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まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

怪物を創った男たち!

2016-12-09 | イギリス、アイルランド映画
 ファンタビ日本公開記念!師走の英国男優祭②
 「ヴィクター・フランケンシュタイン」
 ヴィクトリア朝のロンドン。サーカスで迫害されていたせむしの青年は、その知性を見抜いた医学生のヴィクター・フランケンシュタインによって救い出される。イゴールという名を与えられた彼は、やがてヴィクターの恐るべき実験に加担することになり…
 ジェームズ・マカヴォイ&ダニエル・ラドクリフ、2大英国スターの競演!ということで注目された作品ですが、かなりトホホでした~「進撃の巨人」や「テラフォーマーズ」など、評判の悪い邦画と限りなく同じにおいがします。
 とにかく、内容もキャラも展開も、ついでにCGも、かなりクオリティが低いです。とにかく雑でテキトー。怪奇ものとしてもグロさが中途半端で怖くないし、SFものとしても支離滅裂でアホらしすぎる。わけのわからない仕組みの実験は、大がかりなわりには死体に電気ショックを当てるだけ、みたいな何じゃそりゃ!感であふれてます。死体を勝手に生き返らせて、言うこときかないから!とすぐにまた殺しちゃうなんて、まるで邪魔なペットを殺して捨てる無責任な飼い主みたいなヴィクター&イゴール。怪物が可哀想!

 奇抜で派手なシーンやアクションなど、「ヴァン・ヘルシング」みたいな路線を狙ったのでしょうか。荒唐無稽さが気にならないほど面白ければ問題ないのですが、あまりにも脚本に粗があると安っぽいB級映画になってしまいます。大昔の白黒映画みたいな、優雅でさえある怪奇ロマンやゴシックホラーで、フランケンシュタインとかドラキュラ映画を作ってほしいものです。
 怪物や実験シーンのみならず、町や城など風景もCG多用で、セットを作る手間も金もケチったな~と苦笑。CG過多は、やっぱ映画をチープにしますね。せっかくのロンドンを舞台にした時代劇なのに、それもあまり活かしてなかったのも残念。

 ヴィクターとイゴールの関係も、うまく描けばちょっとBLっぽくなったのにな~。研究に憑りつかれて女にはまったく興味がないヴィクターが、イゴールの恋人を邪魔者扱い、女を敵視してイゴールを束縛、独占しようとしたり、そんなヴィクターに戸惑いつつも誰よりも大事な人だからと女よりヴィクターを尊重するイゴール…妖しくなれる要素はあったのですが。BLにしろとは言わないけど、二人の友情にもうちょっと歪みとかダークな部分が欲しかったかも。ヴィクターがマッドサイエンティストになってしまった理由(お兄さんの死)も、もうちょっと掘り下げて描いてほしかった。
 でもまあ、ジェームズ・マカヴォイとダニエル・ラドクリフじゃあ、見た目だけでもBLは難しい。どっちもいい役者、しかも生粋のイギリス男なのに、キスしても全裸で抱き合っても、たぶんちっとも萌えないと思う妄想もそんなにしたくないし

 久々に見たマカぼん、彼ももうアラフォーだというのに、可愛いですね~。相変わらずの童顔。時代劇もお得意のマカぼん、まるでシェイクスピアの舞台劇、もしくはミュージカルのような演技が笑えました。イカレたハイテンションさは、あの傑作「フィルス」を彷彿とさせる怪演。最初から最後までヒャッホ~♪なノリ。あれがもし、マカぼんと何となくカブる堺雅人だったら、見ていて疲れる演技だったかもしれませんが、マカぼんだと何やってもひたすらオチャメで可愛い。

 イゴール役は、元ハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフ。もう働かなくてもいいほど稼いだはずなのに、そこに安住せずいろんな役や映画に挑戦し続けていて、いい俳優に成長しているのでは。何年か前のアカデミー賞授賞式のステージでは、歌って踊る芸達者なところも披露してましたよね~。いい役者にはなってるけど、残念ながらいい男にはなってません老けた子どもみたいな不気味さがあります。脱いだら生白い肌に胸毛ボーボーなのが、ちょっと…悲しそうで薄幸そうなので、コメディにはあまり向いてないかも。それと…マカぼんもかなりのチビ男ですが、ラドクリフくんはさらにチビ。身長はハリー・ポッターのまま?共演男優より背が高いマカぼんって、初めて見たわ。でも、最近は無駄にスタイルが良すぎる俳優を見慣れてるせいか、ちびっこ男二人の並びは新鮮でした。
 ヴィクターとイゴールを追跡する刑事さん、どっかで見たことある人だな~と思ったら、バッチさんのシャーロックで宿敵モリアーティを演じてるアンドリュー・スコットでした。彼もベン・ウィショーのように、ゲイであることをカミングアウトしてる俳優として有名ですね。

