MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『スクープのたまご』

2016年05月21日 | BOOKS
『スクープのたまご』
大崎梢:著
文藝春秋


 本の帯には「『週刊文春』編集長公認」の文字。
 週刊誌編集部を舞台にしたお仕事小説です。

 週刊誌のえげつなさに嫌悪感を持ちつつも、念願の出版業界「千石社」に入社した主人公。
 入社2年目で、週刊誌「週刊千石」の編集部に配属されてしまいます。

 「週刊千石」は、人に嫌われるのも発行部数もトップクラスの週刊誌。
 権力にも、広告主にも、人気芸能人にも、犯罪者や被害者、そしてその家族・知人にも容赦ない取材で敵も多い、そんなスキャンダルを売りにしている週刊誌の舞台裏で、驚くほど地道に真面目に誠実に働く人たちの姿が描かれていきます。

 多くの人に嫌われながら、それでも出版社が週刊誌を止めない理由。
 週刊誌の存在理由を、私も、今回初めて考えました。

 小説と同じぐらい人の心の奥にズカズカと踏み込む力。
 誰も知らない、隠された真実を突き止め、切り込む力。
 認めないけれど誰もが少しは持っている「出歯亀」な心を刺激する力。
 人の人生を変えてしまう力。

 正直に言えば、取材される側には決してなりたくない。
 けれど、週刊誌にしかできないことが、やっぱりあるのかもしれないと、この本を読んで思いました。(好きになれるかどうかは別として……)

 最近も、週刊誌のスクープから、テレビや新聞でも取り上げられるような大きなニュースが出てきています。
 ライバル誌に負けないように、スクープのたまごを守る編集部員たち。そして、取材する記者のたまごたちが、今この瞬間もどこかにいるのだと思うと、なんだか不思議です。



<追記>
 大崎梢さんの「千石社」を舞台にしたお話は、このほかにもう2つ。(今回の『スクープのたまご』を合わせて3つです)
『プリティが多すぎる』
 女の子向けファッション雑誌編集部に配属された男性が主人公。
『クローバー・レイン』 - MOONIE'S TEA ROOM(2012年8月の記事)
 文芸編集部の男性編集部員が主人公。

 3つとも、表紙の印象がまったく違う作品で面白いです。

 別の出版社「明林書房」の営業マンを描いた「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」シリーズもあります。

<関連記事>
『ようこそ授賞式の夕べに』 - MOONIE'S TEA ROOM
 「成風堂書店事件メモ」シリーズの女性陣と「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」シリーズの男性陣が顔合わせする1冊です。
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