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ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

アラセブの挑戦

2025年04月25日 | 音楽とわたし
ピアノの調律を自分でやってみよう。
ずっと考えていたことなのですが、先日から実践してみることにしました。
これまでに何人もの調律師さんと出会っては別れ、また出会っては別れというご縁を繰り返してきましたが、相性や音の好みがピッタリ合うという人に出会うことは本当に難しいですね。
今、わたしのピアノたちがお世話になっている調律師のマーティンは、長年の付き合いだった元調律師さんのお弟子さんです。
元調律師さんはフロリダに引っ越してしまったので、わたしの好みをよく知る彼が、マーティンを紹介してくれたのでした。
そのマーティンが、冬の終わりに、音がシャンシャンしてきた生徒用のピアノを、全体的に丸くて柔らかな音色に変えてくれました。
これで複数の生徒から苦情が出ていた、「どんなに気をつけても弱い音や柔らかい音が出せない」という問題が解決したのですが、なぜか今回はわたしのピアノとの音程が合わない鍵盤がいくつもあって、一緒に弾くのが苦痛でなりません。
それで急遽、問題の鍵盤だけの調律をお願いしたのですが、彼とのスケジュールがなかなか合わなくて、やっとのことで再度調律してもらったにもかかわらず結果はあまり芳しくありません。

また来てもらうのは気が引ける。
けれどもこんな状態ではレッスンが苦痛になる。
自分でやってみるか。

わたしは調律の作業を見るのが好きで、調律師さんが変わるごとに眺めてきましたし、絶対音感もあるので、見よう見真似でできると過信していました。
なので簡単に考えていて、ネットで評判の良さそうなチューニングハンマーを買い、それだけでもうすっかり調律師になった気分でいたのでした。
そして第一日目、そのハンマーを見た夫の、「そんなチャチな工具で大丈夫なのか?」と訝る声を思いっきり無視して調律開始。
まずは調律したい鍵盤のピンはどれかをしっかり確認します。
そしてピンにハンマーの先をはめ込んで、クイッと回すと…。
結果から先に言うと、とんでもないことを始めてしまったと、ものの3秒くらいで思いました。
そもそも、一つの鍵盤に三つの弦が関わっていることすら頭に無かったほどの阿呆だったし、生徒用のピアノの音に合わせたら良いのだからと、音叉もチューニング機能アプリも使わず、ただただ雰囲気のみでやってしまったのでした。

ものすごく長い時間をかけて、たった2音の調律を終え、じんわりと汗をかいた(多分脂汗)まま、慌ててYouTube先生に調律の器具の選び方と調律の仕方について教えを乞いました。

数件のビデオを観ながら(よくも弦を切ってしまわなかったことよ)と冷や汗をかき、自分がいかに無謀なことをしていたかを大反省。
今度はちゃんとした工具を注文し、教えてもらったことを参考に、弦の音をミュートするゴムウェッジなるものも使いながらやってみました。

ピアノの調律は100%を目指さない。80%がいい感じ。
1日5分程度の短い時間で1音だけ調律していく、というような軽い感じでやっていく。
いやはや、ピアノの調律というのは実に大変な作業であることを、今更ながら学びました。
でも、調律ってなかなかに楽しいです。
アラセブの手習いとして、末長く練習していこうと思います。

リサイタル無事終了♪♪

2025年04月12日 | 音楽とわたし
親愛なるサラのソロリサイタルが無事に終わりました。
彼女のパートナーとして演奏し始めてからもう何年経ったのか、多分少なくとも15年以上だと思うのですが、彼女は初めて会ったその時から、ずっと素晴らしいバイオリニストです。
そんな彼女のリサイタルのお手伝いができたことはとても光栄なことでした。

昨日は自作曲の『OKINAWA』と、詩的で情緒的な、バイオリニストにとってはかなりの難曲である『The Lark Ascending』をサラと演奏しました。
『OKINAWA』の最初の和音を弾いた瞬間に、なぜだか右足のふくらはぎがぴーんと攣って、え?え?え?と初っ端からパニックに。
ペダルを踏むたびに痛みが走り、いや、これ、一旦音楽を止めさせてもらおうかどうしようかなどと考えたり、なんのこれしき、音楽に集中するんだまうみ!と励ましたり。
せっかく一音一音、時間をかけて音作りを頑張ってきたのだから、それを無駄にしてしまうのだけはやめようと思ったり。
そういう小さな葛藤は、多分ほんの一瞬のことなんですが、我ながらどうしていつも何かびっくりするようなことが起こるのだろうと思います。