 ↑息子が生まれて幸せな結婚生活を送ってるとばかり思ってたのに、年上嫁と最近になって離婚したマカぼん。M・ナイト・シャラマン監督の新作“Split”で、少女たちを拉致監禁する多重人格の変質者を怪演してます。予告編を観ましたが、マカぼんキモい!けどやっぱ可愛い

星屑のロストボーイズ

2016-12-08 | イギリス、アイルランド映画
 ファンタビ日本公開記念!師走の英国男優祭①
 「僕が星になるまえに」
 ガンで余命いくばくもないジェームズの、死ぬ前にいちばん好きな場所であるウェールズのバラファンドル湾に行きたい、という願いをかなえるべく、親友のデイヴィー、マイルズ、ビルは、ジェームズを連れて旅に出る。ジェームズには胸に秘めた目的があったが…
 今をときめくベネディクト・カンバーバッチ主演作。当時30歳ぐらい?若い!肌もつるつるで、シワひとつありません。
 病魔におかされた役らしく、やつれて青白い顔色。とても病気には見えないんですけど?!な、役づくりできてな中途半端俳優とは、やっぱ違いますよね~。知性と教養がありすぎるせいで、ツンと傲慢な奴と誤解されるけど、根は善良で優しく、KYっぽい言動も実は天然なだけ、という役がハマるバッチさんですが、今回のジェームズもそれに近い感じ、だけどシャーロクとかに比べると、他人への気遣いや思いやりも持ち合わせてるバッチさんでした。

 親友3人と旅に出る 。みんなに守られ大切にされ、まるで女王さまのようでした。ジメジメメソメソした、あざといまでに泣かせようとする押し付けがましい感動系お涙ちょうだいではなく、病気や死までもジョークのネタにしてクスっと笑わせるなど、イギリスらしい皮肉なユーモアがいい感じでした。

 男4人の旅も楽しそうで、仲間に入りたいと思った。文字通り転げまわったり、バカやって大はしゃぎしたり、くだらないことでケンカしたり、すっかり少年に戻ってる4人が可愛かったです。屈託なく愉快に過ごしながらも、時おり襲ってくるジェームズの病苦や、浮きぼりになるそれぞれが抱えてる切実な問題など、束の間の現実逃避が夢のように儚く切なかったです。でも友情物語は、やっぱ女より男のほうが甘酸っぱく優しい。女はシビアで現実的だから、センチメンタルになれない。少女になんか戻れないもんね。この映画とは真逆な、恨みや憎しみをぶつけ合う怖い映画のほうが、女には合ってる

 若くして死ななければならないジェームズですが。可哀想だけど、羨ましくもありました。死の間際で、あんなに愛されていると実感できて。一度も愛されていると感じることができず長生きするほうが、むしろ不幸ですよね~…仕事も恋愛もうっちゃって、ジェームズに寄り添う3人の優しさ、自己犠牲が尊かったです。あんなに献身的に真剣に向き合えるなんて、もう友情じゃなくて愛情です。私には誰も向き合ってくれないし、私も向き合わない。こういう映画を観ると、自分の孤独を痛感しますわ~。
 この映画、ほぼ男4人だけしか出てこないのですが、否が応でも期待しちゃうBL気配も展開もなし。ジェームズがひょっとしたら…?なニュアンスは感じられたけど、かなり曖昧だったし。腐としては、もうちょっと分かりやすくはっきり、ばっちりガッツリなBLシーンが欲しかったかもBL色が希薄だったのが惜しい。

 ラストの4人の決断、行動は、賛否両論あるでしょう。悲しいけどホっとした、というのが私の感想ですが。あれ、後が大変だろな~。一生心から消えない、あれで本当に良かったんだろうか、と問い続ける苦悩になるだろうし。でもあれも、自分のことよりも相手を大事に想う愛がないとできない決断と行動でした。 
 荒涼とした海を臨む断崖など、イギリスといえばの風景も美しく撮られていました。イギリスの片田舎で暮らしてみたいな~…

 ↑カッコつけてる時よりも、おどけてる時のバッチさんのほうが好きです。「ドクター・ストレンジ」日本公開が待ち遠しい♪

N.Y.壊滅!魔法どうぶつ襲来

2016-12-02 | イギリス、アイルランド映画
 「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
 1926年のニューヨーク。イギリスから魔法動物学者のニュート・スキャマンダーがやって来る。あるアクシデントで、彼のスーツケースの中に潜んでいた魔法動物が逃亡してしまい…
 恥ずかしながら、ハリー・ポッターシリーズはTVで第1作目しか観てない私。無謀とは思いつつ、このシリーズ最新作にして番外編?を観に行ってしまいました~
 それにしても。最近は、スターウォーズとかXメンとか、いったいどこまで引っ張るの?なシリーズもの、多いですよね~。話の続きのみならず、サイドストーリーとか脇役を主役にしたりのスピンオフとかリブートとか、まさに搾れるだけ搾りとる、といった商魂逞しさ。ハリー・ポッターの話じたいは終わったらしいですが、金の成る木をそう簡単に伐採するはずもなく、大方の予想通り装いをあらたに復活。このハリポタ新編も、すでにシリーズ化が進行してるとか。原作者のローリング女史は、製作だけでなく脚本も担当してるんだとか。どんだけ稼ぐ気よ!
 先述した通り、ハリポタに関しては無知に等しい私。ハリーいつ出てくるの?と、映画の中盤ぐらいまで本気で思ってましたハリポタファンなら、シリーズとの繋がりとか重なる部分とかが楽しめたんだろうな~。まるで私、カープのことも野球のことも全然わかってないのに話題や人気に便乗する、にわかカープ女子になったような気分です

 結論をぶっちゃけてしまえば、お金かけて作ったお子ちゃま映画です。ポケモン、妖怪ウォッチな内容。私のような童心のかけらも残ってないおっさんが楽しめる映画ではりません。現実的な考え方が邪魔をして、ファンタジーワールドに入っていけないんですよね~。ほんと、損な性格した自分がイヤです。劇中の魔法や魔法界のシステムに関して、???な部分も多々あったのですが、そんなことも知らないのかよ!とハリポタファンの皆さまに無知を叱られそうなので、疑問点は列挙しないでおきますひとつだけ、でも教えてください!ニュートって魔力であちこちにワープできるのに、どこでもドアみたいにトランクで移動できるのに、どうしてイギリスから遠路ニューヨークまで、わざわざ船に乗って来たのですか?そこだけ知りたいの!

 ファンタジーシーンの映像は圧倒的かつ美しくて、およそ目を驚かすばかりです。昔の稚拙な特撮とかに比べると、まさに魔法のような技術の進化です。魔法動物の動きとか、CGなんだけどリアルでスゴいな~と感嘆。魔法動物大暴れとか、NYパニックとか、何だかジュラシック・パーク、ゴーストバスターズみたいだった。
 ファンタジーが苦手ということもあるのですが、登場人物たちにあまり魅力を感じられなかったのも、映画にハマれなかった大きな理由かも。まず、主人公ニュートが…よく考えたら彼って、とんでもない大迷惑な危険人物ですよね~。魔法動物…ファンタスティックビーストと言えば聞こえは可愛いが、はっきり言ってモンスター、化け物をボロいトランクに詰め込んで、不用意にバラまいたり。ペットの管理ができてない、最近問題になってる無責任飼い主じゃん!ドーベルマン反町も真っ青です。大都市に危険物持ち込み、それによってパニックや不安を引き起こすとか、ニュートがテロリストに見えてしまいました。ニュート含め、魔法界の人々も人間にとっては大迷惑な存在に思えた。人間は危険、怖い、とか言ってたけど、あんたらのほうがよっぽどヤバいよ!9・11どころじゃない破壊行為にドン引き。あれで死人が1名だけだなんて、ありえん!魔法で元に戻して記憶消せばいい、という安易な解決にも納得できなかった。
 ニュート役は、「博士と彼女のセオリー」でオスカーを受賞、「リリーのすべて」も強烈だったエディ・レッドメイン。

 こだわりが強いオタクっぽいインテリ、ちょっと浮世離れしたフワフワしたニュートのキャラは、ホーキング博士やリリーと共通していてました。上品で優しそうだけど、常人とは異なる世界を見てるような目つきとか、青白い不健康そうな窶れ顔とか、エディって何か怖いんですよね~。童顔で若く見えるけど、やっぱどこからどう見ても若者ではないエディ、ニュートって原作では何歳なのかは不明ですが、もうちょっと若い俳優のほうが適してたかも?
 私はエディasニュートよりも、断然コリン・ファレルasクレイヴスのほうが好き!ハリポタ完全無知なくせに、この映画を無茶を承知で観たのは、コリンに会いたかったからです♪

