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「KX40周年記念 寄稿」
伊吹 清孝
世界GP参戦とスエーデン人ライダー達
私が家の居間の飾棚には、スエーデン民芸品の木彫りの馬(ダラーナホース)を大切に飾っています。
これは、1972年の秋にストックホルム市近郊のオーレ・ペテルソン氏の自宅を基地にKXを開発した
現地プロジェクトの記念に貰った思い出の品です。
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「木彫りの馬(ダラーナホース)」 「ペテルソン氏近影 2013年夏」
1960年代後半には、二輪ロードレースGP界を日本メーカーが席巻しており、モトクロスGPの舞台に
おいてもスズキとヤマハが輝かしい戦績を上げていました。
カワサキは国内において市販改造車による赤タンク時代の実績はあったものの、1972年4月に本格的
にモトクロス車の開発のための新組織(技術部開発1班)を立ち上げた当時は、先行二社との歴然とした
技術的ギャップが存在していました。 赤タンク時代の星野、山本氏等スター選手は、既に引退していて、
経験の少ない若手ライダーのみではマシン開発の方向性も掴みかねている状況でした。
一挙に世界GPを戦えるマシンを開発することを目標において、開発ライダーとして評価の高かったスエー
デン人オーレ・ペテルソン氏と契約を結びました。
1972年秋、溶接部品と簡易治具を持ち込みペテルソン宅のガレージ内でフレームを製作して、テスト
を繰り返しながら改良をするなどの大胆な試みを約1ヶ月かけて遂行しました。メンバーは、KHIから岩田、
伊吹、藤原の3人、ペテルソン氏と弟(メカニック)の5人編成であり、加えてカヤバ社から眞田氏が参加し
ました。
このプロジェクトによって技術的方向性を掴むことができて確かな成果が得られたと確信しています。
また、ペテルソン氏のマシンへの細部にわたる適切なアドバイスと共に、実直で親切な人柄からモトクロス
全般に関する多くのことを教えられました。
その後、ハンセン(250cc)、ハマグレン(500 cc)の2選手によりヨーロッパGPに参戦し、短期間でまず
まずの実績を残せるまでレベルを上げることができたのは、このスエーデンでのプロジェクトが土台になっ
ていると考えます。
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「Olle Pettersson、Stig Pettersson、Vic Iwata」
ライムグリーンとチームグリーン
約40年の実績に裏打ちされて、今やライムグリーンはカワサキのレースカラーに留まらず、カワサキの
イメージカラーとしてもすっかり定着しています。 このカラーを採用するに当たって「葬式色で縁起が悪い」
などとの否定的な意見もありましたが、実績のない当時においてもビジネスの戦略として正しい選択であっ
たと確信しています。 最初のKXファクトリーマシンのカラーは、ライムグリーンではありませんでした。
KXにライムグリーンを採用する前の短い期間ではありましたが、ファクトリーマシンをピンク色に塗って
走らせていた時期があります。
あの栄光の赤タンクの歴史がありながら、一時的にせよ「何故ピンクのカラーを使ったのか?」については
少々説明の必要があると思います。
カワサキが本格的にモトクロスレース活動を始めたのとほぼ同時期に、ホンダも2サイクルエンジンを搭載
した初めてのモトクロス車を華々しく国内レースに投入してきました。 ホンダは、既に世界ロードレースで
ホンダレッドをレースカラーとして使っていたので、当然の如くマシンを真っ赤に塗ってきました。
カワサキが色合いの違う赤を使っても埋没してしまうことは明らかでした。 伝統ある赤タンクのイメージも
少し残してという苦し紛れの選択としてショッキングピンクを使ってみようということになったのだと記憶
しています。
KMCが使っていたライムグリーンをカワサキの統一レースカラーとして決める前の一時の迷いの産物でした。
それ以来、ライムグリーンは、カワサキの大きな財産となっています。
KX40年の歴史に山谷はありましたが、永年にわたって活動を支えてきたもう一つの強い柱として「チ-ム
グリーン」があります。 米国におけるモトクロスレース活動の中で日本人とアメリカ人が協力して生み、
世界に広げて育ててきた独自の誇るべきシステムです。
レースに限った事ではありませんが、ビジネスを強くする要素は、高いハードの技術と独創的で確かなソフト
の両方が不可欠であることをKXの歴史を振り返り改めて認識させられます。
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「KMC TEAM GREEN」