そんなこんなの演奏でしたが、聴きにきてくれた三郎さんが、とても素敵なコメントをFacebookに書いてくれたので、それをここで紹介させてもらいます。

まうみさんのピアノ演奏を聴きに行った。
彼女に会ったのは、総領事館前のスタンディングや、玉城デニー知事が来た時の歓迎集会だったので、ピアニストとしてよりも、アクティビストとして知り合った気がする。
会場は7番街28丁目のオペラ・アメリカズ。
彼女の作曲した「OKINAWA」という曲は、何年か前、コロナの前にカーネギーホールで初演されたのだったが、ぼくは用事が重なって聴けなかった。
だからとても楽しみにしていた。
彼女のブログには、「沖縄の不屈の歴史に思いを馳せながら書いた曲ですが、同時に沖縄への讃歌でもあります」とあった。
バイオリンが奏でるアジア的なメロディを支えるように、平和を求めてたたかう沖縄の人々の心情を、ピアノが波のように繰り返す。
ぼくが映画を作るなら、この曲を使いたいなと思った。

そしてもう一つ、サラがこんなメッセージを送ってくれました。

私の教師仲間の娘さんは、典型的なティーンエイジャーなんだけど、私のところに来て、あなたの曲でどれだけ感動したか、音楽から沖縄を想像できたかを話してくれたの。
そして家に帰ってピアノの練習をしたんだって。
あなたは彼女にインスピレーションを与えたのです!

平日の夜に、忙しい毎日の中、聴きに来てくれた人たちみんなに、心からありがとうを言いたいです。


さて、そんなリサイタル当日の朝、わたしは何をしていたか…。
寝室に置いてあるキンカンの水やりを怠っていたので、慌てて水をやり、何の気なしに実を触ってみたら、皮に張りがないことがわかりパニックに。
今回は実が熟すタイミングも実の大きさもまちまちだったので、先に熟してから時間が経っている実が、後続の実を待ちきれずに弱ってしまっていたのでした。

これはいかん!と、慌てて冷凍することにしました。

君たちも1日も早く熟しておくれ!

午後からは雨になると聞いていましたが、空はピーカンの青空です。
ずっと雨に濡れそぼっていたポンちゃんとソメイ姉妹の写真も撮っておかねば!





歩美ちゃんからお裾分けしてもらったあやめも、元気に伸び上がってきました。

さあ、今日もまた仕事仕事!

デモとスプリングコンサートとリサイタルと

2025年04月07日 | 音楽とわたし
昨日の5日は、『HANDS OFF!』デモが全米各地で行われました。
これまでずっと、こういう抗議行動には一切参加しなかった夫が、しとしとと冷たい雨が降る午後に、初めて出かけて行きました。
このデモは、トランプ政権の移民政策と、イーロン・マスクが率いる政府効率化部門が主導する連邦政府職員の大量解雇に反対するため、民主党の活動家たちが組織したもので、ここニュージャージーではコーリー・ブッカー議員が各会場を回って民衆を鼓舞しました。
彼は米連邦議会上院の民主党議員で、先日の1日に上院で、ドナルド・トランプ大統領に対する抗議を象徴するマラソン演説を、25時間4分もかけて行った人です。
丸一日以上にも及ぶこの演説中、彼はずっと立っていなければならず、トイレ休憩も許されていませんでした。
すごい人です。
トランプ政権については、考えていることが山ほどありますが、具体的に話せるほどにまとまっていません。
身近では、イーロン・マスクによる解雇のために職場を失ってレッスンに来られなくなった生徒が2名います。
そして今回のこのデモに、参加したくても万が一のことを考えると恐ろしいと言って、参加できない人を何人も知っています。
抗議デモの行進のそばを通りかかっただけの大学院生が巻き込まれ、警察に捕まりはしましたが何の嫌疑もないので当然釈放されたのに、なぜかその事実を理由に身柄を拘束され、国外退去を命じられました。
移民だったからです。
そういう、極めて個人的な小さな出来事や行動までが監視され、それを元に暴力的に国外退去を命じられたり職をもぎ取られたりする様を目の当たりにすると、人々はどんどん萎縮し、殻に閉じこもっていきます。
ブッカー氏はそういう一般市民が被っている恐怖政治について、丸一日をかけて演説したのでした。


さて、わたしはというと、木曜日の夜にリサイタルを控えていて、気分はもう舞台の上。
そして、夜にはマンハッタンで行われるACMAのスプリングコンサートを聴きに行く予定だったので、今回はデモには行きませんでした。

スプリングコンサートは、いつものこの素敵な教会で開催されました。


今回の演奏会では、初めて見たものがいろいろありました。
真ん中の奏者が吹いているのはアルトフルート、そして右側の奏者が吹いているのはバスフルートです。
厳かな、温かくて深い響きです。


そしてこの方は、アルトサックスとピアノのための曲を作曲し、それを自分一人で同時演奏しちゃってます😳。


この夜もとても寒くて、ブルブル震えながらマンハッタンの街を歩いていたのですが、頭上では深い霧が立ち込めていました。



さて、今度は自分の番です。
練習を重ねるごとに、あ、ここはこういうふうに弾いた方がいいのではないか、この音はこんな響きに変えてみようかと、アイディアが次から次へと浮かんできて、時間がいくらあっても足りません。
こんなことを言うと、ほんとに何を今更なのですが、わたしはこの歳になってやっと、自分が良かれと思って弾いていても、聴く人にとっては聞き心地の良いものではない音を見つける作業を、根気よく繰り返すようになりました。
そのためにはまず録音をしなければなりません。
自分が弾きたいように弾いていた部分を、一音一音磨きをかけたり空間に放ったりしていると、だんだんと歌になってきたような気がします。
歌っていたと思い込んでいたそれは自己満足の押し付けで、耳障りな音がたくさんありました。
今回の舞台で、この練習が十分に活かされるよう、あと3日、ラストスパートをかけたいと思います。


リサイタルまでの3日間、もちろん仕事も当たり前にあるわけで、なので夫は3日分の美味しいスープを作ってくれました。
わたしの大好物のフィッシュスープです。

夕食を食べる我々のすぐそばでは、海がお得意の休憩ポーズでジィッと見ています。
なんか目つきが怖いなあ…😅。


『OKINAWA(沖縄)』を再演します!

2025年03月26日 | 音楽とわたし
ホールはここ↓です。こぢんまりとした美しいホールです。


まだまだ先だと思っていましたが、気がつけばもうあと2週間ほどで本番を迎えます。
大勢の人たちの前で演奏するのは本当に久しぶりなので、25分弱の演奏時間中、集中力を維持できるのかどうか、ちょっぴり心配です。
これからの練習は、自分の演奏を録音して聴く、他の人の演奏を聴いてみる、そして弾いてまた録音する、の繰り返しになると思います。

今回のプログラムに自作曲の『OKINAWA』を入れてもらえたことがとても嬉しいです。
この曲を一体何年前に弾いたのか、それも覚えていないくらいでしたので、練習を再開した日にはあまりに弾けなくて我ながら驚くやら呆れるやら…どうなることかと思いましたが、音を付け加えたり、表現やアーティキュレーションをちょこちょこ変えたりしながら、練習を重ねてきました。
沖縄の不屈の歴史に思いを馳せながら書いた曲ですが、同時に沖縄への讃歌でもあります。
パートナーのバイオリニストのサラも、わたしに同感して演奏してくれるので、二人の思いが届くといいなあと思っています。

もう一つの曲は、甘美で清浄できらびやかな詩を元に作られた曲です。
ひばりが舞い上がっては降りてきて、そうかと思うと輪を描き、絶え間ないたくさんの繋がりを持つ銀の鎖のような音を地に落としてゆく。
そんなひばりの様子がバイオリンの見事なソロで描かれます。
この曲は個人的な感情を直接的に語ろうとしていません。
ひたすらに情景描写に徹し、その音の響きの中から聞こえてくる作者のつぶやきやため息を、演奏で表現できたらいいなあと思っています。

場所はマンハッタンのミッドタウン、7番アヴェニューと29丁目が交差する辺りにあります。
平日の夜ですが、1時間ばかりの演奏の後、ワインとチーズをいただきながらのレセプションも行います。
無料のコンサートなので、お気軽にお越しくださいね!

モヤモヤからワクワクへ

2025年03月10日 | 音楽とわたし
夫が家に居る間は、大っぴらにピアノを練習することができません。
このことはずっと長い間、わたしたち夫婦の間の問題になっていました。
夫はずっと、揉めるたびに、「電子ピアノを買ってそれで練習すればいいじゃないか」と言っていたのですが、わたしがどうしても納得できなかったのです。
やっとのやっと、60歳を過ぎて、弾き心地がとても良い上に相性の合うピアノを得ることができたのに、何が悲しくてそんな電子ピアノなんかで練習せなあかんのよと。
いえね、電子ピアノを貶しているのではないんです。
アコースティックピアノが一台も無くて、そういうものを置ける環境ではないなら、わたしは喜んで電子ピアノで練習すると思います。
けれどもうちにはベビーグランドピアノが2台あって、しかもそのうちの1台は超お気に入りのピアノなので、練習はそのピアノを使ってやりたいと思うし、夫と練習のタイミングのことで言い合いをしている時は気分がイライラしているので、ついつい電子ピアノ(なんか)で、と言いたくなってしまうわけです。
電子ピアノさん、そして電子ピアノユーザーさん、ごめんなさい!

でももう本当に疲れました。まさに不毛の言い争い、不毛の気遣い、不毛の苛立ちを、延々25年近く持ち続けてきた自分に、電子ピアノを買え!と命じました。
それでエイっとばかりに決心して購入したのが、DONNERという会社の電子ピアノなのでした。
実は、初心者のちびっ子の親御さんから、まだアコースティックピアノを買う決心がつかないから、電子ピアノを紹介して欲しいと頼まれることが時々あります。
彼らが希望する価格帯で、推薦するに相応しい楽器かどうか確かめるつもりで購入してみたのですが、先日の記事でお話ししたように、組み立て部品の破損や欠品があり、さらに鍵盤は恐ろしく重くて弾きにくい、これは失敗だと思いました。
けれどもまあ、とにかく組み立ててしまいたかったし、いつでも自分の思う時間に練習できるという環境にしたかったので、部品の交換と補充をして欲しいと、サービスセンターにメールしました。
すると、こんな返事が送られてきたのです。
「どちらも市販品だから、自分で買ってくるのが一番手っ取り早いと思いますよ」
え?と一瞬驚きましたが、まあ確かにそうかもしれないと思い、ホームセンターに行ってみました。
そこで30分以上、これか?あれか?と探し回った挙句、何一つ見つけられなかったことにがっかりして家に戻り、もう一度そのメールを読んで思ったのです。
なんでわたしが買いに行かなあかんねん?と。
そこでもう一度メールしました。早急に送ってくださいと。
すると、中国の工場から送るので、20日から1ヶ月ほどかかります、と言います。
いや、あんな小さなネジを数本(変形していたヒンジはペンチで直しました😅)送るのになんでそんな長い時間かかるわけ?まさか船便で送ろうとしてるの?当然航空便っしょ?
では、できるだけ迅速に対応できるよう努めます。

そしてまた3日が経ち、1週間が経ち、この時点ですでに合計3週間が過ぎていて、けれども事態は全く進まず、また同じようなメールが送られてきたので、ああ、こんなサービスをする会社の楽器を所有していたら碌なことはないと思い、返品することにしました。
また一からやり直しです。
気を取り直してパソコンの前に座ったわたしに夫が、「今度は少しぐらい高くても、ちゃんとしたものを買った方がいいんじゃないか」と言ってくれて、ハッと気がつきました。
今わたしが買おうとしているのは、もしかしたらグランドピアノよりも長い時間練習することになるピアノなのだと。
だから、いい加減なものではなくて、そこそこ弾き心地が良いものでなくてはならないのだと。
そこでメーカーをヤマハに絞り、クラビノーバの後に出たシリーズの中から、鍵盤の感触とアクションができるだけアコースティックに近いものを選びました。


今日は初めて本格的に長い時間をかけて練習をしてみました。
置いた場所が自分の寝室なので、練習に疲れたらベッドに直行です😅。
この部屋はこの家の中で一番日当たりが良く、夏はめちゃくちゃ暑くなるので、暑さ対策を考えねばなりません。
それでもこんなふうに、好きな時に好きなだけ練習ができるのは、やっぱり気分がスッキリします。
もっと早くこうするべきだったのでしょうね。
意固地になるところがなかなか直りません。

唯一無二の歌姫、谷本綾香の臨月コンサート

2025年02月22日 | 音楽とわたし
谷本綾香、大好きな心友の一人娘、メゾソプラノのオペラ歌手です。
ちっちゃい時からの彼女を知ってます。
まさかこんな、稀有で、唯一無二で、艶があって、温かみがあって、歌い始めた途端に会場全体を超心地よい空間にしてしまえる、とんでもなく素晴らしい歌姫さんになるとは、全く想像していませんでした。
以下、引用:
京都 インターナショナルスクール卒業
大阪 インターナショナルスクール卒業
英国王立音楽大学 (Royal College of Music) 学士課程修了
英国王立音楽大学 (Royal College of Music) 大学院修了
英国王立スコットランド音楽大学オペラ研修所 (Royal Conservatoire of Scotland)大学院修了
イギリス在住15年

京都インターナショナルスクールを卒業。
国際バカロレア資格、及び同バイリンガル資格を取得し、大阪インターナショナルスクールを卒業。
同年に奨学金を受け、英国王立音楽大学声楽専攻に入学。
2009年、英国王立音楽大学学士課程を修了。
2011年、英国王立音楽大学大学院を修了。
2012年、英国王立スコットランド音楽院オペラ研修所で、奨学生として、王立スコットランドオペラハウスの指揮者やコーチの下で2年間の研修を受け、2014年にオペラ研修所を修了。
 
オペラのレパートリーは20役を超え、オペラ研修所で在学中に、ロンドンのピーコックシアターにて『British Youth Opera』のメインキャストとしてデビュー。
『Grimeborn Opera Festival』や『Bury Court Opera』にて、「蝶々夫人」のスズキ役で出演し、『OperaHolland Park』の専属歌手として、毎年約20公演に出演。
イギリスの『Opera Holland Park』、『English National Opera』や、フランスの『Opéra de Baugé』の専属オペラ歌手として活躍する。
日本では、大阪フィルハーモニー交響楽団や大阪交響楽団のソリストとして共演している。
 
第三回『International Ernest Bloch Competition』での優勝を始め、第19回『日本クラシック音楽コンクール全国大会一般の部』第三位 (一位、二位該当者なし) など、数々の賞を受賞。
現在は京都を拠点に、一般社団法人英国音楽協会の代表理事を務め、日本でのイギリス音楽の普及と音楽家の育成にも取り組んでいる。

歌うことを通じて精神と身体のバランスにも興味を持ち、ロンドンにて「パーソナルトレーナー・ジムインストラクター・栄養学 Level 3」の資格を取得。
また、トレーニング方法の一つであるアニマルフローのインストラクターの資格も取得。
オペラ歌手やパフォーマーのためのパーソナルトレーナーとしても活動中。

とまあ、素晴らしい経歴の持ち主でもある綾香の、久々のクラシックコンサートが、3月9日の日曜日、京都の府立府民ホール「アルティ」で開かれます。
共演者さんは以下の通り。

チケットは、プログラムの下にあるQRコードから購入することができます。

で、あとひとつ、どうしてもお伝えしておかなければならないことがあります。
綾香は第二子の臨月を迎えた妊婦さんで、大きなお腹を抱えながら毎日練習に励み、このコンサートに臨みます。
舞台の上で産まれちゃったりして😅、などとジョークのつもりで言うのも憚れるほどの見事なお腹の中には、彼女の歌を一等席で聴いている赤ちゃんがいるのです。



綾香の歌声は、一度聴いたら忘れられない、深海のように深く、おくるみのように温かく、漆硝子のように艶やかで美しい。
いっぺんに推しになることでしょう。
演奏会、ぜひお近くの方、ちょっと遠くても電車や車で行こうと思えば行ける方は、是非是非聴きに行っていただきたいと思います。
なんともすてきで気持ちのいい時間を過ごせることをお約束します。
そして、産まれやしないかという、クラシックコンサートでは滅多に味わえないドキドキも😅。

ジャズ・フェス・ジャンボリー2024

2024年10月07日 | 音楽とわたし
毎年行われるジャズフェスティバル、今年で15回目となりました。


モントクレアは、わたしたち家族が渡米して初めて住んだ小さな町です。
この町を選んだのは、学校教育と芸術に力を入れていて、外国から移住してきた子どもたちのための英語のクラスも充実していたからだったのですが、なにしろ税金がとても高くて、持ち家など夢のまた夢。
なので借家かアパートメントで暮らす以外の選択肢はなく、息子たちが学校教育を終了してすぐに、隣町に引っ越してしまいました。
けれども車で5分も走れば行ける距離なので、今も美味しいものを食べに行ったり、音楽や舞台を楽しみに行くことが多い町です。

わたしたちが引っ越した年から始まったこのジャズフェスティバルは、この町に住む天才ジャズベーシスト(グラミー賞を8回獲得している)、クリスチャン・マクブライドが中心になって行われるようになりました。
毎回、ジャズ界の重鎮がゲストとして出演するジャンボリー、メインステージに向かってゆるい下り坂になっている広い大通りに、思い存分に音楽を楽しもうと大勢の人たちが集まってきます。
この日はだから町が音楽と一体化するのです。
舞台で演奏するのは、有名なプロミュージシャンだけではありません。
マクブライド氏が設立した子どものためのジャズハウスで研鑽を積んだ子どもたちも出演します。
子どもたちはその日だけではなく、前夜祭的に行われる行事で、ジャズだけに限らず音楽界の重鎮と共演するという、素晴らしい経験もできます。
今年のゲストはスティング。羨ましい限りです。


今年のプログラムはこれ。


これはジャズ・フェスティバルのマップです。


お昼の12時から夜の10時まで、ダウンタウンで音楽を楽しみます。

夫とわたしはその日、朝からとても体がだるくて、フェスティバルに行こうかどうか迷っていましたが、日が暮れ始めると我慢ができなくなって出かけることにしました。
わたしたちがメイン会場に到着したのは18時前、聴きたかったマクブライド氏の演奏は終わっていましたが、最後の出演者リサ・フィッシャーの歌声が響きわたると、気分は瞬く間に上昇し、空にはお月さまと撮影用のドローンが浮かんでいました。

リサ・フィッシャーは、バックコーラス・ボーカリストとしてスティング、クリス・ボッティ、チャカ・カーン、ティナ・ターナー等の一流アーティストと共演し、リリースしたソロアルバムやシングルレコードでグラミー賞を受賞した人です。1987年、ミック・ジャガーのソロ・コンサートツアーに参加し、その後、ローリング・ストーンズのツアーに1989年から現在に至るまで参加し続けていると後で知って、ああ、だから彼らの曲を彼女風にアレンジした歌を何曲も歌っていたのだなと、夫と二人で納得したのですが、そのアレンジがまたとても個性的で、よくよく注意して聴いていないとわからないぐらいなのです。



フィッシャー氏の舞台が終わり、フェスティバルの最後はDJによるアップビートな音楽が始まると、人々は立ち上がり、思い思いのダンスを楽しみます。


この男の子は可愛いドラマー、肩車してくれるお父さんの頭をノリノリで叩いています。

音楽が体や心にしみこんで、深いところから揺さぶってくる。そんな経験は何度あってもいいと思います。
身の回りにいつも音楽が寄り添っている人生、なんていうと難しく考える人もいるかもしれません。
でもちっとも難しくはありません。
大人も子どもも、そしてもしかしたら動物たちも、音を楽しむ機会はどこにでもあるからです。
わたしはジャズを3年勉強して、自分には無理な分野だと断念した苦い経験がありますが、ジャズを聴くのはとても好きです。
また来年のジャンボリーを楽しみに、来月に控えている生徒たちの発表会の準備に勤しみたいと思います。

メイソン・ジェニングスを聴きに行ってきた🎵

2024年06月30日 | 音楽とわたし
「誰かだけ特別なんて信じないな。僕らは大きな仲間の部分部分なんだ」
Mason Jennings(メイソン・ジェニングス)のバイオグラフィーより

彼のコンサートを聴きに、友人夫婦と一緒に、うちから車で1時間半ほどかかるフィラデルフィア近郊の町まで行ってきた。
彼のことはずっと前に夫が教えてくれた。
なんとも不思議な歌い方をする人で、最初はその微妙なズレが気にかかって仕方がなかったのだけど、一旦慣れてしまうと今度は中毒性のある不思議な魅力に変化して、彼がカルト的な人気を開拓しているという意味がうっすらとわかる。
メイソンはホノルル生まれ。2歳のときにピッツバーグに移住して、16歳で高校をドロップ・アウトした。
彼の歌を聴いているとボブ・ディランが思い浮かんでくる。

例えばこんな感じ。
Duluth

会場はとても古い劇場で、なぜか今回は最前列の、いわゆる”かぶりつき”のテーブル席を夫は予約していた。






かぶりつきなだけに、その一帯は猛烈なファンたちが陣取っていて、夫はともかくわたしは特に、部外者であることをひしひしと感じながらコンサートを聴いていた。
その列の人たち(特に女性)は、メイソンの曲の歌詞を全て、一言一句間違いなく覚えていて、コンサートの始めから終わりまでずっと、彼と一緒に歌っていた。

舞台の上には一本のギター、そしてハーモニカ。

彼はギターとピアノを演奏しながら、自作の曲を次々に歌っていく。




彼の歌の和声はとてもユニークで、おいおいそこに行くか!とつっこみたくなることがよくあるのだけど、なぜか納得してしまう不思議な力がある。
客席が3分の1ぐらいしか埋まらなくて、なんか申し訳がない気持ちになったのだけど、彼もファンたちも楽しそうに声を掛け合っていて、なんともいい気分のコンサートだった。
それにしても、あれだけの数の曲の歌詞をきちっと覚えて歌えるってすごいなあ。
って、感心するとこそこ?😅

クラシックとジャズと

2024年04月02日 | 音楽とわたし
先々週の土曜日は、今年は参加しなかったACMAのSpring Concertが行われた。
よくよく考えた末の不参加だったのだけど、やはり会場に行って聞いていると心がうずうずしてきて未練たらしいったらない。
でも無理だったのだ、本当に。
曲を深く掘り下げて学び、練習に練習を重ねて伝える術を磨き、レッスンにも通い、演奏者からの要望や質問に答え、楽譜を書き直したり書き加えたり、そういうことに必要なエネルギーが無かった。
そもそも、毎週日曜日の夕方の、3時間のリハーサルに通うことからしてわたしには大変過ぎた。
生徒の数が26人だった頃と40人以上に増えた今では、毎日の疲れ具合が違う。
そしてわたしはもう若くない。
気持ちと行動が伴わなくなるのは致し方のないことなのだ。
今回のピアノは前回のとは違ったのだろうか、それとも調律がしっかり為されていたのだろうか、音がとても良かった。



またいつか、演奏に参加できる体力と気力が戻ってくるかなあ…。


そして先週の土曜日はこれ、上原ひろみさんのブルーノートライブ🎵

実は夫もわたしもここは初めて💙

マンハッタンはすっかり春になっていた。

グリニッジビレッジは絶対に迷う。

中に入るとブルー一色。
噂には聞いてたけど、マジでぎゅうぎゅう。


1時間前から並んでいたので、まずまずの席に座ることができた。
とっぱちからぶっ飛ばすひろみさん。





いやはや、めちゃくちゃ楽しそうでパワフルなのである。
そして、高速で弾くスケールやトリルの音色が、うっとりするほど軽やかで美しい。

やっと一息つく時間があって、それでまた演奏に戻ろうかという時に、どこかから「コケコッコ〜🐓!」の声が。
え?なに?どこ?

携帯の持ち主さんはご高齢の男性で、焦り過ぎたからか止めることができないようで、さすがにひろみさんもこの表情😅

この後、コケコッコ〜をモチーフにちょいと即興してくれた😃

バンドのメンバーは誰も彼もが強者揃いで、ひろみさんならではのパワフルでユニークな快速パッセージを難なく演奏していくのだけど、聴いている側の我々にもその勢いについていくエネルギーが必要になる。




なんか彼女の弾くバッハが聞いてみたい、なんて思った夜なのであった。

ようやく肩の荷が下りました。

2023年11月22日 | 音楽とわたし
先日の生徒の発表会に出られなかった3人の生徒のためのサロンコンサートが昨日終わった。


3人とも週末は都合が悪かったので、3人のうちの2人がレッスンを受ける月曜日の午後に行うことにした。
3人とも今回が初めての発表会だった。
だからよけいに、広い舞台に立たせてあげられなかったことを申し訳なく思った。