 魔法界の司法長官?みたいな身分で、何か企んでる怪しい役。コリンもこういう役、するようになったんですね~。痩せてヒゲなしだと、若く見えます。黒い衣装も似合ってて素敵。魔法を使うシーンも、エディよりカッコよかったです。嬉しかったのは、クレイヴスがそこはかとなくゲイっぽい、ていうか、ゲイの男の子をたぶらかし利用する悪い色男っぽかったこと。

 ある重大な秘密を抱えてる青年クリーデンスを、優しく甘く、時にドSな態度で手なずけるクレイヴス。クレイヴスを信頼し、ほとんど恋してるような美青年クリーデンス…クレイヴスの、ほとんど色仕掛けに近い篭絡ぶりが、なかなか萌え~でした。ラストの二人の決裂も、ほとんどゲイカップルの痴話喧嘩。クリーデンスを上手く騙し通せなかったせいで、とんでもないことになってしまいましたねクリーデンス役のエズラ・ミラーの、どよよ~んとしたネクラぶりとオカッパ頭も、なかなかのインパクトでした。

 ラスト、悪の黒幕役で大物スターが登場してビツクリ!かつては超絶男前で、私も大好きだった彼ですが、今ではすっかりキワモノなおっさんと化してしまい、とうとうハリポタ映画の悪役…まさに第二のミッキー・ローク。次回から、本格的な登場なのでしょうか。そうなると、コリンはもう出ないってことになりますよね?なら、この新章シリーズも、これで観おさめになりますわ

 

誘惑のアンドローラ

2016-07-20 | イギリス、アイルランド映画
 「エクス・マキナ」
 世界最大のインターネット会社で働くプログラマーのケイレブは、めったに人前には姿を現さない社長ネイサンの山荘に招かれるという幸運を掴む。山荘はネイサンの研究施設で、そこで彼は高度な人工知能を作り出すことに成功していた。女性型ロボットのエヴァに、ケイレブは魅了されていくが…
 「リリーのすべて」でアカデミー賞助演女優賞を受賞、マット・デーモンの「ジェイソン・ボーン」のヒロイン役に抜擢されるなど、今や映画界最旬の女優アリシア・ヴィキャンデルが、美しき人工知能ロボットを演じて話題になった作品。
 日本で観られるアリシアの出演作はほとんど観ている私ですが、この映画の彼女が今までで最も美しく可愛いかったかも!アリシアって、可憐だけど基本は地味子ちゃんじゃないですか。なので、華やかなヒロインとかセクシー美女役なんかされると、ちょっと違うのでは…という違和感が否めないのですが、今回のアンドロイド役は、彼女のシンプルで純朴な美しさが活かされていたように思われます。
 少女のようなあどけなさ、危うさ、はかなさで、俺が守ってやらねば!と男の父性本能を掻き立てたかと思うと、何を考えているのか分からない謎めいた微笑や、意味深な沈黙で男を不安にさせたり、挑発とも誘惑ともとれる言動や風情で男の欲望をもそそるエヴァを、寡黙で無表情ながらも蠱惑的に演じてるアリシアです。男たちを翻弄し破滅へと導くエヴァは、ロボットながら立派なファムファタールでした。映画史上に残るユニークかつ魅惑的なヒロインといっても過言ではないのでは。

 いかにもロボット、な演技ではなく、限りなく人間だけど、ちょっとした仕草などで表す機械仕掛けっぽいニュアンスも、なかなか見事なアリシアでした。ロボットなコスチュームは、マシン的でありながらどことなくエロくもあって。人間の服を着るシーンのアリシアも、すごく可愛らしかった。彼女にはやはり、ゴージャス系よりもシンプルで清楚な衣装が似合いますね。オールヌードシーンも大胆かつ可憐でした。相当の女優魂が必要な難役を演じのけたアリシアは、やはりあまたいる同世代の女優たちとは十把ひとからげにはできない存在です。エヴァ役を綾瀬はるかや石原さとみにやれといっても、演技力的にも事務所的にも絶対ムリでしょうし。
 神をもおそれぬ科学の進歩は、人間の思い上がりなのでしょうか。そのしっぺ返しのようなラストの惨劇に戦慄。人工知能なんて、ほんとに必要なのかな~。いつか人間を亡ぼすことになる本末転倒な未来が訪れそう。それにしても。世界のどこかには、人知れず高度な人工知能を作り出した秘密の研究施設って、あるのでしょうか。もしあるのなら、夢のようでいて、空恐ろしい…
 エヴァやロボットたちのヴィジュアルや、研究施設内の設備など、視覚効果やセット、メイクがユニークかつ驚異的。安易でチープなCGだらけの映画を見慣れた目には、すごく斬新に映りました。
 実質の主人公ケイレブ役は、「FRANK フランク」でウザい男を好演し、「レヴェナント」にも出演してたドーセル・グリーソン。いい俳優なのですが、ちょっと地味すぎる、ていうか、私好みのイケメンじゃないのが、残念ポイントな映画でした。ふかわりょうに似て見てたのは私だけ?

