013年12月05日 | BOOKS
『死ぬ気まんまん』
佐野洋子/著
光文社文庫


 なんてまぁ、素直な人なんでしょう。
 2010年に亡くなったエッセイストであり絵本作家である 佐野洋子さんのエッセー2つと、主治医の先生との対談、そして作家 関川夏央さんの寄稿「『旅先』の人 - 佐野洋子の思い出」を収めた本です。

 『100万回生きたねこ』や『だってだってのおばあさん』『おじさんのかさ』などなど、魅力的な絵本をいくつも作った佐野洋子さん。亡くなってからエッセーを読み始めましたが、好悪も、愛憎も、酸いも甘いも思うがままに書き散らかしているようで、その率直な物言いに何度もハッとします。

 表題の「死ぬ気まんまん」は余命宣告を受けてからのエッセー。
執着や未練のなさ、潔さに驚いてしまいますし、人間観察の面白さに笑ってしまうこともしばしば。
 もう一つのエッセー「知らなかった - 黄金の谷のホスピスで考えたこと」は1998年に婦人公論に掲載されたもので、死と向き合うホスピスでの体験が描かれています。(これを書いたときは、佐野さんはまだ余命宣告をされる前なのですが、「死」というテーマで考えると「死ぬ気まんまん」と一緒に収められていることが自然に思えます。)
ホスピスで過ごす人たちとの会話、いろいろなエピソードは、いつか自分が迎える終末期について考えさせられます。

 「生きていること」が目的になって、ひたすら「がん」や老いと闘い続ける現代の医療・社会への疑問も、さらりと述べられています。「人生の質」という言葉は、まさに長期療養・終末医療の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」そのものです。
 医療が進歩して「どう死を迎えるか」の選択も多様になりました。呼吸し続けること・細胞が生き続けること・脈を打ち続けること、肉体が死んでいない時間を一刻でも伸ばすための「延命医療」が、本人・家族のためになっているのか、私もときどき恐くなります。
 そんなことを親の介護もまだしていない世代が言うと「不孝」な問題発言になってしまうかもしれませんが、余命宣告を受けていた佐野さんの言葉はスーッと受け止められます。
 好きなものを食べたり、飲んだり、素敵なものを見たり、本を読んだり、好きな人に会って語り合ったり……、少しでも「生きている幸せ」を感じられるのなら長生きしたいですけれど、意識がないような状態だったら「私」としての「人生」は終わってしまっているのじゃないかなぁ。「延命治療を希望しないこと」について、きちんと家族に伝えておかないといけませんね。
 大往生して「ピンピンコロリ」と逝けたらいいのですけれど。
 
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