まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

恋するテロリスト

2015-07-30 | イギリス、アイルランド映画
 お松の独りアイルランド映画祭④
 「クライング・ゲーム」
 IRAのメンバーであるファーガスは、仲間とともに英国軍人のジョディを拉致監禁する。ファーガスとジョディとの間には友情が芽生えるが、ジョディは逃亡中に命を落としてしまう。ファーガスは、生前のジョディに頼まれた通り、ロンドンにいるジョディの恋人ディルに会いに行くが…
 アイルランド出身のニール・ジョーダン監督作品。映画好きな腐女子に人気の名作。もちろん、私も大好きな作品です。ファーガスとディルの恋に、胸キュンキュンしまくりなんですよ~。お互いに秘密を隠した者同士、そっと探るように距離を縮めていく二人の、小粋でロマンティックで切ないやりとりが素敵。あんな大人の会話、私もしてみたいわ。男どもが私と交わしてくれる会話なんて、面白くもなんともない政治の話かエグい下ネタだしとにかく劇中の会話は、アカデミー賞脚本賞受賞も納得の秀逸さ。月9の恋仲とか観てると、そのクオリティの相違、落差に驚かされます。

 で、公開当時話題となった、ヒロインであるディルの正体。観てないかたのために、なるべくネタバレにならぬよう話を進めたいと思いますが…私は彼女が登場した瞬間に分かりましたが、多くの人はファーガス同様、彼女の秘密に衝撃を受けたのではないでしょうか。ファーガスがディルの実態を知った瞬間と、その直後のリアクションって、何とも言えない気まずい、イタいムード。悲痛なのか、はたまた滑稽な場面なのか。もしあんたがファーガスだったら、どうする?と、多くの男に問うてみたいシチュエーションです。
 ショックを受けながらも、ディルを嫌悪したり蔑んだりせず、不器用ながらも彼女を優しく気遣い、だんだん覚悟がすわって彼女を全身全霊で守るファーガスは、まさに騎士のようなカッコよさ!腕力だけが決して男の強さじゃないんですよね。あのファーガスの優しさは、強くないと備えることはできません。彼のディルへの愛は、もはや男女の恋愛を超えた、大きく深い人間愛と言えます。人質のジョディも、そしてディルも、心を許さずにはいられないファーガスの優しさ。なぜ彼みたいな男が、テロリストになんかなったんだろう。優しいといってもナヨナヨしい草食男ではなく、肝のすわった目つきや物腰、ディルにつきまとうストーカー男など瞬殺する腕っぷしの強さ。ディルじゃなくても惚れますわ。

 ショックと困惑で狼狽してるファーガスに、開き直って積極的に迫るディル、可愛い男前ガール!人一倍怒ったり泣いたりしながら、決して挫けない諦めないディルもファーガス同様、強い人間だな~と感嘆。マズいと当惑しつつ、どんどんディルに惹かれて愛を深めていくファーガスも可愛い。どんなカップルよりも幸せになってほしい、と応援したくなる二人なのです。切ないけど、ほのぼのと優しいラブストーリーの傑作。修羅場を乗り越え、ますます困難な状況になったけど、温かい優しい未来が待ってるようなラストも感動的です。
 ファーガスを好演したアイリッシュ俳優のスティーヴン・レアは、決して美男ではないけど、哀愁があって素朴な味わいに好感。ディル役のジェイ・デヴィッドソンは、まさに奇跡のキャスティングと言えるのではないでしょうか。彼女の存在が、この映画の成功のカギを握っていたと言っても過言ではありません。彼女が有名スターではなく、無名の素人だったというのも勝因でしょう。この映画の後は、フェイドアウトしてしまった彼女。まさに一世一代の一発屋です。
 主役の二人以上にインパクトがあったのは、ファーガスの仲間のひとりであるジュード役のミランダ・リチャードソン。

 冷酷でビッチな女テロリスト、怖くてカッコよかったです。女優なら、あーいう役一度はやってみたいと思うものではないでしょうか。ジョディ役は、「ラストキング・オブ・スコットランド」でオスカーを受賞したフォレスト・ウィッテカー。かつては黒い鶴瓶、と言われてた彼ですが、よく見ると全然似てません。フォレストのほうがはるかにイケメン。粗暴だけど人なつっこいジョディを、可愛く悲しく演じてました。笑顔が天使!彼がファーガスに語って聞かせるサソリとカエルの寓話が、なかなか奥深くて心に沁みます。
 ジョディを監禁するIRAのアジトがある森が、すごく美しかった。ジョディが走って逃げるシーンは、まるで絵画のような風景。アイルランドのシーンは前半だけでしたが、その自然の美しさはじゅうぶん伝わってきました。
 
コメント (10)
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