ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

米国『“ガラスの天井”は高かった、第45代アメリカ合衆国大統領選挙』事情

2016年11月08日 | 米国○○事情


今日は、やっとやってきた大統領選挙の投開票の日。
今回ほど、どちらに入れてもろくなことにならないだろうけれども、どちらかというと○○○○の方がマシという気持ちで、投票に臨まなければならない選挙はないだろう、と言われている。

朝から町に出ると、前庭で、クリントンの名前を書いた青いボードを、行き過ぎる大人たちに向かって掲げている小学生の男の子や、
これまたクリントンの名前を書いた布を、首からぶら下げて、通りを歩く中学生たちのグループがいた。
さすがは、東海岸の中でも、特にリベラルと言われている町の子どもたちである。
まあ、クリントンは、彼ら子どもたちの教育予算を圧迫している軍産複合体と、仲良しだということまでは知らないのかもしれない。
それにしても、日本とは違い、投票日当日もがんがんアピールしているのが面白い。
『GO VOTE』と書かれたバッジを付けて、歩いている大人もたくさんいた。
会社も学校(公立)も、投票日はお休み。
投票をしなければならないという気持ちを、社会全体で盛り上げている。

今日の生徒の親たちも、いつもよりちょっとそわそわしていた。
全員が投票を済ませていたけれども、結果が出るのが恐い、と言っていた。

夕飯を食べながらニュースを観ていたら、ブロンクスのある町で、投票を待つ人の列がまだまだ続いていて、もう3時間も待たされていると言っていた。
もうあと40分もしたら投票所が閉まるだろうに、あの人たちは一体どうなるんだろうか…。

オバマが全米を盛り上げた8年前の選挙とは大違いの、まるで、質の悪いリアリティショーを無理やり見せられているような、
なんともゲンナリする、どちらが当選してもろくなことにならない予感が満々の、投票意欲が削がれまくりのキャンペーンだったけれども、
有権者たちの投票に行くぞ、という意志は、それでもどうにか保たれているようだった。

それにしても、ここまでパックリ分断されてしまって、この国はどこへ向かおうとしているんだろうか。
青か赤か。
州ごとに、多数決によって、この国の未来を決める意思が示されていく。
でも、本当か?本当にそうか?

夫もわたしも、開票報道を観るのが恐ろしくて、8時を過ぎてから、テレビをつけたり消したりしている。
州の開票を、どの町が、どちらにどの割合で入れたかまで公表している。
アメリカ合衆国の地図が、だんだん赤く染まっていく。
今のところは、トランプが優勢。
でもまだ、3時間の時差がある、西海岸の開票がまだ進んでいないので、まだわからない。

『NAIL BITER』ー 緊張してつい爪をギリギリと噛む人、という意味なのだけど、今夜はこのNAIL BITERだらけの合衆国なのである。

結果が出るまで起きていることは、多分無理なので、この続きはまた明日。


…などと言って、なんとか眠ろうとしたけれど、やっぱり眠れるはずもなく、まどろんではチェックし、また少し寝てはチェックしていたら、
夜中の3時ぐらいにはもう、トランプの優勢が顕著になっていて、これはひっくり返せないなあと、いろんなことが頭によぎってきて、とうとう全く眠れなくなってしまった。

メキシコからの不法移民は強制送還するだの、国境に巨大な壁を造流だの、イスラム教徒は一時入国を禁止するだの、女はどうにでもなるだの、
全く政治の経験が無い、さらには側近にも外交などの政策に精通した者も見当たらない、ただの有名な大金持ちだという人が、アメリカという国の大統領になった。
この男が、共和党のツワモノどもの傀儡になり果てるのではないか、どんな風に利用されていくのか…そこがとても恐ろしい。

でも、これがアメリカに暮らす人々の『本音』なら、その本音がどういうものを招くのか、それをしっかり受け止めるしかない。
政治家のマネーゲームに疲れ、大企業のグローバルという名の支配から逃れられるかもという期待を、トランプに見い出したのかもしれない。
けれどもそれが、この先どんな結果を招くのかは、誰にも分からないし、予想がつかない。

共和党が牛耳る4年間に、また理不尽な戦争を起こさないよう、そして、行き過ぎた差別や、一国主義にならないようにと祈るのみ。
やはり、ギリギリになって、クリントンが繰り返し言っていた『ガラスの天井』が、思いの外高かったことを、思い知らされた。
黒人の大統領は叶えさせてしまったけれど、女の大統領まで叶えさせてたまるか、というのも、本音の一つだったと思う。
そして、政治屋の政治に絶望し、グローバルでなく、まず自分の周りをなんとかしてもらえるのではないかという期待を持つ人が、思いの外多かったのかもしれない。

マコネル米上院院内総務(共和党)は9日、環太平洋連携協定(TPP)法案について、来年1月の新大統領就任前に、採決は行わないとの認識を明らかにしたそうだ。
日本はすっかりハシゴを外された形になるけれど、それでも安倍政権は、今後もしがみついていこうとするんだろうか…。

トランプは常々、銃の所持や扱いについて、これまた過激な発言を繰り返してきた。
核兵器についてもそう。
これらの件について、共和党の好戦議員の輩が集り、いいように利用していくのではないかと心配でならない。

いずれにせよ、これは夢でもなんでもなくて、本当に起こったことだ。
わたしたちは、これから4年間、トランプ大統領の統治の元、暮らしていかなければならない。
その毎日は、悲観していたよりはマシかもしれない。
悲観していた通りの、トンデモなことが起こり続けるかもしれない。
そしてそれらは、アメリカのみならず、世界にも影響を与えることになるかもしれない。
そのためにまた、アメリカに暮らしているということが、どうにも恥ずかしくてうつむいてしまうような、そんな毎日にならないことを祈るばかりである。

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泡沫と思われた放言王 トランプの勝因は反グローバリズム
【日刊ゲンダイ】2016年11月9日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/193506/1

「史上最低の醜悪」などと言われた米国の大統領選は、大接戦の末、共和党のトランプ候補が制した。
この結果に、株式市場が大暴落するなど、世界中が騒然としているが、背景を探れば、そこには必然的ともいえる、米国の闇がある。

確かに、トランプの訴えはむちゃくちゃだった。
口を開けば、「メキシコとの国境に壁をつくる」「中国が雇用を奪っている」と他国を攻撃し、
ワイセツ発言も酷くて、「ピー」音をかぶせて伝えるニュース番組も多かった。
さすがに、大新聞は一斉に、トランプ批判に回り、発行部数上位100紙中、ヒラリー支持を表明したのが55紙だったのに対し、トランプ支持はわずか1紙だけだった。

しかし、それでも、トランプ人気は落ちなかった。
最後の最後で、リードを許していたクリントンを逆転した。
どんなに暴言を吐こうが、スキャンダルが飛び出そうが、あきれるほど根強い支持層に、支えられたのである。
支持率は、終始40%台をキープし、最後は、フロリダなど激戦州で、次々と下馬評をひっくり返した。
ツイッターのフォロワー数は、ヒラリーの1005万人に対し、1280万人と凌駕、
トランプの演説を生中継すると視聴率が跳ね上がる、という現象も起こった。


■疲弊したアメリカ国民が喝采、支持

なぜ、他人の悪口しか口にしない、トランプのような下品な男が、ここまでアメリカ国民から、熱狂的な支持を集めたのか。

トランプの主張は、ハッキリしている。
一言でいえば、「排外主義」だが、それは「反グローバリズム」である。
市場に任せれば経済はうまく回ると、アメリカが、30年間にわたり主導してきた「グローバリズム」と「新自由主義」を、真っ向から否定した。
その訴えが、アメリカ国民の心をとらえたのは間違いない。

外務省OBの天木直人氏(元レバノン大使)が、こう言う。

「もともとグローバリズムは、“勝ち組”の政策です。
格差が広がり、希望を持てない人を増やしてしまう。
アメリカ国民も疲弊してしまった。
一握りの富裕層だけが富み、中産階級が崩壊しつつあります。
だから、以前から、大衆の不満が充満していた。
トランプは、その不満を、上手にすくい上げた形です。
トランプが、『中国が雇用を奪っている』『雇用を奪うTPPを止める』と、自由貿易を批判すると、聴衆は拍手喝采し、熱狂した。
これは、“サンダース現象”にも通じる話です。
ヒラリーと大統領候補の座を争ったサンダースも、新自由主義を否定し、TPPを『破滅的な協定だ』と批判して、支持を集めた。
アメリカ大統領選を通じて分かったのは、行き過ぎた新自由主義とグローバリズムが、限界に達しつつあるということです。
今後アメリカは、大きな転換を迫られると思う。
熱心なTPP推進派だったヒラリーが、国民の強い反発を目の当たりにして、
『今も反対、選挙後も反対、大統領になっても反対』と、TPP反対に宗旨変えしたことが、この先のアメリカを物語っています」

実際、新自由主義とグローバリズムによって、アメリカ国民の生活は、ボロボロになっている。
安い労働力を求めて、企業が海外に進出したために、雇用は減り、その一方、安い商品が海外から流入し、アメリカ製は競争力を失ってしまった。
グローバリズムに対する、アメリカ国民の怒りと絶望が、トランプを押し上げたのである。
大統領選で敗北したのは、新自由主義とグローバリズムだったのではないか。


■TPPに参加したら日本経済は崩壊

グローバリズムへの「反動」は、アメリカだけの現象ではない。
世界各国で、「保護主義」の動きが強まっている。
自由貿易を進めたはいいが、どの国もヘトヘトになっているからだ。

なのに安倍首相は、TPPを筆頭にした新自由主義を、推し進めようとしているのだから、時代錯誤もいいところだ。
もしTPPに参加したら、日本は、決定的な打撃を受けてしまうだろう。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が、こう言う。

「例外なき関税撤廃、自由貿易が大前提のTPPに参加したら、日本の産業と雇用が、破壊されるのは必至です。
たとえば、日本が強い自動車産業だって、とても全メーカーが生き残れるとは思えない。
まず農業、林業、漁業は、安い外国産に太刀打ちできないでしょう。
第1次産業が壊滅したら、地方経済は成り立たなくなる。
今でもシャッター通りだらけなのに、地方は活気を失い、本当に死んでしまう。
新自由主義とグローバリズムの本質は、一般国民を犠牲にして、グローバル企業を儲けさせることです。
世界的な大企業は潤うが、大衆には恩恵がない。
だからアメリカも、産業界はTPPに賛成し、多くの国民が反対している。
それでも安倍首相は、TPP参加を強行しようとしているのだから、どうかしています。
百歩譲って、もし、メード・イン・ジャパンが世界市場を席巻している時だったら、TPPに参加するメリットがあったかもしれませんが、
国際競争力が低下している今、参加するのは狂気の沙汰です。
日本の富と市場を、アメリカのグローバル企業に奪われるのは、目に見えています」


■グローバリズムをやめ、日本型を探せ

いずれ世界各国に、「グローバリズム」を見直す動きが、広がっていくはずだ。
「保護主義」の動きが強まってくるのは、間違いない。
日本も大急ぎで、行き過ぎたグローバリズムと、一線を画すべきだ。

このままグローバルな競争に突入しても、過激なコスト競争に巻き込まれ、デフレ不況を悪化させるだけである。
アベノミクスが、「異次元の金融緩和」を実施し、経済対策に何十兆円もの税金をつぎ込んでも、物価が上昇しないのは、
過度なグローバル競争によって、国内に、デフレ圧力がかかっているからである。

そもそも、日本のGDPの6割は、個人消費なのだから、一部のグローバル企業を強くし、多少輸出を増やしたところで、景気が良くなるはずがないのだ。

「この20年、アメリカのエージェントのような、経済学者やエコノミストが、
グローバルスタンダードだ、構造改革だと、日本式の経済システムをアメリカ型に変えてきたが、果たして日本国民の利益になったのかどうか。
大失敗だったのは、この20年の、日本経済が証明しています。
今からでも、日本の状況に合った経済システムを、探すべきです。
今振り返っても、年功序列、終身雇用、系列といった日本型経営は、ある意味、合理的なシステムでした。
雇用が守られるので、サラリーマンは、結婚、子育て、マイホーム取得と、人生設計を立てられた。
将来不安が少ない分、消費もできた。
ところが、グローバルスタンダードに合わせるべきだと、雇用を壊し、非正規を増やしたために、将来不安が強まり、消費が増えなくなってしまった。
最悪なのは、社内に、人材と技術の蓄積がなくなったために、商品開発力まで落ちてしまったことです」(経済評論家・斎藤満氏)

アメリカ大統領選でなぜ、「トランプ現象」や「サンダース現象」が起きたのか、日本はよく考える必要がある。

深まる秋に思うこと

2016年11月06日 | ひとりごと
今朝2時、まだ真っ暗な中、サマータイムが終わった。
時計を1時間繰り上げるので、日本との時差が従来の14時間になった。
これでまた、日本に暮らす家族との連絡が、ちょっとだけ不便になる。

紅葉がぐんぐん広がり、どこもかしこも落ち葉だらけ。
葉っぱの雨を受けながら、車を走らせていると、必ず「ありがとう」の言葉が口をついて出てくる。
春の瑞々しい若葉が、陽の光に輝く成熟した緑の葉となり、そして様々な秋色に染まって落ちていく。











約7ヶ月の間、いろんな喜びや楽しみ、そして慰めを与えてくれて、ありがとう。


今週の中頃から末は、ひさしぶり息子ふたりと、別々に会うことができた。
長男くんは、先週の木曜日から来週の月曜日まで帰省して、マンハッタン時代の友人に会ったり、クライミングを楽しんだりしている。
次男くんは、昨日の映画を一緒に観て、その後ニュージャージーまで戻り、『いろいろあったけど元気出しな!夕食会』を一緒に食べた。
どちらもアラサーのおっさん(彼ら曰く)なのだけど、家に戻ったらチビ時代そのままに、わたしはせっせと世話焼きをしたくなる。


さて、明日からの1週間は、教えている生徒たちの発表会に向けての最後の週だ。
生徒たちは、夏休みを挟んでの、9月からの新生活の混乱の中、一所懸命頑張っている。
そんな彼らのためにも、わたしもできるだけのことをしてあげたいし、自分自身の練習もしなければならない。
そして発表会が終わったら、ようやく毎年恒例の、と言えるようになった、2週間の休暇を取って日本に行く。

長い間、この2週間の休暇を告げる時、なんだか申し訳ないという気持ちになるのを止められなかった。
様々な国から移り住んでいる人たちで成り立っているこの国の社会では、帰りたい時に、帰る必要がある時に帰るのは、その人の権利であり、当たり前の行動なので、
わたしが遠慮がちに、申し訳なさそうに、ちょっと2週間ほど、日本に旅行に行くと言うと、
生徒の親御さんたちは決まって、パッと笑顔になって、「それはよかった、楽しんできてね」と、誰もが喜んでくれるのに…。

ピアノの教師が休暇を取る。
というのは、わたしが習っていた時代(それはもう、半世紀も前のことなのだけど)には、あまり無かったような気がする。
生徒の方も、レッスンを欠席するなんてことは、よほどのことが無い限り考えられなかったし、許されないと思っていたような気がする。
時代が変わり、国が変わり、文化や、わたし自身の暮らしの経済、そしてわたし自身も変わってきたはずなのに。

まあ今年もまた、1年頑張ってきた自分への褒美、みたいなタイトルをつけて、わたしは飛行機に乗り込むんだろうな。
いつか、そんな褒美でも何でもなく、ひょいっと行きたい時に行ける自分になれる日が、来ることを願いつつ…、

ブログ記事の更新がかなり少なくなるか、もしかしたら12月のはじめまで、ずっとできなくなるかもしれないことを、先にお詫びしておきたいと思います。
今もまた、原発問題、汚染問題、被ばく問題、TPP問題、緊急事態条項問題、豊洲問題、オリンピック問題、米軍基地問題…と、次から次へと起こってくる問題について、書きたいことがいっぱいあるのですが、
いかんせん、体はひとつ、心もひとつしかありません。
だからまず、わたしがわたしであること、心身共に健康を保つことを最優先にするには、あきらめなければならないことが出てきます。

でも、もしよかったら、カテゴリー毎にいろいろと書いてきたものがあるので、読んでいただけたらとても嬉しいです。
なんて言いながら、またせっせと書き込んでいるのを見つけたら、「こら、まず今せにゃならんことをやれ!」と叱ってください。

ユンカーマン監督「沖縄を『戦利品』としての運命から解放する責任を負うのは、日米両国市民である私たち」

2016年11月06日 | 日本とわたし
ユンカーマン監督の映画『うりずんの雨』(英語タイトル『THE AFTERBURN』)を観ました。

あっこちゃんが書いて持って来てくれた、『ようこそ ジャン・ユンカーマン!」の筆書き。愛が勢いよく伝わってくる、とっても良い書です。


当日受付を手伝っていたら、ユンカーマン氏が、来場者に混じってひょっこり現れました。
うっかりパンフレットとプログラムを渡しそうになったぐらいに、彼は来場者の人々に溶け合っていました。
なんと柔らかな、心を包み込むような眼差しを持つ人なのだろうと、一時彼から目が離せませんでした。



上映の前に、会場になった教会の牧師である高橋さんの、ソプラノサックスによる祈りの演奏、


主催者のひとりである空くんの挨拶と祈り、


そして、中垣上人の読経が行われ、


最後に、ユンカーマン監督が挨拶に立ち、前日に行われたマサチューセッツ州のハーバード大学での試写会や、映画の内容について、軽く語ってくれました。


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「私たちは沖縄のことを、どれくらい知っているのだろう?」

これは、パンフレットの表紙をめくると、いちばんに目に入ってくる言葉です。

「わたしは『沖縄』のことを、どれくらい知っているのだろう?」

原発事故から後、何度も何度も、対象になる『名前』を入れ替えては、自分に問うてきた言葉です。

わたしは『原発』のことを、
わたしは『避難者』のことを、
わたしは『水俣』のことを、
わたしは『被ばく』のことを、
わたしは『米軍基地』のことを、
わたしは『沖縄』のことを、

そして、そういう物事をこの世に発生させてきた、政治家や官僚や軍、もっと言えば国の実態を、
いったいどれくらい知っているのでしょう?

ここ数年、自分なりに、沖縄のことについて学んできたつもりでいましたが、『うりずんの雨』を観て、まだまだ足りないことを痛感しました。
そして、アフターバーン(=炎が消えた後も、火傷が深くなっていく日々)が、沖縄戦の地獄を体験した人たちはもちろんのこと、
元米兵や元日本兵の肉体と精神を、今も傷つけ続けていることを、実感として知ることができました。

沖縄戦は、今も続いている。

監督はまた、1995年に起こった、3人の米兵による小学生女児への暴行事件の犯人の一人に、インタビューをしました。
「このインタビューを承諾してもらうのは、とても難しかった」けれども、
「当時、早稲田大学で教えていたことを活用し、早稲田大学の名称が印刷された封筒を使ったのが、相手の信用を得た理由だと思う」と言って、会場を和ませていました。
このハープ元米兵の、暴行に至るまでの経緯や、その時の彼の心情、そして、被害者の女の子に許しを乞い、心からの反省を語る姿は、わたしの心にたくさんの宿題を残しました。

米軍基地を囲う金網に、ガムテープやリボンで、基地反対の意思を示す住民の人たち。
そのテープやリボンを、ひとつ残らず剥がし取ることで、町の美化が保たれると、誇らしげに言う住民の人たち。
「私たちは、任務を果たし、国のために戦うためにここに居る」と、美化運動に加わる米兵の人たち。

政治的な物言いを極力避けながら、経験者、関係者、そして一般の声無き人々や、残された貴重な映像などによって、どちらかに偏ることなく語られていく沖縄。
ともすれば、非常な差別を受け続けてきた姿に、心が沈み、希望を失いそうになります。

住民の4人に一人が亡くなったという事実。
1945年の4月1日から、12週間にわたって繰り広げられた殺戮の惨たらしさ、当時の市民に対する、徹底的な思想教育の恐ろしさ…。
狭い洞窟の中で数十日も過ごし、死ぬことしか考えていなかった市民たちは、互いに斬首したり刺し違えたりして、命を落としていきました。
日本の兵隊も、死ぬまで戦え、そうすれば勝てると教え込まれ、爆雷を持った生身の若者が、戦車隊に突っ込んでいくというような、異常な行動に出ました。
もちろん、25名全員全滅しました。
火炎放射器は、沖縄戦で使われた主要武器でした。
これに吹かれると、ゴム状のものがベタベタついて、どうしても落ちないので、衣類から何からみな焼けて死んでいく。
それは本当にひどい死に方だから、兵隊の間では、死ぬなら鉄砲の弾か何かで死にたいと話していたそうです。

チビチリガマという洞窟で起こった、83名の集団自決。
今もその洞窟には、その時に使われた包丁や鎌などの刃物が残っています。
石油を自分の体や子どもたちにかけ、毛布にかけして、火が燃え盛り、煙が充満する中で、首を斬り合いしながら死んでいったのだそうです。
何も考えられない。
死ぬ、死ぬ、死ぬだけ。
どうしたら死ねるか、こればかり考えていた。
当時はそういう教えだったと。
沖縄は、捨て石として利用されたのですから、その沖縄に住む人たちもまた、同じ扱いを受けたのだと思います。
更には、戦時中の日本兵のための慰安所から続く、沖縄での兵士による性暴力は、今も女性を苦しめています。

本当に、なぜここまでにひどい差別を、沖縄は受け続けなければならないのでしょうか?

それでも、「我々は負けたことが無い」と言い切る、とてつもなく大きな力に立ち向かう人たちの笑顔や、民謡を歌い踊る姿に、
沖縄に生きる人々の間に、脈々と受け継がれてきた、これほどにも強い精神と希望を、分け与えてもらったような気持ちになりました。

沖縄の年表を、ペリー来航のあたりから現在まで、膨大な資料と取材を重ね、映像にしてくださったユンカーマン監督。
その映画は、静かに、淡々と、けれども確固たる信念を持って、
戦争の愚かさ、悲惨さ、権力者たちが振るう暴力、わたしたちの精神をも狂わせる抑圧と差別について、
わたしたち一人一人が、自分の問題として受け取り、考え、自分なりの意見を持ち、それを行動につなげていくことの大切さ、
抗いようの無いものを相手にしていることを悲観せず、楽観もせず、諦めず、やけにならず、
心を鼓舞してくれる歌や言葉を共に唱い、時には踊り、語り合いながら、これからも闘っていくのだという希望の玉を、
観ているわたしたちの手に、そっと乗せてくれたような気がします。

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購入したパンフレットに、ユンカーマン監督による、沖縄国際大学教授の前泊博盛氏へのインタビューが載っていました。
この内容が本当に素晴らしく、沖縄が抱えている実情のすべてが、とても簡潔に鋭く語られています。
↓以下、部分的に省略しながら、紹介させていただきます。

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沖縄の米軍基地は、沖縄戦による米軍占領後、本土攻撃のための拠点として準備された。
戦後は、朝鮮、ベトナム戦争時の攻撃、戦略基地に変わった。
現在は、アメリカの世界戦略の拠点基地となっている。
サンフランシスコ講和条約発効後、本土と分離された沖縄は、核ミサイルの配備も可能な基地として、戦略的に強化されてきた。
講和条約発効後、本土で高まった反米軍基地運動で、本土各地を追い出された米軍基地の受け皿としても、沖縄は使われてきた。
東アジア全体をにらめる地理的優位性が、『太平洋の要石』という形で、戦略爆撃機の出撃拠点にされた。
日米安保体制の維持のために、在日米軍に、施設・区域を提供しなければいけない日本側の『安保負担義務』を、沖縄に基地を置くことで果たしてきた。

とにかく沖縄に基地を維持しておけば、アメリカも文句を言わない。
そういう政治的バランスを取るためというのも、沖縄に米軍基地が置かれ続けている理由。

沖縄に対する、アメリカの特権的な意識と、それを許している日本の差別意識について

軍事というものが時代とともに変化して、理由を変えながら存続を続けてきた。
沖縄経済はその中で、戦前の主要産業たる農業が、米軍基地に農地を奪われ、いやおうなく基地に依存させられてきた。
しかも、戦後の日本が、1ドル360円の円安固定相場制の時代に、沖縄は、米軍統治下で、1ドル120円のB円(B型軍票)という、超円高の通貨政策がとられ、沖縄の、輸出向けの製造業の多くが、淘汰されていく。
こういう米軍統治時代の通貨政策と産業政策で、沖縄は、どっぷりと、基地経済に浸らざるを得ない。
そんな犯罪的な、経済政策を行われた気がする。

農地を基地に奪われた農民は、もうそこ(米軍基地)しか働く場所がない。
住民が捕虜収容所に入っている間に、基地が建設され、解放されて地元に戻ったら家が無い。
農地も土地もとられている。
沖縄本島の半分以上が、米軍に接収されている。

当時の沖縄の人たちが、戦争で疲弊しながらも、しっかり基地反対してくれたことで、永久的な基地建設は免れた。

沖縄戦は、太平洋戦争の中で、一番犠牲が多いところなのに、ノルマンディーの戦いの方が、はるかに認識されている。
そういうアメリカの意識も、今の沖縄の置かれている現状につながっている。
昔も今も、沖縄は、「記憶に無い」というか、「認識されない島」。
「忘れられた」どころか、「覚えた覚えもない島」なのかもしれない。

嘉手納飛行場は、4千メートル級の滑走路が2本ある、成田空港の倍の面積、機能でいうと1.5倍の、アジアでも最大級の規模の空港。
明日返還されてもすぐに使えるので、その経済効果は、1兆円くらいになる。
滑走路が2つあるので、青森県の米軍三沢基地や、山口県の岩国基地のように、『軍民共用』『軍軍民共用』で使えば良い。
共用している三沢基地や岩国基地は、滑走路が1本しかないのにできているのだから、2本ある嘉手納基地にできないはずがない。
有事には、那覇空港や離島の空港すべてを使うので、戦略上、平時に嘉手納を独占しておく理由が無い。
大きな戦争が起こった時に、というが、いつまでそういう備えをするのか、なぜ、軍事力にいつまでも依存していくのか、
過去の戦争の歴史を振り返り、反省をし、教訓として学ぶことが、主要先進国には必要である。
殺戮のための基地に、どれだけのコストを、今後も払い続けるのか。
『軍産複合体』の危険性が、戦後70年経った今も、アメリカ経済を縛り、戦争を続けなければ存続できない国家にしている。
軍事産業依存、軍依存経済から、どうやって脱却するか。
沖縄の脱基地経済、脱軍事経済を考えることは、アメリカ経済が抱える同じ問題の処方箋にもつながる。
だから、基地を経済基地に変えていく。
あるいは、世界経済、アジア経済の貢献拠点、軍事基地から経済基地に変える。
それが、新しい安全保障の形を、生み出す契機になる。

沖縄経済全体に占める、米軍基地経済の比率は、4兆円のうちの2000億円。
5%程度まで、貢献度は落ちている。
ヨーロッパのように、経済的に運命共同体になること。
アジアにもAU(亜州連合)を作り、経済共同体になることによって、域内の対立や戦争は意味を失う。
軍事基地は、富を生まない。
脅威を生み、破壊を生み、殺戮を生む。

基地がなくなると、沖縄は経済的に困る。
基地がなくなると、沖縄と日本の平和が危なくなる。

この二つの神話、基地経済の呪縛から、どうやって解き放つか。

フェンスの内と外にある「受益者と被害者の分離」の問題がある。
基地から利益を得る人たちと、被害を受ける人たちは別である。
(*利益を得る人たち)
フェンスの内側に土地を持っている軍用地主には、年平均約200万円(沖縄県民の平均的な所得と同額)支払われている。
軍用地主は43228人、年間の借料は832億4千万円。
基地従業員は8800人。

今現在、民間経済がものすごくパワフルになってきていて、基地返還後の後利用で、失敗したところは一件も無い。
ミサイルや核兵器の開発で、沖縄の軍事的地理的優位性は、すでに喪失している。
しかし、沖縄の経済的な地理的優位性には、アジア中の企業がものすごく注目している。
「嘉手納飛行場を軍事だけに使わせるのはもったいない」「もっと金になる仕事やろうよ」となり、
アメリカにとっても、アジア経済の拠点化は、安全保障にもつながる。

軍事での紛争解決では、勝者と敗者が生まれる。
でも、経済安保は、win-winの関係が重視される。
経済は敗者を作らず、勝者と勝者を作る。
そういうwin-winの安全保障の時代に変えてほしい。

戦後70年使って、老朽化した基地を返して、最新鋭の基地に更新する。
それを、普天間返還と絡めて、日本政府に全部負担してもらう。
辺野古新基地には軍港機能があり、整備地区機能があり、兵站(貯蔵・補給)機能、そして飛行場まで備えている。
近くには、核ミサイルも配備されていた、辺野古弾薬庫もある。
これほどフルセットで、使いやすい最新鋭の基地が、アメリカにすればタダで手に入る。

「普天間を返す」というフェイクだけで、日本政府は応じてしまう。
一部は、別基地に新基地を建設して移転する。
その基地建設の大金を、負担させられる日本国民の多くも、
「なぜ沖縄は拒否するんだ」と、移転・新設を応援してくれる。

そんな矛盾に誰も気づかない。
辺野古新基地も含め、沖縄の米軍基地は、本当に必要なのか、役に立っているのか。
なぜ十分に検証しないのか。

沖縄は、米軍基地がなくてもやっていける経済を目指している。
それが成功すると、基地依存度の高い米国経済の、脱基地・軍事経済の処方箋にもなる。
脱基地で発展する沖縄の姿を見た時に、アメリカ自身が、基地依存経済の呪縛に気づき、
アメリカにとって沖縄は「忘れられない島」に変わっていく。


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1945年4月1日、アメリカ軍が沖縄本島に上陸、12週間に及ぶ沖縄地上戦では、4人に一人の住民が亡くなりました。
本作では、当時、同じ戦場で向き合った元米兵、そして沖縄住民に取材を重ね、米国立構文書館所蔵の、米軍による記録映像を交えて、沖縄戦の実情に迫ります。

また、戦後のアメリカ占領期から今日に至るまで、米軍基地をめぐる負担を、日米双方から押し付けられてきた、沖縄の差別と抑圧の歴史を描き、
現在の辺野古への基地移設問題につながる、沖縄の人たちの深い失望と怒りの根を、浮かび上がらせます。

『老人と海』で、与那国島の、荒々しくも美しい自然と風土を捉え、
『映画日本国憲法』で、日本の平和憲法の意義を訴えた、アメリカ人映画監督ジャン・ユンカーマンが、
真の平和を求め、不屈の戦いを続けている、沖縄の人々の尊厳を描いた、渾身のドキュメンタリー。



小嶺基子(詠み人):
うりずんの 雨は血の雨 涙雨
礎の魂 呼び起こす雨


『うりずん』とは、『潤い初め(うるおいぞめ)』が語源とされ、
冬が終わって大地が潤い、草木が芽吹く3月頃から、沖縄が梅雨に入る5月くらいまでの時期を示す言葉。
4月1日から始まった沖縄地上戦が、うりずんの季節に重なり、戦後70年経った現在も、
この時期になると、当時の記憶が甦り、体調を崩す人たちがいることから、
沖縄を語る視点のひとつとして、本作のタイトルを『沖縄 うりずんの雨』とした。



ジョン・ダワー(歴史家):
この世界に、沖縄ほど、過酷な第二次世界大戦の遺産はない。
そして、平和と平等を求めるどんな声も、沖縄の人々が語る言葉ほど雄弁ではない。

映画『沖縄 うりずんの雨』を観ると、そんな思いにさせられる。
この映画は、沖縄の人々に寄り添いながら、けっして抑制を失わず、私たちの心をしっかりとつかむ。
そして、1945年の沖縄戦から、戦後の米軍による植民地化、現在の闘争まで導いていく。

日米間の戦争の悲惨さや、冷戦時代のアメリカによる権力の乱用、
そして、冷戦後も続いた、東京の政治家たちの背信…。
これらを証言するのは、沖縄の人々だけではない。
アメリカ人たちも、率直な言葉で語る。
さまざまな視点から捉えた映像の中には、戦場でアメリカ軍が撮影した、引き込まれるような記録映像もある。

この映画を観ることで、私たちは、沖縄の人々が体験してきた抑圧と差別の歴史を、直視させられることになる。
それでもなお、彼らが語る言葉は明快で、威厳に満ちているため、
観る者に、理解や賞賛だけでなく、希望すら抱かせる。
この映画の、最もすばらしいところである。



ジャン・ユンカーマン(監督):
1975年、大学を卒業した私は、沖縄を訪れ、6ヶ月間、コザのバー街で、反戦兵士(*1)たちの支援活動に関わりました。
ベトナム戦争が終わった直後で、其処此処に、きな臭い雰囲気が残っていました。
沖縄戦の終結からは30年が経っていましたが、島の至る所で、焼け野原になった跡が見られました。
高い樹木はありませんでした。
トタン屋根を乗せただけの建物が、たくさんありました。

占領は3年前に終わったはずなのに、沖縄はまだ、基地だらけでした。
米軍による支配が、続いていたのです。
「基地の中に沖縄がある」と、言われたとおりでした。

私は、アメリカをはじめ、世界中の人々に、沖縄の実態を伝えることが、自分の人生の仕事の一つだと考えるようになりました。

沖縄の実態の一つは、この映画の英語タイトル"The Afterburn"が象徴しています。
『アフターバーン』とは、炎が消えた後にもやけどが続く。
やけどが残るんじゃなくて、時間とともに、火傷がより深くなっていくことです。
沖縄戦を体験した人々は、まさに、そうしたトラウマと共に生きてきました。
元米兵もそうです。
元日本兵もそうです。
そして特に、4人に一人が亡くなった沖縄の人々にとって、沖縄戦は今も続いているのです。


想像もつかないほどの戦争体験をした、沖縄の人々は、一貫して、戦争を拒絶してきました。
米軍も、沖縄戦では、同じ血を流しました。
しかし米軍は、沖縄を『戦利品』として扱い、膨大な基地を建設。
それらを拠点として、朝鮮、ベトナム、中東での戦争を続けてきました。
平和を求める沖縄の文化と、戦争を選ぶアメリカの文化ーー。
対極にある二つの文化が、狭い島に共存せざるを得なくなったのです。

何の武器も持たない沖縄の人々が、世界でいちばん強大な軍隊を持つアメリカに対して、反戦・反基地の戦いを始めました。
そして、1950年代の島ぐるみ闘争から、普天間基地の辺野古移設反対闘争まで、不屈の精神で戦い続けています。
私は、1975年に、初めてその精神に触れ、深い感銘を受けました。
そして、強い尊敬の念を抱きました。
以来、40年が経った今、不屈の精神はいっそう強固となり、さらに広がりつつあります。
まさにそれこそが、私が世界に伝えたい、もう一つの沖縄の実態です。
私はそれを、この映画の日本語タイトル『うりずんの雨』に込めたつもりです。

米軍基地を撤廃するための戦いは、今後も長く続くでしょう。
沖縄の人々は、決してあきらめないでしょう。
しかし、沖縄を『戦利品』としての運命から、解放する責任を負っているのは、沖縄の人々ではありません。
アメリカの市民、そして日本の市民です。
その責任をどう負っていくのか、問われているのは私たちなのです。


(*1)
米軍の中で、反戦の意志を持って抵抗していた兵士のこと。
ベトナム戦争当時、反戦米兵の支援運動を続けてきた。
PCS(パシフィック・カウンセリング・サービス)という米国のグループがあり、ユンカーマン監督は、その沖縄事務所のスタッフとして、法律相談などの活動をしていた。


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企画と実行を担ってくれた歩美ちゃん。




今回もまた、素晴らしい広告パンフレットを手がけてくれた、デザイン神の金魚さん(中央右)。彼の後方には監督が。


人間は素晴らしい。愛すること、祈ること、人の良いものを引き出すこと、そして繋がることを説いてくださる純さん。



すっかり日が暮れていた。


実は今回初めて、次男くんが参加した。
「沖縄のことをよく知らないでいるのは、いけないと思うから」と言って。
「映画を観て、どうだった?」と尋ねると、「観て良かった。知らないことが多過ぎた」と言った。
ものすごく嬉しかった。

TPPの『毒素条項』に、日本はじわじわと殺されていく。そんなことをさせてたまるか!

2016年11月02日 | 日本とわたし


山本農相「冗談を言ったらクビになりそうになった」
【NHK】2016年11月3日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161102/k10010753201000.html

山本農林水産大臣は、1日夜、都内で開かれたパーティーで、
先月撤回した、TPPの国会承認を求める議案などの審議をめぐる、強行採決に関する発言について、
「冗談を言ったらクビになりそうになった」などと述べました。
山本大臣は、2日朝、「ご迷惑をおかけします」と述べました。

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の、国会承認を求める議案と、関連法案の衆議院での審議をめぐって、
山本農林水産大臣は、先月中旬、佐藤・衆議院議院運営委員長のパーティーで、
「強行採決するかどうかは、佐藤委員長が決める」などと発言し、その後、衆議院の特別委員会で、発言を撤回して、陳謝しました。

これについて、山本大臣は、1日夜、都内で開かれた自民党の衆議院議員のパーティーで、
「冗談を言ったらクビになりそうになった」などと発言しました。
また、山本大臣は、パーティーの参加者を前に、
「JAの方々が大勢いるが、明日でも、この衆議院議員の紹介で農林水産省に来てくれれば、何かいいことがあるかもしれません」とも述べました。

民進党などは、
「撤回した発言を『冗談』としたのは、国会をばかにしている」などとして反発し、山本大臣の辞任を求める声も出ています。
こうした中、山本大臣は、2日朝、農林水産省に入る際に、記者団から、
「昨夜の発言について、野党からは反発が出ているようだが」と質問され、
「ご迷惑をおかけします」と述べました。

官房長官「辞任するようなことでない」
菅官房長官は午前の記者会見で、
「閣僚は、発言に気をつけなければならず、緊張感をもって発言すべきだ。
昨夜、山本大臣から、『申し訳ない』という電話を受け、私からは、
『発言に気をつけ、緊張感をもって国会にあたるように』という厳重注意をした」と述べました。

そのうえで、菅官房長官は、国会運営への影響について、
「国会で決めることなので、政府からコメントすることは差し控えたい。
TPP協定は、わが国の成長戦略にとって、極めて重要であり、その効果を速やかに発現するために、協定と関連法案の1日も早い成立が必要だ。
政府としては、速やかに審議を進めていただけるよう、緊張感をもって丁寧に進めていきたい」と述べました。

また、菅官房長官は、記者団が、
「再び問題となる発言をしたことで、大臣の資質の面で問題はないか」と質問したのに対し、
「そこは問題ない。軽率な発言をしたことを本人は深く反省していて、辞任するようなことではない」と述べました。


参院自民幹事長「断じて許せない」
自民党の吉田参議院幹事長は、党の参議院議員総会で、
「あのような発言は、断じて許すわけにはいかない。
TPPの国会承認を求める議案などが、参議院に送られようとしているが、非常に日程が厳しいので、
われわれも緊張感を持って、言動には気をつけながらやっていきたい」と述べました。


公明 漆原中央幹事会会長「猛省を促したい」
公明党の漆原中央幹事会会長は、記者会見で、
「緊張して厳しくやろうと言っているにもかかわらず、山本大臣の発言が止まらず、残念だ。
しゃべってわびるなら、しゃべるなと言いたい。
こういう不誠実な言動の積み重ねが、安倍内閣の体力を奪っていることを、しっかり認識してもらいたいし、山本大臣には猛省を促したい」と述べました。

また、漆原氏は、記者団が、「山本大臣は辞任すべきと考えるか」と質問したのに対し、「ご本人がどう考えるかだ」と述べました。


民進 蓮舫代表「審議に影響」
民進党の蓮舫代表は、党の参議院議員総会で、
「山本大臣の謝罪は、うわべだけだったのが明らかになった。
ちょっと理解不能だ。
さらに驚いたのは、山本大臣が、
『あすでも、議員の紹介で農林水産省に来てもらえれば、何かいいことがあるかもしれません』と発言したのは、利益供与ではないか。
当然、委員会審議に影響が出ると言わざるをえない」と述べました。


共産 穀田国会対策委員長「大臣としての資質に欠ける」
共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で、
「山本大臣は、反省したはずなのに、それをまた、おちゃらけて話をすること自体、大臣としての資格、資質に欠ける。
また、農業関係者に関する発言は、依然として、古い時代の利益誘導型の政治に、どっぷりつかっている神経で、
時代錯誤もはなはだしく、二重の意味で、大臣に値しないことは明らかだ」と述べました。

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この山本農水相、米の売買同時入札(以下、SBS)を巡る不正取引問題で、
農水省の調査対象となっていた輸入業者や卸売業者から、資金提供を受けていたのですよ!
(*SBS:外国産の米について、国が輸入商社から一旦買い取り、さらに金額を上乗せして、米の卸業者に売り、国産米との価格差を無くそうとする制度)

農水省は、輸入商社と米の卸業者がグルになって、不正取引を行っていたことを、2014年から把握していて、放置していたのですよ!
そして、その省のトップであるこの男が、その不正取引の当事者である、輸入業者と卸売業者から、資金提供を受けていたのですよ!

そんな男だからこその、
『あすでも、議員の紹介で農林水産省に来てもらえれば、何かいいことがあるかもしれません』、なのではないでしょうか?

もう許せませんよね。
認められませんよね。

辞任もちろんですが、まともな人間(いるかどうかは甚だ疑問ですが)に差し替えて、審議を一からやり直すべきです。
日程をちょっとばかりずらして終わり、なんてお為ごかしは、もう止めさせなければなりません。
今の政権に、このTPPの内容を、きちんと認識できている人がいるのか?
いないです。
いたら、こんなものを承認しよう、採決しようなどと、考えられないのですから。

とにかくこの男は、政治家としてお粗末過ぎます。
大臣の辞任で済まさず、議員を辞めさせるべきです。



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もう今から1年も前に、このような警告を必死で出してくださっていた方がいました。
もう読まれた方もたくさんいらっしゃると思います。
国会の審議で、この『毒素条項』について、一人一人に問い質さなければならないのではないでしょうか。
もう時間がありません。
野党議員の皆さん、どう思われますか?

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TPPについて色々調べてみたら、究極の不平等条約でした。
関税の撤廃による、自由貿易なんて嘘。
米国が、日本の制度やルールを変えるために、「日本の国家主権」を無力化する手段でした。

【TOGETTER】2015年10月21日
http://togetter.com/li/889832

国内産業の保護を目的とする関税以上に、米国が日本に撤廃させたいものがあります。
それが、「非関税障壁」です。
非関税障壁とは、関税以外の方法により、輸入を抑制したり、貿易を制限したりすることですが、
米国が、邪魔だ、障害だ、と感じるものが全て、非関税障壁です。
せっかく日本政府が、日本国民を守るためにつくった制度や法律、規制であっても、
自国の企業が儲けるために、邪魔なものは全て無くしてしまおうというのが、アメリカの狙いであり、TPPの真の目的なのです。
米国は、日本の市場を無理矢理こじ開けるための、新しい道具を用意しましたが、
それが、TPPの『毒素条項』なのです。
TPPは、日本にとって第二の黒船、平成の黒船とも言える一大事なのです。



安倍首相の「TPP反対とはただの一度も言ったことはない」という、4月7日の国会での発言が、物議をかもしました。

https://youtu.be/_TTuFO8ba5w

まあ、実際は何度も言ってますし、そもそもマニフェストに謳っている訳ですから、言っていても何の不思議もありません。

百歩譲って、安倍首相は、『「聖域なき」関税撤廃はしません』と言っていましたから、
「聖域」が有るのなら、TPPの交渉に参加しても、嘘吐きとはならないのかも知れません。
しかしやはり、テレビで全国放送される衆人環視の国会でさえ、平気で嘘を吐きまくってきた安倍晋三です。
TPPに関しても、全てが嘘でした。

TPP国会決議で守ると決めた重要5項目のいわゆる「聖域」。

『「無傷で守られたものはゼロだ」と、農林大臣が答弁』

国会決議違反が明らかとなりました。

衆参農林水産委員会は、政府がTPP交渉に入る前に、
コメや麦、砂糖、牛肉・豚肉、乳製品の「重要5項目」について、「段階的な関税撤廃も認めない」とする決議をしていた
のです。

つまり、「聖域」そのものが無かった、と言うことです。

安倍首相の言うことは、全てが嘘でした。

ここから先の内容は、5か月前に書かれたものです。
まだ批准されてもいないのに、TPPを先取りしたかのような事が、既に始まっています。

今月からは…
『大病院を受診するためには、初診料とは別に、5,000円が掛かるようになりました』

TPPが批准されれば、次から次と同じようなことが起こります。
どうなるのか。
どんなことが起きるのか。
詳しくは、ここから先に書いています。

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ここから先は、覚悟してお読みください。

テレビのニュース番組を観ていて、不思議に思うことがあります。
TPPについての報道の時に、「TPPについては色々問題があると言われていますが…」と言って、そこから先には決して触れない事です。
問題ってなんだろう、とは思わせても、その問題が何なのかは、決して言葉にはしません
いま、頑張っていると思われる、テレビ朝日の『報道ステーション』や、TBSの『NEWS23』ですらそうです。

Twitterでは、よく目にする『ISD条項』『毒素条項』などの文字。
Twitterでは、140文字という字数制限のため、詳しい内容や解説は、書いてありません。
テレビのニュース番組に期待するのは、その詳しくて解りやすい説明や解説ですが、『毒素条項』や『ISD条項』などの言葉すら出て来ません。

それこそ、池上彰さんが、二時間番組で解りやすい解説をしないのが、不思議です。

TPPに詳しいジャーナリストの堤未果 (@TsutsumiMika) さんによると、

TPP についてのコメントや解説を、求めて呼ばれた場合でさえ、
東京のキー局では、ISD条項などの毒素条項について、話すことが許されないとの事。


今年(2015年)の7月24日の「報道ステーション」に、堤未果さんご自身が出演されて話されていたのが、唯一かも知れません。

そこで、自分自身で、堤未果さんを始めとするTPPに詳しいジャーナリストのみなさんの、ブログやHPを出来るだけたくさん観て、
自ら勉強したことを連ツイし、自らまとめましたので、ぜひご覧下さい。

ちょっとその前に、安倍自民党政権による、TPP参加への経緯を、おさらいしておきましょう。

2013年2月22日、民主党から政権の座を奪い返したばかりの安倍首相と、再選されたばかりのオバマ大統領の、初顔合わせとなる日米首脳会談が行われましたが、
その一月ほど前の、スイスのダボス会議で、カーク通商代表が茂木経産相に、「日本車の輸入関税を続ける」と通告されていたのです。
つまり、「聖域化」は既に決まっていたわけで、さらに重要な点は、

工業品の代表である自動車に、関税を残すというのでは、
政府がうたう、TPPの関税の撤廃や引き下げによる「高いレベルの自由化」が、まやかしでしかないという事がよく判ります。


TPP関連では、安倍首相はひらすら、「交渉に聖域がある」という言質をオバマに求め、
「関税撤廃に聖域」があるかのような表現を、共同声明に入れてもらいました。
国内を説得するためだったのです。

安倍首相が言うTPPは、関税の撤廃による貿易の自由化などではなく、その焦点は、「非関税障壁」なのです。

自由貿易というからには、競争は有ってもかまいませんし、自国や、自国の企業に有利になるように、交渉するのも理解できます。

問題は、非関税障壁を取り払うための、その手段であり、方法なのです。
米国は、TPPに、「毒素とも言える条項」を仕込んでいるのです。


テレビが、TPPが関税の問題であり、農業だけが唯一影響を受ける分野であり、一般の庶民にとっては、輸入食材が安くなり喜ぶべき事であるかのように報道するのは、
この毒素条項から目を逸らすための、印象操作であり、官邸の報道管制と情報統制です。

(*まうみ注・↓以下は、S_Shmizu @cap58020さんが、2015年10月21日にツィッター上で説明してくださった、TPPの『毒素条項』の実態と日本社会への影響について)



TPPの毒素条項は、上記のものだけではありません。
その他にも、以下のものがあります。
・未来の最恵国待遇
・ネガティブリスト方式
・規制必要性の立証責任と開放の追加措置

等があります。
この3つも、恐ろしいものには違い有りませんが、最初にあげた4つは、特に重要、かつ深刻な影響を与えるものですので、この4つに絞って、次から説明していきます。





















次からは、ここまで説明してきた4つの毒素条項が、現実の日本社会にどんな影響を及ぼすか、具体的例を挙げて説明していきましょう。













実は、この程度で済めば、まだマシと言えるかも知れません。
TPPの24分野の中に、知財(知的財産権)というものがあります。
これは、単に映画や音楽ソフトの特許期間の問題だ、と思っているなら間違いです。

日本では、医療方法の特許性が認められていなかったので、連想しづらいでしょうが、
米国では、手術方法(術式)、治療方法、診断方法ともに、特許の対象となっているのです。
ただでさえ高額の手術費用に加え、アメリカで考えられた術式には、さらに高額の特許料が、必要になるかも知れないのです。



知財(知的財産権)で、医薬品の特許期間が延長されるようになると、事実上ジェネリック薬品は市場から姿を消し、さらに薬価が跳ね上がります。
年金生活者などの高齢者や、病気があって働けず、生活保護等で暮らしている人や、働いていても貧困に苦しむ人にとっては、比喩では無く、現実に死活問題です。

さて、ここからは、「世界一の食料輸入大国」日本の輸入食品と、その食の安全に、TPPの『毒素条項』がどのように影響してくるのかについて、解説していきます。

















上記のツイートで、モンサント社製の農薬『ラウンドアップ』を「ネオニコチノイド系」と記していますが、「グリホサート系」の間違いでしたので訂正します。

ついでに、この『ラウンドアップ』について、少し紹介しておきたいと思います。

世界中の庭、農場、公園などで使用されているラウンドアップは、モンサント社が開発し、1970年代から販売されて、長い間一番売れている除草剤です。
しかし今、研究者らは、ラウンドアップの不活性成分(補助成分)のひとつが、ヒト細胞、特に胎芽、胎盤、臍帯の細胞を、殺すことができることを発見しました。

現在まで、ほとんどの研究は、ラウンドアップ中の不活性混合物よりも、主成分であり活性成分の、グリホサートの安全性に向けられてきました。
しかし、この新たな研究で、科学者らは、ラウンドアップの不活性成分が、農場や芝生で使用されているものよりもはるかに希釈された濃度であっても、ヒトの細胞に、有毒影響を増幅することを発見しました。

ある特定の不活性成分、POEA(polyethoxylated tallowamine)(非イオン系界面活性剤ポリオキシエチレンアミン)は、
ヒトの胎芽、胎盤及び臍帯の細胞に対して、除草剤自身よりもはるかに毒性が強く、
研究者らはこの発見を、『驚くべきこと』と呼んでいるようです。
さらに、
『市場で入手できる、企業秘密のこの混合物は、ラウンドアップ処理された大豆、アルファルファ、トウモロコシなどの作物や芝生、庭などの残留レベルであっても、細胞を損傷し殺すことすらある』とも。

そして、『ラウンドアップ』の主要成分の、「グリホサート」についての最新の情報ですが、
世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が、2015年3月下旬に発表した報告書では、
ラウンドアップの主要成分であるグリホサートは、5段階ある発がん性分類リストのうち、上から2番目にリスクが高い、「発がん性が疑われる」(2A)カテゴリーに分類されました























本来、検査結果が出るまでは輸入を認めない、というのが、検疫検査のあるべき姿です。
『検査結果が出た時点で、既に食べてしまっていた』というのでは、検疫検査の意味がありません
日本は、「世界一の食料輸入大国」でありながら、食の安全確保のための、輸入食品の水際での検査態勢が、不十分です。

最低でも、検査率を5割にあげるべきで、そのためには、食品衛生監視員を、最低でも約3000人体制に強化しなければ、対応できません。

しかし、安倍自民党政権は、現在の399人から増やす気は、まったく無いようで、
TPPにより、輸入食品が今より5割近くも増えた後も、ほぼ100%を、検査無しで流通させることを考えているようです。
















野菜天国

2016年11月01日 | ひとりごと
前にもここで紹介した、コミュニティ農場。


親友ののりこちゃんが暮らす町の、住民の人たちの支援で成り立っているオーガニック農場。
毎週火曜日と金曜日が、新鮮な野菜をいただく日になっていて、会員の人たちは自分の都合の良い方の日を選んでやって来る。
各野菜に、何パウンドまでとか、何個までという表示が書かれていて、各自それぞれ秤で計っては、せっせと袋に詰めていく。
のりこちゃんは、ここの農場の空気がひときわ美味しくて気持ちがいいからと、火曜日の朝からここに来て、野菜やハーブの収穫の手伝いをする。
そんな人は多分、のりこちゃんだけで、だから農場の人はみんな、彼女のことが大好きだ。

で、そののりこちゃんは今、沖縄にいる。
5年ぶりのウチナーンチュ大会が開かれたからだ。
だからわたしが彼女の代わりに、今週のお野菜をいただきに行くことになった。

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今日は天気も上々。
さあ出発!と道路に出ると…なんでこんなお山が…。


大きな木が多いので、秋の落ち葉の季節はどこも大変。
毎年、こういう落ち葉の山を見ると、ついつい飛び込みたくなったり、焼き芋がいくつできるだろう、などと夢想する。

高速道路を40分ほど走ってのりこちゃんの町につながる出口から降りると、いきなりのんびりとした牧場や、畑の風景が続く。

あ、新鮮卵の販売?!


残念…もう営業してないっぽいとがっかりしてたら、目の端っこに動くものが…あれれ?あの方々はいったい…?



農場に着いた!


休耕している側の丘。


別の休耕中の広場。


ああ、ほんとに気持ちがいい。


秋の進み具合が、うちの町より2週間ばかり早い。


同じニュージャージー州なんだけども、トランプを支持している人ばっかりで、ちょっとびっくりした。


帰りの道で出会った牛さんや豚さん、とっても気持ち良さそう。







今日の分け前。







こんな素晴らしい野菜をいっぱい、作ってくださった人たちに感謝!
お天道さまに感謝!
そして、すっごくたくさんのお裾分けをしてくれた、のりこちゃんに感謝!
いくらなんでも食べきれないから、柔らかな葉っぱものは、歩美ちゃんに食べるのを手伝ってもらおう。