しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

終戦 (長船町・邑久町・金光町・鴨方町・岡山市)

2021年08月23日 | 昭和20年(戦後)



長船町史」  長船町史編纂委員会 第一法規出版 平成13年発行

昭和20年8月15日、天皇は、この日の正午、ラジオを通じて国民に戦争の終結を告げた。
多くの人は、今まで支えてきた気力が抜け、虚脱状態の中で、戦争終結の安堵感と敗戦による今後の国家や村や自分たちの向かう方向への不安とが入り交じって複雑な気持ちになった。
農村地帯であるこの地は、空襲などの傷あとは表面的にはみあたらなかった。
村内を見ると、男子若者が兵士や都会の軍需工場へ徴用などでかり出されて、見あたらなくなっていた。

敗戦から一か月ほどが経過して、やっと気持ちを取り直してきた9月18日のことである。
前日の17日から枕崎台風が西日本を襲った。
18日午後3時、水位を上げてきた吉井川は200mにわたって決壊した。
濁流は一気に邑久郡中北部一帯を泥海に変えた。
停電が続き夜は真っ暗闇、また赤痢などの発生も心配しなければならなかった。
20日後、低地でも水が引き、被害の跡片付けに手を付け始めた10月8日、
阿久根台風で、吉井川はまた氾濫した。
前回決壊堤防から、そこを通り流れ出した。
二度の氾濫で郡内の自給自足さえ危ぶまれるようになった。



邑久町史」 邑久町役場  昭和47年発行

終戦直後、進駐軍三千数百名が岡山市に駐留し、邑久ではさまざまな憶測がとび、
流言が流れた。
この邑久の人々の不安をさらに深刻なものにしたのは、同年あいついで起こった風水害である。
農村にとって天災はもっとも恐ろしい大敵である。
邑久町の西部全域が水をかぶった。決壊の水は浸水1週間つづき、10月には再び増水した。





金光町史」 金光町 平成15年発行

敗戦に伴う軍隊の解体、満州・朝鮮・台湾など旧植民地の放棄、
占領体制下における天皇制国家の政治体制の解体と民主化への改革の歩みが進められることとなった。
内務省の解体と新しい地方自治体の創出、警察制度における特高警察の廃止と地方自治警察の創設、財閥解体と労働関係三法の成立、農地改革、教育における六・三制への移行、宗教における信仰の自由の体制などがこれである。

戦後改革の手始めは、戦争の指導者たちを各界から除去するという公職追放であり、
また戦後の民主化をなす選挙制度の改革、とりわけ婦人参政権の実現となってあらわれた。




鴨方町史 本編」  鴨方町  平成2年発行

「雑音で聞き取れない重大放送は内容は判らなかったが、何となくおかしいと感じた。
其の日、遂に日本が負けたと知らされたとき、まだ20代前半だった私は、声を放って泣いた。
その翌日から百八十度転回した通報達が来る。
先ず教科書の幾つかのページを墨で塗りつぶす。
昨日までひたすら敵意を駆り立てていた子供たちに、どう説明すればよいか、と私は戸惑った。」
終戦の迎え方は職業や役職・地位などによって相違していたが、敗戦による不安と安堵感は共通していた。




「岡山市百年史下巻」 岡山市 ぎょうせい 平成3年発行

岡山市

敗戦の日の人々の表情を『合同新聞』(昭和20年8月16日)は次のように伝えている。

「其航空機工場」 わたしたちは力の限り戦った、しかも負けた、どうしてでしょう。
涙涙、ただ涙。挺身隊の乙女たちが雄々しく結んだ白鉢巻も今は悲しく手に持たれ、東方を伏し拝み、天皇陛下に力及ばざりしを御詫するのみ。

「県庁」官吏としてすべきことはなした。県民には無理を言ったが、涙ぐましい努力によって完遂してくれた。
このうえは戦後の秩序維持、食糧増産、土木再建等重大使命に全力を傾注しなければならない。

「農村」 戦争には負けたが、国民の食糧問題の成否を担うわれわれ農民は頑張るぞ。

「街頭」焼け残った家の片腹に防空壕を構築していた町内会の人々は、
思ひもかけぬ発表に”畜生ッ”と手に持った鍬を叩きつけ、どっかり大地に腰をおろした。
家を焼かれ子供も焼かれた、しかし聖断を仰ぎ奉った。
街の人々も逞しく起き上がった。

橋本市長と戦災復興
竹内市長は、戦争末期の翼賛市政の中心的指導者であったばかりでなく、軍人市長であった。
昭和20年9月24日の市会で辞意を表明した。
辞任の理由は「将軍市長の使命終われり」というにあったと伝えられる。
倉敷紡績から合同新聞社長になった橋本富三郎氏が市長になった。最後の内務大臣によって専任市長。
10月23日、5.000人の米軍将兵が旧陸軍兵舎に駐屯した。


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