焼き豚で腹をくちくしアルコールも準備運動を済ませるとその頃増えてきたスナックと言う女の子の居る店に行く、元々は喫茶店でビールを出して更にウィスキーも飲ませると言う形式で広がってきたのだが(アルコールを置かない喫茶店は”純喫茶”と言う看板になっていた)風俗営業法が厳しくなり11時以降の喫茶営業が禁止され、特例として「軽食食堂」なら2時まで営業が出来ると言う条例がひかれ営業時間を延ばすために軽食=スナックと言う事になった、
暫くは11時に成ると店のほうから「何か軽い食事をオーダーして下さい」と言う様な時期もあったが何時の間にか有名無実となって彼方此方に「スナック何とか」と言う飲屋が増えて来た、
しかし来れは店にも1つのメリットをもたらした、つまり食堂だから女店員が配膳しても問題無いと言うのでカウンターしかない様なスナックに若い女性が何人も居る事になる、大抵は昼間働いていてアルバイトをしている子達で其れが新鮮な魅力でもあった、
その頃何時もつるんで飲み歩く仲間が居て中に1人毎日仕事が終わると必ずその焼き豚やで落ち合い河岸を替えて飲み歩く友人が居た、歳は自分より4つほど上だが意識することなく対等に付きあってくれた、歩いて行ける程度の距離に行き付けを6軒作りキープボトルを置いて毎日違う店に行く、最後の土曜にはどちらかのアパートに泊り込んでいて日曜は抜いてと言う生活を彼此年位やった、
その友人が見合いで結婚を決めてから焼き豚は行くがスナックはぷっつりと行かなくなった、
特に理由は無いのだが一人で女の子と飲みながら話すと言うのがあまり得意ではなくつまらなくなってしまったのだ、
焼き豚店から少し離れた所にひっそりと有った小料理屋を飲み仲間の長老に教わって通いだしたのはその後半年もしない頃だった、バス通りから一本入った路地でその路地の向こうは一種住専だから本当に静かに営業をしている、音楽を流すわけでもなく派手な明かりがある訳でもない、焼き豚やと逆で入り口は建物の幅一杯で2間もあるか、ガラス戸には藍暖簾が掛かっていて座る席はそのままカウンターなので出入りは楽だった、
カウンターの右側が奥に折れていて詰めて3人と言う位の席がある、其処が自分の定席になった、
マスターは30代の半ば、小柄の丸顔で「いらっしゃい」と笑い顔で言う以外は余計な話はしない、
かと言って取っ付き難い訳でもなく話しかければニコニコと話題に乗ってくる、黙っていればやはり黙っていて「今日はいい鮪が有るけどどうする?」とか「変った酒が入ったけど飲んでみる?」とかそんな具合だった、その頃自分が借りていたアパートはこの店から歩いて5分程度だったので本当にありがたい店だったのだが「どうしても一度やって見たい」と言っていた若い女の子を置いたクラブを蒲田の駅近くに開いてこの店を閉じてしまったのだが優しすぎる彼の性格ではとても若い女性を律する事は出来ず僅か1年程で閉店してしまいその後全く解らないようになってしまった、
未だ結婚する前の今の女房とも行っていたので時々「Oちゃんはどうしているんだろうね」と話に出る、
何処かであのままいい親父になって同じ様な店をやっていたら又行ってみたい物だ
近くの家におくらが咲いていた
暫くは11時に成ると店のほうから「何か軽い食事をオーダーして下さい」と言う様な時期もあったが何時の間にか有名無実となって彼方此方に「スナック何とか」と言う飲屋が増えて来た、
しかし来れは店にも1つのメリットをもたらした、つまり食堂だから女店員が配膳しても問題無いと言うのでカウンターしかない様なスナックに若い女性が何人も居る事になる、大抵は昼間働いていてアルバイトをしている子達で其れが新鮮な魅力でもあった、
その頃何時もつるんで飲み歩く仲間が居て中に1人毎日仕事が終わると必ずその焼き豚やで落ち合い河岸を替えて飲み歩く友人が居た、歳は自分より4つほど上だが意識することなく対等に付きあってくれた、歩いて行ける程度の距離に行き付けを6軒作りキープボトルを置いて毎日違う店に行く、最後の土曜にはどちらかのアパートに泊り込んでいて日曜は抜いてと言う生活を彼此年位やった、
その友人が見合いで結婚を決めてから焼き豚は行くがスナックはぷっつりと行かなくなった、
特に理由は無いのだが一人で女の子と飲みながら話すと言うのがあまり得意ではなくつまらなくなってしまったのだ、
焼き豚店から少し離れた所にひっそりと有った小料理屋を飲み仲間の長老に教わって通いだしたのはその後半年もしない頃だった、バス通りから一本入った路地でその路地の向こうは一種住専だから本当に静かに営業をしている、音楽を流すわけでもなく派手な明かりがある訳でもない、焼き豚やと逆で入り口は建物の幅一杯で2間もあるか、ガラス戸には藍暖簾が掛かっていて座る席はそのままカウンターなので出入りは楽だった、
カウンターの右側が奥に折れていて詰めて3人と言う位の席がある、其処が自分の定席になった、
マスターは30代の半ば、小柄の丸顔で「いらっしゃい」と笑い顔で言う以外は余計な話はしない、
かと言って取っ付き難い訳でもなく話しかければニコニコと話題に乗ってくる、黙っていればやはり黙っていて「今日はいい鮪が有るけどどうする?」とか「変った酒が入ったけど飲んでみる?」とかそんな具合だった、その頃自分が借りていたアパートはこの店から歩いて5分程度だったので本当にありがたい店だったのだが「どうしても一度やって見たい」と言っていた若い女の子を置いたクラブを蒲田の駅近くに開いてこの店を閉じてしまったのだが優しすぎる彼の性格ではとても若い女性を律する事は出来ず僅か1年程で閉店してしまいその後全く解らないようになってしまった、
未だ結婚する前の今の女房とも行っていたので時々「Oちゃんはどうしているんだろうね」と話に出る、
何処かであのままいい親父になって同じ様な店をやっていたら又行ってみたい物だ
近くの家におくらが咲いていた