「わが命つきるとも」
16世紀のイギリス。国王ヘンリー8世は若い愛人アン・ブーリンと結婚するため、王妃との離婚を強行しようとしていた。王の信寵厚いトマス・モアは、離婚への賛同を拒むが…
アカデミー賞で作品賞など6部門で受賞した名作。
イギリス王室には、とても興味があります。といっても、今のロイヤルファミリーではなく、権力闘争に明け暮れていた頃の、激情的・激動的な王室ドラマに、です。王位や権力をめぐっての陰謀劇、悲劇は、日本をはじめ多くの国で起きていますが、中でも英国王室は最も有名でドラマティックなのではないでしょうか。とにかくイギリス王宮は、血みどろすぎて怖い&面白い。権力者の浮き沈み、盛者必衰が目まぐるしく、ついこないだまで華やかにこの世の春を驕っていたかと思えば、あれよあれよと凋落し罪人に落とされ、問答無用に断頭台送り。そんな血祭り英国王室の歴史の中でも、この映画のヘンリー8世の治世ほど、ブラッディな時代はないのではないでしょうか。ゆえにいろんなドラマがあって、小説や映画、ドラマになりやすいネタの宝庫。誰でも主人公になれるキャラクターがひしめいているのです。
TVドラマ「THE TUDORS 背徳の王冠」でも登場した、ヘンリー8世に屈することなく己の信念を貫いたトマス・モアが、この映画の主人公です。このトマス・モアさん、今の時代の感覚からすると、信じられないほどの信念の強さ、誇り高さです。逆らう者はみんな容赦なく殺処分する魔王ヘンリー8世に、王宮の誰もが戦々恐々、保身と出世のために媚びへつらってるのに、トマス・モアだけは王のワガママや横暴を受け入れず、自分の信念に背くぐらいなら死んだほうがまし!と、進んで自滅の道を選ぶのです。その姿、生き様は、高潔で崇高だと思いますが…トマス・モアみたいな人が職場や家族にいたらイヤだな~とも思ってしまいます。
世の中、生きるため、社会生活を円滑に営むためには、汚いことや誤ったことに手を染めたり見て見ぬフリしたりは不可避で、打算や妥協も必要です。でも、そんな風に生きることを、トマス・モアは全否定するんです。あーだこーだと他人のことを非難したり糾弾したりするのではなく、静かに自分自身の行いで周囲の俗人たちに罪悪感や劣等感を抱かせるんです。そんな人、そばにいたら色々やりにくいでしょうね~。厳しい清廉さゆえに、王や貴族、召使たちから尊敬されながらも煙たがられ、憎まれ疎まれてしまうトマス・モア。まさに水清ければ魚住めず。家族の安全や幸せよりも、自分の信念を大事にする男って、どうなんでしょう。他人ならカッコいいけど、夫や父親だったら、おいおい~カンベンしてよ~ですわ。あの時代ではなく、いま彼みたいな政治家がいたらと思わずにはいられません。日本を悪くしている今の老害政治家に、ぜひ観て欲しい映画です。
TVドラマ「THE TUDORS」のトマス・モアは、高潔だけど宗教き○がいなヤバい人でしたが(演じるジェレミー・ノーザムは男前でした♪)、この映画のトマス・モアは常に悠然としていて、苦境に陥っても冷静沈着さと知的なユーモアを忘れない人間味のある人物って感じです。トマス・モアを名演し、アカデミー賞主演男優賞を受賞した英国の名優ポール・スコフィールドの、威風堂々としつつ颯爽と理知的な風情がカッコいいです。
トマス・モアの妻アリス役は、「オリエント急行殺人事件」のドラゴミロフ侯爵夫人役が強烈だったウェンディ・ヒラー。慎ましく献身的で耐える美しい妻、なんてありきたりなキャラではなく、非美人でズケズケと皮肉をかましまくる、でも情味のある奥さんを、小気味よく演じています。トマス・モア夫妻の夫婦愛が、ベタベタしいお涙ちょうだいじゃなかったのが良かったです。
ヘンリー8世役のロバート・ショウは、見た目も演技も吉田鋼太郎!豪快で風格があって、「THE TUDORS」のヘンリー8世ことジョナサン・リース・マイアーズが小僧っこに思えてしまいます。自分に逆らうトマス・モアが憎い!けど、尊敬する彼に理解してほしい、認めてほしい、という本音が切なかった。アン・ブーリンとの結婚お披露目パーティで、トマス・モアが来てくれた!と大喜び、でも人違いだったと知ってガッカリ…のシーンが、何だか悲しかったです。それにしてもヘンリー8世、非道すぎる困ったちゃん男。彼のせいで周囲は屍の山!
