福田の雑記帖

www.mfukuda.com 徒然日記の抜粋です。



いわゆる「医療否定」の考え方(1)近藤氏の「がん放置療法」について

2014年01月26日 05時43分53秒 | 医療、医学
 大手出版取次の日販が昨年暮れに発表したデータによると、あの有名な近藤誠氏の「医者に殺されない47の心得」が総合2位に入っている。近藤氏はがんには「本物のがん」、「がんもどきがん」があって前者は治療しても効果は限定的、後者は元々治療不要だから結果には変わりがない、と言う考え方で、「がん放置療法」と言う驚く様な考え方を一般の方々向きに提唱している。

 「医者に殺されない47の心得」と言う題名の本は目を引きやすい。秋田でもかなり売れているのだろう、書店に行くと平積みになって手に取りやすい。私が担当する外来でも約10人ほどからこの本や、近藤氏のかつての著書、近藤氏以外の医師たちによるいわゆる「医療否定」関連本についての質問を受けている。その際の私の説明は「近藤氏を含めて、一部の、主流でない考え方を持つ医師達の意見。医療がかかえる問題点に一石を投じている側面はある。参考にするのはいいが、信じてはいけない・・・」と答えている。

 私は近藤氏の著作も2、3持っているがあまり深読みはしていない。ざっと流す程度である。なぜなら、近藤氏の考え方は賛同出来る部分もあるが、核心の点になると彼の意見は受け入れ難い。それどころか、このような本を介して患者が人生の選択をあやまる可能性もある「危険な本」と考えている。

 臨床医の誰しも、といっても「人、我にあらず」だから、自分以外の事は分からない。私は一人一人の患者に対しては常にベストな治療を模索し、日々逡巡しながら診療をしている。たぶん他の臨床医も同様だろうと思う。
 「医師が日々逡巡している??」などと書くと「医療はそんなにあやふやなのか?」誹られるであろう。しかし「日々逡巡している」医師ほど良医だと思う。なぜなら、どんな疾患であれ白黒で割り切れるほど単純でなく、典型的なレベルから非典型的な病状まで多様である。ましてや患者一人一人の人生に重ね合わせて疾患を医療の対象として考えるとグレーゾーンばかりである、と言って過言ではない。

 少なくとも私の判断によって患者の人生をマイナスのコースに乗せる様な事はしたくない。だから、自分の能力を超えそうな患者は積極的によりふさわしい医師に替わるようアドバイスしている。

 近藤氏のがんについて言えば、がんには「本物」と「もどき」があるとの考え方そのものは間違っていないと思う。ただ、・・・・
コメント (1)
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