色土を使った「練上手(ねりあげで)」の技法で人間国宝と言えば、笠間の故松井康成(まつい
こうせい、1927~2003年)氏がいます。松井氏に関しては当ブログで、現代陶芸34~36
(松井康成1~3)(2012-02-01~03)で取り上げていますので、参考にして下さい。
尚、以下の記事は、以前の記述と重複している部分もありますので、ご了承下さい。
松井氏の代表的な作品には以下の様な作品があります。
練上嘯裂(しょうれつ)文大壺「風船」1981年 茨城県陶芸美術館蔵
練上玻璃光(はりこう)大壺 1999年 東京国立近代美術館蔵
萃瓷練上(すいじねりあげ)壺
1) 嘯裂(しょうれつ)文
① 円形に積み上げた数種の色土や、平行なタタラ状の色土を貼り合わせ、筒に巻くなどして
筒状の粘土を作り、底を付けてから轆轤にセットします。
② 筒の側面に針や櫛で円周方向に刻みをいれます。
この刻みの荒さが、作品のひび割れ状態に反映しますので、細かくするか荒くするか、浅く
するか、深めにするかを考えて作業します。
③ 轆轤を回転させ内側から膨らませます。轆轤の回転に合わせ、土は螺旋状に捩れます。
表面のみを乾燥させ、内側から「柄コテ」を当て、膨らませると表面に螺旋状の亀裂が入ります
但し、外側は指で触れると、折角出来た亀裂模様が消えますので、触らない様にします。
片手での馴れない作業なので、綺麗な円形の壷にする事は難しいです。
④ 表面に亀裂を入れる方法には、ガスバーナーの炎で短時間(数秒~十数秒)炙って乾燥させ
てから、膨らませる方法も有ります。この方法が一番無難な方法と思われます。
2) 三層象裂瓷(さんそうしょうれつじ)壺
象裂瓷とは、タタラ状の異なる色土を二層三層と色土を重ね、円筒に巻き轆轤成形した後に
外側の層に縦や斜めに、切り込みを入れ、更に轆轤挽きで全体を膨らませ、切り込みの幅を
広げて複雑な裂け目を入れる技法です。裂け目から下層の色土が現れて見えます。
この場合も、「柄こて」を使って内側のみ触る事に成ります。
尚、瓷器(じき)とは磁器の事で、白色の磁土を使う事により、色も鮮明になりますし、焼き締まりの
強度も堅くなります。三層とも磁土を使う場合と、表面の一層のみを磁土を使う方法があります。
・ 嘯裂(しょうれつ)文が粘土を使うのに対し、三層象裂瓷は磁土を使います。
粘土は可塑性に優れていますので、円周方向に刻みをいれても、さほど問題には成りませんが
磁土の場合可塑性が劣ります。その為、容易に亀裂が入り易く、切り口もすっきりした状態に
成ります。又円周方向に刻みを入れると、切れる恐れがありますので、縦や斜めの亀裂を
入れる事に成ります。又、円筒形の中央をやや肉厚にしてから、轆轤挽き した方が安全です。
以下次回に続きます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます