福田の雑記帖

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書評:昭和のことば 山折哲雄監修・槇野 修著 2012  PHP文庫 629円

2012年09月29日 08時08分42秒 | 書評
 

いま、私は近代日本の歴史を勉強中である。資料は豊かであるがそれだけ煩雑、複雑、で、読むもの、見るもの、触れるものが私の中でなかなか一体化せずに、進行は遅々としている。
 そのためにも歴史的遺産、人物、記念館など機会があれば訪れて体系化の一助にしている。9月30日には花巻新渡戸記念館や遠野市にある千葉家住宅など訪れたい。

 史実は年月日やそこに至る過程など調べることによってかなり明瞭になっていく。作家の水上勉氏の言葉の中に「人は歴史的な日などを生きるものではない。人は、いつも怨憎愛楽の人事の日々の、具体を生きる。」と言うのがあって、うろ覚えながら心に引っかかっていた。何かで読んだか、あるいはラジオ深夜便で聞いたのかもしれない。勿論、上記「・・」内に記載したほどハッキリ覚えていたわけでないが、この本に収録されていて再会した。

 水上氏の言葉は真実だと思う。いくら史実を振り返ってもその頃の人は何を考えていたのか、なかなか知ることは出来ない。そんな中、副読本的に求めたのがこの本である。

 山折氏の監修というのも目にとまった。私は宗教についても関心があり、宗教学者・哲学者である氏の講演を2回聴き、何冊かの著作も読んでちょっと身近に感じている方である。講演の一度目は学会の講演で京都で、二度目はわざわざ上京して拝聴した。この時は宮沢賢治の生涯を通しての宗教観についてであった。

 ■第一章は、スポーツ・芸能ジャンルから、
 ■第二章は、多くの名作が生まれた昭和時代を、芥川、西條八十氏らの作品などを通じて。
 ■第三章は、世相を表す様々な事件や出来事から。ノーベル賞受賞の湯川氏の日記、ラジオ・TV放送でのアナウンサー達の名実況や奮闘など。
 
 昭和史の中に秘められたエピソード等が3群に分けられ、50編紹介されている。あとがきに司馬遼太郎氏の風塵抄より「その生涯は、渾身でもって憲法の人でした」として昭和天皇について述べられているので、正確には51選である。この芝氏の言葉を著者が解説しているが、天皇の戦争責任について学ぶべき視点がまた一つ増えた。

 私は昭和20年生まれだから2/3は、昭和の世代を過ごしてきた。懐古的な気持ちは乏しいが、問題意識が乏しいまま忙しさに身を任せノホホンと通過してしまった昭和の時代を、いま反省を込めて触れ直している。 

 この本は部分的には三度四度と読み返した。それがこの本に対する私の評価である。
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