福田の雑記帖

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書評: 青木謙知著:「ボーイング787 vs エアバス380」(2)講談社ブルーバックス 2011年11月 880円

2012年09月04日 04時40分35秒 | 書評
 中型機の787を開発したボーイングは747で大型航空機市場を独占して来たが、次世代機の主流を中型機種に置いた。一方、中型が主力であったエアバス社が超大型機に進出した背景は、将来の航空市場の予測が両社で異なっていたからであるが、その考え方の対比も面白い。
 両社とも航空市場は今後も伸び続けるという点では一致しているが、スピードと経済性が両立しなければならないとし、ボーイングは効率性重視、エアバス社はより快適な大量輸送に重きを置いた。どちらが主流になるのかと言うことより両社のコンセプトは十分両立していけると思われる。

 787は多くの新素材を用い、多国でパーツを生産してシアトルに運び、合体して製作している。日本は機体の35%を担当しているという。また、軽量化とキャビン内のアメニティの改善のために炭素繊維強化プラスチックを多く採用した。因みにこの新素材は747では僅か1%、777では11%、787は50%である。そのために製造開発過程で多くのトラブルが発生して設計し直し等が余儀なくされ,開発は困難の連続であった。最も早く納入された全日空機は当初の予定より3年ほど遅れた。それほど問題が大きかったと言うことは逆に設計上の弱点が予め明らかになったということでもある。だから、安全性が高まったと言えるだろう。787に比較するとA380は引き渡しが1.5年遅れたが、機体が史上で最大であるにもかかわらず開発から実用化の過程は比較的順調であったように思われた。

 機体のカットモデルを見ると787は上半分と下半分は異なるサイズの円の合体で,上半分が大きい。丁度だるまを逆さにしたイメージである。A380は縦長の楕円形。777は真円である。真円の方が構造的に単純で丈夫そうに見えるが、客席の上下に無駄なスペースが生じて非効率なのだという。従来の航空機の機内は湿度がほぼ0%であるが、新素材多用のために錆の危険が少ないことでキャビン内を加湿する事が出来るようになったし、機内圧も高く維持できる様になった。エコノミークラス症候群の発生頻度も減少するかも知れない。A380では機内のスペースを生かして個室やシャワー室、ラウンジも備えているタイプもあるという。そこまで必要か?とも思うのだが・・・。

 この本の記述は多岐にわたっていて読み進むにつれて驚くばかりである。両機については生産が進み、運行の実績が増えると別の視点からの書籍が発刊されると思う。それも楽しみであるが本書は現時点でとても有用な位置づけを持つ本である。
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