外山雄三氏が2023年7月11日、慢性腎臓病のため長野県の自宅でお亡くなりになった。享年92。
氏は私が初めて生のオーケストラを聴いた時の指揮者で今でもその時の様子は鮮明に思いだす。
我が家には蓄音機2台と大量のSPレコードがあり、私の格好なおもちゃであった。子供用のレコードも20-30枚はあり童謡を中心によく聴いた。自然と「G線上のアリア」「タイスの瞑想曲」等、クラッシックの小品にも親しんでいた。
そんな私を音楽にのめり込ませる決定的機会は中学1年頃に訪れた。
ある夕方、初来日したオイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏会がNHKTVで中継された。最初の曲はベートーヴェンの「エグモント序曲」。題名すら聴いたこともなかったが、最初の強奏和音を聴いた途端に全身に鳥肌が立った。
それから間もなく、盛岡でNHK交響楽団演奏会を聴く機会が訪れた。
中学1年か2年かは忘れたが、市の市立体育館でNHK交響楽団演奏会が開かれた。市立体育館にパイプ椅子を並べての会場設定で、席は前1/3ほど、やや右よりの特等席であった。
演奏会は指揮が外山雄三氏、独奏者は深沢(旧姓、大野)亮子氏。コンサートマスターは海野義雄氏。曲はウエーバー「魔弾の射手序曲」、モーツアルト「ピアノ協奏曲20番K466」、ドボルザーク「交響曲 第9番(新世界より)」。アンコールは「フィガロの結婚序曲」、外山雄三作曲「管弦楽の為の木挽き歌」。
「魔弾・・」の不安をかき立てるような弦のトレモロによるうねり、「ピアノ協奏曲 K466」の独特な弦の刻み、「新世界交響曲」のダイナミズム・・・。この間、私は全身に、頻繁に鳥肌が立つのを感じながら聴いていた。コンマスの海野氏の音は終始際立って聴こえた。
これら全てが私にとって鮮烈な体験であり、その後、弦楽器、特にバイオリン、チェロに興味を持ち、大学ではオーケストラに属し、多くの演奏会に通い、今に至るまで代表的趣味の一つとなっている。
N響演奏会の後、LP用のレコードプレーヤーを購入した。当時レコードはおいそれとは購入できないほど高価であり、ステレオで3200円、モノラルでも2800円ほどで当時のレコードは超高価な買い物であった。2年ほど後の、私の3食付きの下宿が月額5500円だったから・・・。
最初に購入したレコードは「運命」。ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮、ウイーンプロムジカ管弦楽団の演奏。本当にレコードがすり減るほど聴きこんだものである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます