まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

囚われのイケメン!

2017-01-20 | フランス、ベルギー映画
 「運命の門」
 1971年のカンボジア。共産主義の武装勢力クメール・ルージュが台頭し、革命の名のもとに粛清を断行していた。民俗学者であるフランス人のビゾは、クメール・ルージュにCIAと疑われ囚われの身となるが…
 行ってみたい国のひとつであるカンボジアも、他のアジア諸国同様に暗黒の時代がありました。悪名高いポル・ポト派による独裁政権、そして大虐殺です。ニュース報道などで見聞きしたその残虐非道さには、暗澹とせずにはいられません。この映画でも、こんなことが本当に起こったのか、と俄かには信じられない、信じたくない理不尽で悲惨な悪夢が繰り広げられています。そんなに昔のことではない、そしてアフリカや中東では今でも同じような地獄が続いている、という事実にも愕然となってしまいます。こういう映画を観ると、現代の日本に生まれて本当に幸運だった、小さなことで不満ばかり言ってはバチが当たる、と安堵と罪悪感ないまぜな思いにかられてしまいます。

 1時間30分ぐらいのコンパクトな長さの映画で、サクサクと話が進んで終わるのがありがたかったけど、そのぶん重厚さやサスペンスが薄かったきらいも。ビゾが恐れてたほど非道い目に遭わず、思ってたより早く解放されたのも、ちょっと肩すかしでした。クメール・ルージュの蛮行は、あまり詳細には描いてなかったのは、そういうのが苦手な私には救いになりました。当時の情勢に無知な人が観たら、そんなに非道いことしてないじゃん?と思うかも。ビゾ視点の話なので、あまり深いところまでクメール・ルージュの実像が描かれていなかったのは、まあ構成上しごく当然かもしれません。カンボジアにいたフランス人たちの混乱、そして国外退去は、なかなかの臨場感がありました。タイとの国境で、クメール人であるビゾの妻とその友人が無事に検問パスしできるか、のシーンは結構ハラハラ。え!?な展開にもなって、あそこが映画のまさにハイライトでした。でも同じ国外脱出なら、同じレジス・ヴァルニエ監督の「イースト/ウェスト」のほうが、緊迫感ありかも。
 日本のフランス映画ファンの間でも人気のボーギャルソン、ラファエル・ペルソナがビゾ役を熱演しています。 

 彼ってまさに、美男でもなく男前でもなく、イケメンという形容詞が相応しい男です。おっさんでも若造でもない、大人のイケメン。フランス男にしてはスカしてなくて、優しそうなところも好きです。クメール・ルージュに捕まってから解放されるまでの彼は、ほとんど原始人。ずっと半裸で鎖に繋がれてます。まるでペットな状態でもあって、ファンはドSな気分で萌え~。飼い犬扱いされ小汚くなっても、まったくイケメン崩れしないラファエル。硬派な社会派映画のラファエルも素敵ですが、やっぱ彼みたいななイケメンは恋愛映画のほうが似合います。
 ビゾを拘束する部隊長ドッジが、謎キャラで興味深い存在でした。ナンダカンダでビゾを拷問や処刑から救い、不思議な友愛を示すドッジの真意を、いろいろ憶測してしまいました。ビゾがイケメンではなくブサイクだったら、たぶんドッジも知らん顔だったのではどうせならドッジもイケメンなカンボジア俳優にしてほしかったかも。フランス大使役で、ダルデンヌ監督作品の常連であるオリヴィエ・グルメも出演してます。
 無理やりでもよかったので、もうちょっとカンボジアの風景や遺跡など、旅心をそそるシーンがほしかったです。

 ↑最新作の“Dans les forêts de Sibérie ”では、極寒のシベリアでイケメンしてるラファエルです
コメント (2)
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