先日同様、ソロとデュエットに分けて演奏してもらった。
3人と彼らの家族と輪になって、ピアノのことについて話をした。
練習のことをどう思う?と聞いてみたら、Aちゃんが「わたし練習大好き!」と言う。
うわぁ〜びっくりした。
このAちゃん、実はほんの3ヶ月前まで、うちに来るなり練習をしてこなかった(彼女曰くできなかった)言い訳話を始める子だった。
幼い弟が鍵盤を手のひらでバンバン叩く、おかあさんが仕事でいない、ピアノの部屋が寒すぎる(暑すぎる)、学校の宿題が多すぎる、友だちが遊びに来て時間がない…etc。
彼女は子守りさんがうちまで送り迎えをしてくれているのだけど、その子守りさんはうちに着くや否やスマホいじりに勤しむので、家での様子を聞くこともできない。
同じ曲を同じところで間違えて、前に進めなくなって止まる。音符の名前をどんな方法で教えても覚えようとしない。
う〜ん、本人にやる気が無いのなら、無理に通わせるのはいかがなものかと、親御さんに相談して本人と話し合ってもらったりしたが、本人がやめたくないと言うので仕方がない。
まあまた突然練習に目覚める時が来るかもしれないから待ちましょうと、家族や子守さんに伝えたのが3ヶ月前のこと。
それがどうしたことか、突然ニコニコしながら部屋に入って来て、言い訳話も無しに弾き始めようとするではないか。
わたしはびっくりして、思わず「ちょっとAちゃん、今日は話はないの?」などと聞いてしまうところだった。
彼女はスルスルと、それも楽しそうに弾き始めて、そのまま曲を丸々弾き終えてしまった。
そんなことはそれまで一度も無かったので、わたしは仰天して、「いやあ、いいねいいね〜」と喜んでハイファイブした。
その時の、彼女のちっちゃな手の平とわたしの手の平が作ったパチンという音が、まだ耳の奥に残っている。
それからというもの、彼女は毎週きちんと練習をして、やって来るようになった。
そうか、彼女は今や、練習大好きっ子になっていたのか。
おかあさんが、「この子はなんでも始まりが遅くて、だから誤解されて残念な思いをしたことが何回もあったんです。今回は根気強く待ってもらえたのでよかったです」と話してくれた。

Hさんは20歳で、エジプトからの移民で、大家族の4人兄弟の一番上で、9歳の弟の習い事の送り迎えをしたり、資格を取るために大学の授業を受けながら会社勤めもしているので、それこそ練習するのは本当に大変なのだけど、大学のピアノを借りたりして一所懸命に練習している。
彼女が頑張り屋さんだということは知っていたけど、ここまで忙しく、また大変な思いをして練習をしているとは知らなかった。

10歳のLちゃんは、ものすごく恥ずかしがり屋だけど体操クラブに通っていて、負けん気が強いらしい。
口数が少なく、褒めると照れてうつむいてしまうような子だけど、同じ失敗をしていることを指摘したりすると、涙をポトリと落とすこともある。
悔しかったんだな。
彼女もスロースターターで、頭や体が納得するまでに時間がかかる。
そんなこんなの、普段のレッスン時にはなかなか聞くことができない話をたくさん聞かせてもらった。

わたしからは、先日の発表会同様、ピアノの練習のことについて話をした。
ピアノはレッスンが始まると同時に宿題が出される。
当然、その宿題の練習がもれなく付いてくるので、このことをまず、習い始める前に、本人はもちろん家族も理解していないと続かない。
練習は面倒だし面白くないと思っている人が多いかもしれないが、練習することが当たり前になるとどんどん面白くなってくる。
ほんの少しだけど、何かが良くなってきている感じがするからだ。
あまりにわずかなので気が付かないこともある。
1日に1センチしか進めない、仲間内でも一際歩みが遅いカタツムリ。
1日の終わりに見る景色は朝とさほど変わらなくて、自分が進んだかどうかも怪しいけれど、それでもぼちぼち進み続けていって1ヶ月も経つと30センチも進んでいる。
カタツムリからしたら、30センチも進んだ周りの景色は別世界だ。
練習中には思い通りにいかなくてイライラしたり、進んだと思ったら間違った道だったりしたり、一歩進んで二歩下がるみたいなこともあって落ち込んだり、それはもうバラエティに富んだ毎日が続くわけだけども、それでもなぜか心の底ではワクワクしている。
このワクワクを毎日味わえるようになるとクセになる。
そうなったらもう練習は特別なものではなくて日常になる。
小さな子どもから大きな大人まで、他の誰でもない、自分がやったことで自分を幸せにできるってすごい。
そうやって練習することが当たり前になると、人生のいろんな場面で活きてくる。
なにしろ根気が良くなるし、今は見えなくてもゴールは必ずやってくると信じることができる。

まあ、ピアノに限らず楽器を演奏できるようになるっていいなと思う。
わたしはいろんな理由でピアノが弾けなくなった時期があるのだけど、代わりにクラリネットやマリンバやティンパニーやドラムを練習して、それなりに演奏できるようになった。
それぞれの楽器に独特の面白さがあり、難しさがあり、どれもが音楽に関わる幸せを感じさせてくれる。

枯葉にも音楽がつながっている。

この季節の風物詩、枯れ葉掃除屋さんがあちらこちらに出没する。

近所の大イチョウの木。



すっかり葉が落ちた木と、これからが紅葉本番の木と。