MOONIE'S TEA ROOM

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『メキシコへ わたしをさがして』

2017年07月22日 | BOOKS
『メキシコへ わたしをさがして』
作:パム・ムニョス・ライアン
訳:神戸 万知
偕成社


 原題は「Becoming Naomi Leon」。
 「Naomi Leon」(ナオミ・レオン)というのは主人公の名前。
 「Leon」は「ライオン」とう意味で、ナオミのお父さんの名字でもあります。

 ひいおばあちゃんと弟と暮らしているナオミの元に、今まで音信不通だった母親がやってきて、自分の都合のためにナオミだけを引き取ろうとします。
 今まで通りの暮らしを守るため、母親と同じ権利を持つ父親を捜しにメキシコへ。

 行動力のある ひいおばあちゃんと、陽気なご近所さん、温かい親戚のみんな。
 メキシコでの日々と、お父さんとの再会を通じて、ナオミは自分のルーツを見つけ、自信をつけていきます。

 「毒親」ともいえる母親自身にも、悲しい過去があって、「悪い人」ではないけれど、親としては困ってしまう人。
 ナオミは「ひいおばあちゃんにとっての ひ孫」「お母さんにとっての 娘」だけでなく、「お父さん、そしてレオンの家にとっての 娘 = ナオミ・レオン」という、もう一つの自分を見つけることで、大きく成長します。

 「都合がいい存在だから」でなく、自分をただただ愛している人がいるということ、自分を認めてくれている存在があるということが、子どもたちにとって、どれほど大切なものかを考えさせられる話でもあります。

 各章に動物の名前が入っているのも注目。
 これは、物語を終盤まで読むと「なるほどね」って分かります。

 それにしても、トラックでアメリカ合衆国からメキシコへ行ってしまう感覚って、日本のような島国に住んでいる私からするととっても不思議な感じ。
 「壁を作る」なんて大統領もいましたが、この本を読むとメキシコとアメリカの地理的距離だけでなく心理的な距離の近さも伝わってきます。

 イラストは猫野ぺすかさん。
 前を真剣に見つめるナオミが、印象的な表紙です。
 表紙のライオンも、裏表紙の「ラディッシュの夜」の彫刻も、素敵です。