ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

キャット空中三回転?!

2009年03月31日 | 家族とわたし
旦那とわたしは、今年に入ってから、別々の部屋で寝ています。
別に喧嘩をずうっと丸々3ヶ月しているわけではありません。
ほんでもって別に家庭内別居をしているわけでもありません。
普通の、どちらかというと仲良しの夫婦です。

昨年末にガールフレンドと一緒に家に戻ってきたT。いつもならKの部屋(元はTの部屋でした)に放り込むのだけど、なんぼなんでもそりゃアカンやろということで、我々の寝室(元はKの部屋でした)を使わせることにして、旦那とわたしはその間、旦那の診察室(リビングも兼ねる)にエアベッドを置いて寝ていました。
ガールフレンドのJ子ちゃんが日本に戻り、Tもヴァージニアに戻った1月の半ば、自分達の寝室で久しぶりに寝よう~と部屋に入ると、
あれれ?いっつもすっかり熟睡しているはずの旦那の姿が見えません。
こんな時間にいったいどこ行ったんやろ……と他の部屋に探しに行くと……はぁ~なんでここで寝てるん?!
前に写真入りで紹介した、キャンプっぽい超適当な寝床を作って、そこでスウスウ気持ち良さそうに寝ている旦那。
おかしいなあ……別に喧嘩してなかったよなあ……
翌朝旦那に尋ねてみると「別々のベッドに寝た方が僕もまうみも熟睡できるって思たから」ということで、いきなりの『大の字快眠』プレゼントなのでした。


昨夜も好きなだけ文庫本を読んで、眠くなったのでヨガのシャバアサナ(休息のポーズ)をとりながら、一日の感謝を祈り、眠りに落ちるのを待ちました。
ちょっと眠りにくい感じがしたけれど、それでゴソゴソしたり寝返りをうったりしてもでっかいベッドにはわたしひとり、やっぱり楽です。
やっと夢の中に入り、腰を落ち着けようとしたその時、寝室のドアがダッと開き、その異様な気配にびっくりして、わたしは跳ね起きました。
ドアの向こうにKが半分だけ見えます。心臓がドキンと跳ねました。
「どないしたん?」
「あの……ちょっと……」
Kがこういう言い方をする時はかなり。しかも、こんな時間に、寝室のドアを乱暴に開けること自体がめっちゃ
「電気つけて」
「ええの?」
「ええからつけて、部屋に入ってきなさい」

部屋に入ってきたKの腕が妙にだらんとしています。夜中にコンビニとか行って、それでなにか不測な事が起こったんだろうか……頭の中は早くもゴチャゴチャ。
「怪我したん?」
「うん」
「ひどいの?」
「分からん」
「なにがあったん」
「手すりから落ちた」
「手すりってどこの?」
「台所から出たとこの、階段の踊り場んとこ。青い木のてすり」
「なんでそんなとこから落ちるん?」
「座ってた」
「座ってたって……どっちに落ちたん」
「ゴミバケツが置いてあるコンクリートの方」
「ゴミバケツの上に落ちたん?」
「いや、そこにはバケツ無いやん」

Kが青いと言っているのは、実はグレーのペンキを塗った木製の枠です。こんな所に、しかも夜中に、なんで座ったんでしょう……?



そして落ちてしまった所……



もう想像したくもない話です。3メートル近くある高さから落ちて、どうやって歩いたり話したりできているのか……とりあえず傷を調べることにしました。
右腕の全体に擦過傷、あまり深くはありませんが全体に腫れています。右指と右膝に深い傷。これは落ちた時に負ったのでしょう。
首や脊髄を調べてみましたが、捻挫や打撲は見当たりませんでした。
この程度なら、旦那までわざわざ起こさなくてもいいかと思いましたが、もし後で痛みが強くなってきたら、今度は父親を起こすように言いました。

わたし自身、中三の夏に、体育館の中二階から地下室の入り口まで真っ逆さまに落ちた経験があります。
その瞬間の、信じられないほどの長い時間(あれは三次元のスポットに入ったのでしょうか?)、ありとあらゆる体勢を試みたのですが、一つとしてできず、最後の手段で左腕を上げて頭蓋骨をくるりと包み、脳天を直撃することだけは防ぐことができました
しばらく失神していて、夜になって気がつくと、病院の処置室の、冷たいステンレス製のベッドの上に寝かされていました。
その時、つくづく(なぁ~んや、田舎っぺ大将なんか嘘っぱちやん。大ちゃんみたいに全然できひんかったやん)と悔しく思ったもんです。

さて、話を戻して、とりあえず傷の手当てをして、しつこくあちこちを調べてみましたが、なぜだか大丈夫そうだったので、ひとまず寝ることにしました。
Kはその晩、ためにためていた宿題が山盛り残っているのに、落ちた瞬間にアドレナリンを使いきったのか、なんだかやけに眠そうです。
ほれみぃ、そやからできる時にチャッチャとしときって、言うたら文句言うから言わんへんけど、生きてたら何が起こるか分からんのだからな、Kよ。

反対にわたしはなかなか眠れません。それでなくても心配性です。無事で良かったけど、落ちるKの姿をついつい想像してしまって胸が苦しくなりました。

今朝、現場を見てみると、思ってた以上に高さがありました。
いったいどんなふうに落っこちたら、あんな軽傷で済むのやろ……。

仕事から戻ると、Kもすでに家に戻っていて、部屋に行くとベッドの上でスウスウ眠っていました。
血のついたシーツを洗ったので、なにも敷いていないベッドマットの上に直接寝ています。
夕飯後に起きてきたKに、膝のお皿の部分の具合を聞いてみました。「レントゲンとかを撮った方がいいかな」と言うと、「普通に歩けてるからいい」と言うK。
「でもさ、あんな高さから落ちて、なんでそんなに軽い傷で済んだんやろ?」
「だってオレ、猫技使ったもん」
「へ?」
「まず右手で手すりとかを必死に掴んで、ちょっと勢いを消してから、体を回転させた。猫みたいに」

キャット空中三回転!「とってんぱーの にゃん ぱらりっ」
あの時は助けてくれなかったけれど、息子を助けてくれたんだね、ニャンコ先生、ありがとう~!