行雲流水

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塚原卜伝の「頑張りすぎるな」

2013年11月22日 | 禅の心
 剣術家の塚原卜伝(つかはらぼくでん)と彼に弟子入りを志願した男との会話です。
 男「剣術を習いたいので入門を許して下さいませんか。私は一所懸命に修行します。どれくらいで免許皆伝していただけますか」
卜伝「一所懸命にやれば、5年で免許皆伝になるじゃろうよ」
 男「では、寝食を忘れて修行に打ち込めば、何年で免許皆伝になりますか」
卜伝「寝食を忘れてやれば、10年で免許皆伝になるじゃろうよ」
 男「それじゃあ、死に物ぐるいで修行すれば、何年で免許皆伝になりますか」
卜伝「死に物ぐるいでやれば、一生、免許皆伝にならんじゃろうよ」


 普通に考えてみれば、何事も一生懸命やればやるほど、早く上達すると考えがちです。しかし、剣聖と呼ばれた卜伝は、そう考えなかったのです。
 「寝食を忘れてやれば、10年で免許皆伝になるじゃろうよ」というのは、資格をとるのに、ふつうにやれば1年かかるとします。
毎日徹夜したり、食事を抜いたりしているうちに、1ヶ月でダウンしてしまって、1ヶ月休んでしまった。また元気になって徹夜を始めたけれど、またダウンしてしまった。これを繰り返しているうちに、1年ですむものが2年かかってしまった。あるいは、大学に入学して張り切って勉強していたけど、がんばりすぎて、体調を崩して休学して、卒業がのびてしまったというところでしょうか。
 「死に物ぐるいでやれば、一生、免許皆伝にならんじゃろうよ」というのは、死にものぐるいで体にむち打ってやっているうちに、心臓発作で死んでしまったというようなところでしょうか。大学に入学して死にものぐるいでやったのに、成果が出ずに自殺してしまう学生もいます。
塚原卜伝は、何事も自分の実力を知って、自分のペースでやることが大事だと言っているのです。がむしゃらにがんばることが良いことではないのです。禅は、あまり頑張りすぎないことを勧めています。
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