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「’70年代初期のUSA Motocross車開発抄録」
2013年10月25日
細居 久芳
‘71年秋、USでTrans-AM MX Seriesが開催された。欧州ではPost Season で賞金稼ぎの有力Rider達
が大勢参戦した。Joel Rober, Roger DeCoster, Gaston Rahie, Adolf Weil, Pierre Karrsmaker, Peter
Lumppu等々 錚々たる実力Rider が揃って来米した。当時は圧倒的に欧州Riders の力が上で、迎える
USA Rider はBrad Lackey,Mark Blackwell等、世界的には全くの無名の若者が中心であった。
Seriesの総合成績は、USAトップのBlackwell(後にSuzukiと契約)が16位、Lackeyが17位と記憶している。
それでもUSではMXの人気は急上昇し、US向け2サイクルMotocrosserの開発が急務となった。
Kawasaki Motors Corp.は72年のRider としてLackey と契約。KHIで単気筒450ccのエンジンを開発、KMC
のR&Dで車体を設計し、US国内レースに参戦しながらKX450の開発を進めた。
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「KX450のテスト風景」
Prototype Machine では主にCalifornia南部のLocal Eventに参戦。規模は小さいながら、開発陣を伴っ
た、言わば準Factory Teamということもあり、Rider の力量もあって、US国内では多くのレースで圧勝した。
そして ’72年はLackey が500ccクラスでChampionになった。
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「12月にCoto De Casaで行われたChampion 記念Party」
いろいろ苦労話もあったが、開発に苦労は当たり前で、特筆すべきものはないが、今考えると、全く1から
R & Dを立ち上げるのはやりがいのある苦労であった。場所を決め、人を雇い、設備を導入し、それに伴い
また機械工や溶接工が必要となるなど、言葉の通じない中 やたらと動き回ったことはよく覚えている。
更に、開発に絶対必要な動力計の設置も一苦労であった。予算を認めてもらい、機種選定、設置場所の工事、
火災、騒音に対するSanta Ana市の許可取得等やることは盛沢山。最後にたった1台のDynoで全てのMCの
出力計測をしなければならないことが大きな課題となった。計測するエンジンに合わせてベッドを作っていたの
では、時間と金がかかりすぎる、シャシー動力計では、エンジン単体の計測が難しい、更に精度の問題もある。
California州内のいろいろなチューニング屋等を回り、漸く車体そのものをエンジンベッドにしている例を見つけ
、そのアイデアを戴き、改良して採用した。
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「KMC R&D動力計」
Episode と言えば、Indian Dunes で行われたあるLocal RaceでLackeyがKX450でスタートからフィニッシュ
まで2速ギアーのみで走行、ぶっちぎりで優勝した。後でLackey 曰く、「今日はスタートとフィニッシュ以外
ではClutch もSiftPedalも触らずに走った。Automatic Motorcycleに乗った気分。」
Indian Dunesと言えば、良く我々がテストした場所で、テストの合間に自分でもよくコース走行を楽しんだ。
ある日、比較バイクとして買ったHuskyに乗っていると、滅法早いSuzuki に何と3周で2回も抜かれた。
Pitに行ってみると、500ccクラス世界Champion のRoger DeCoster がFactory Machine のテストをしている
ところだった。DeCosterと一緒に走ったとは言えないだろうな、多分。
更にIndian Dunes、亡くなった松本さんも何回かここに来られた。 運転せず、英語しゃべらず 酒も飲まずの
松本さんとはどこへ行くのも一緒だった。毎日のように我が家で一緒に飯を食い、酒を飲まない彼の分まで飲
んで調子が良いままに夜、氏をホテルまで送って行ったのも懐かしい思い出である。
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「Indian DunesでのSnap 右は故松本さん、左は私」