トマス・モアが小舟に揺られて自邸と王宮を往復するシーンとか、英国の美しい風景も印象的です。「地上より永遠に」や「尼僧物語」など名作を撮った名匠フレッド・ジンネマン監督作。今の映画にはない気品ある骨太さが秀逸です。
16世紀のイギリス。国王ヘンリー8世は若い愛人アン・ブーリンと結婚するため、王妃との離婚を強行しようとしていた。王の信寵厚いトマス・モアは、離婚への賛同を拒むが…
アカデミー賞で作品賞など6部門で受賞した名作。
イギリス王室には、とても興味があります。といっても、今のロイヤルファミリーではなく、権力闘争に明け暮れていた頃の、激情的・激動的な王室ドラマに、です。王位や権力をめぐっての陰謀劇、悲劇は、日本をはじめ多くの国で起きていますが、中でも英国王室は最も有名でドラマティックなのではないでしょうか。とにかくイギリス王宮は、血みどろすぎて怖い&面白い。権力者の浮き沈み、盛者必衰が目まぐるしく、ついこないだまで華やかにこの世の春を驕っていたかと思えば、あれよあれよと凋落し罪人に落とされ、問答無用に断頭台送り。そんな血祭り英国王室の歴史の中でも、この映画のヘンリー8世の治世ほど、ブラッディな時代はないのではないでしょうか。ゆえにいろんなドラマがあって、小説や映画、ドラマになりやすいネタの宝庫。誰でも主人公になれるキャラクターがひしめいているのです。
TVドラマ「THE TUDORS 背徳の王冠」でも登場した、ヘンリー8世に屈することなく己の信念を貫いたトマス・モアが、この映画の主人公です。このトマス・モアさん、今の時代の感覚からすると、信じられないほどの信念の強さ、誇り高さです。逆らう者はみんな容赦なく殺処分する魔王ヘンリー8世に、王宮の誰もが戦々恐々、保身と出世のために媚びへつらってるのに、トマス・モアだけは王のワガママや横暴を受け入れず、自分の信念に背くぐらいなら死んだほうがまし!と、進んで自滅の道を選ぶのです。その姿、生き様は、高潔で崇高だと思いますが…トマス・モアみたいな人が職場や家族にいたらイヤだな~とも思ってしまいます。
世の中、生きるため、社会生活を円滑に営むためには、汚いことや誤ったことに手を染めたり見て見ぬフリしたりは不可避で、打算や妥協も必要です。でも、そんな風に生きることを、トマス・モアは全否定するんです。あーだこーだと他人のことを非難したり糾弾したりするのではなく、静かに自分自身の行いで周囲の俗人たちに罪悪感や劣等感を抱かせるんです。そんな人、そばにいたら色々やりにくいでしょうね~。厳しい清廉さゆえに、王や貴族、召使たちから尊敬されながらも煙たがられ、憎まれ疎まれてしまうトマス・モア。まさに水清ければ魚住めず。家族の安全や幸せよりも、自分の信念を大事にする男って、どうなんでしょう。他人ならカッコいいけど、夫や父親だったら、おいおい~カンベンしてよ~ですわ。あの時代ではなく、いま彼みたいな政治家がいたらと思わずにはいられません。日本を悪くしている今の老害政治家に、ぜひ観て欲しい映画です。
TVドラマ「THE TUDORS」のトマス・モアは、高潔だけど宗教き○がいなヤバい人でしたが(演じるジェレミー・ノーザムは男前でした♪)、この映画のトマス・モアは常に悠然としていて、苦境に陥っても冷静沈着さと知的なユーモアを忘れない人間味のある人物って感じです。トマス・モアを名演し、アカデミー賞主演男優賞を受賞した英国の名優ポール・スコフィールドの、威風堂々としつつ颯爽と理知的な風情がカッコいいです。
トマス・モアの妻アリス役は、「オリエント急行殺人事件」のドラゴミロフ侯爵夫人役が強烈だったウェンディ・ヒラー。慎ましく献身的で耐える美しい妻、なんてありきたりなキャラではなく、非美人でズケズケと皮肉をかましまくる、でも情味のある奥さんを、小気味よく演じています。トマス・モア夫妻の夫婦愛が、ベタベタしいお涙ちょうだいじゃなかったのが良かったです。
ヘンリー8世役のロバート・ショウは、見た目も演技も吉田鋼太郎!豪快で風格があって、「THE TUDORS」のヘンリー8世ことジョナサン・リース・マイアーズが小僧っこに思えてしまいます。自分に逆らうトマス・モアが憎い!けど、尊敬する彼に理解してほしい、認めてほしい、という本音が切なかった。アン・ブーリンとの結婚お披露目パーティで、トマス・モアが来てくれた!と大喜び、でも人違いだったと知ってガッカリ…のシーンが、何だか悲しかったです。それにしてもヘンリー8世、非道すぎる困ったちゃん男。彼のせいで周囲は屍の山!
トマス・モアが小舟に揺られて自邸と王宮を往復するシーンとか、英国の美しい風景も印象的です。「地上より永遠に」や「尼僧物語」など名作を撮った名匠フレッド・ジンネマン監督作。今の映画にはない気品ある骨太さが秀逸です。