 ネイサン役のオスカー・アイザックが男前!男の色気、フェロモンが濃ゆい!なぜかいつも半裸で、艶っぽく浅黒い肌とムチムチしたマッチョボディがセクシーでした。一見ひょうひょうと陽気だけど、実はかなりヤバいコワレ人っぽさも薄々と醸してる演技が秀逸でした。あの社長、かなりの狂人、変質者ですよね~。まさに天才とアレは紙一重、頭が良すぎるのも不幸だわ。彼が美女メイド?のキョウコとディスコティックに踊るシーンが、シュールでカッコよかった!ダンス上手だな~。
 あと、美しい自然に囲まれた山荘が、リッチかつオサレで素敵だった!あんな別荘で休日を過ごしてみたいな~。

45年目に亀裂

2016-06-13 | イギリス、アイルランド映画
 「さざなみ」
 イギリスの田舎町で、平穏な暮らしを営む熟年夫婦のジェフとケイトは、週末に結婚45周年記念のパーティを控えていた。そんな中、ドイツからジェフに1通の手紙が届く。それは、ケイトの夫への愛や信頼を揺るがすことになるのだった…
 すごく静かで淡々とした内容、展開なのですが、不思議と睡眠誘導されませんでした。何でもないシーンや台詞に、何か予断を許さないような緊張感がピリピリと漂っていたからでしょうか。不安や嫉妬、不信に襲われたケイトが、ギリギリまで抑制しながらもつい言ってはいけないことを言ってしまいそうで、してはいけないことをしてしまいそうで、こっちがハラハラしてしまう、みたいな。揺るぎないものと信じ切っていたものが、実は脆く壊れやすいものであり、この世に確かなものなんて何ひとつないと悟ってしまう絶望。小さなひび割れが、どんどん大きく広がっていって、ついには粉々に砕け散ってしまうのですが、もうイヤ!離婚!と感情にまかせて怒ったり泣いたりできないケイトの理性、知らぬ間に夫婦を雁字搦めにしていた結婚45年という長い年月が重苦しかったです。

 ケイトとジェフは、まさに理想的な熟年夫妻だったのに。静かに互いを思いやって寄り添って生きてる姿が、結婚ってうまくいけばこんな風に優しく静かな境地に到達できるんだな~と、憧れさえ抱いてしまったのですが…ケイトとジェフに子どもがいたら、また違った話になったんだろうな~。子どもがいたら、夫が元カノのことで揺れる想い~♪by ZARD でも、勝手にしろ!と冷笑スルーできたでしょうに。夫への愛しか拠り所がなかったことが、ケイトの悲劇です。いくら夫とはいえ、一人の男に固執してしまうのは不健康かもしれない、と思いました。愛することは尊いけど、愛しすぎるのはイタい。私は100%で愛してるのに、夫は60%でしか愛してくれてなかった、と気付いたら、確かに悲しいし憤りも理解できる。ケイトは繊細で感受性が強すぎた。鈍感で図太いほうが、傷つかず幸せになれるのかもしれません。
 ケイト役は、ヨーロッパ映画界のレジェンド女優シャーロット・ランプリング。御年70にして、彼女はこの映画で初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。

 大げさで暑苦しい大熱演ではなく、抑制のきいた繊細で自然な演技が素晴らしいです。冷静沈着に見えるけど、今にも精神のバランスを崩しそうな、いや、すでに崩れてるのかもしれない?と観る者を不安に陥れる表情、雰囲気が、まさに女の中で轟く阿修羅を思わせて沈痛、かつ怖くて引き込まれます。ハリウッドや日本のアンチエイジングに必死すぎる熟女女優と違い、顔のシワもタルミも隠そうともせず、あるがままの堂々としたナチュラルさが、クールでニヒルな内面を表しているようでカッコいい。もう老女といっていい御年なのに、夫とちゃんとセックスもしてるという老いさらばえない現役女な設定も、ランプリングおばさまらしかったです。それと、スタイルがいい!細い~!特に足!でもエクササイズで必死に保ってる感ゼロ。あくまで天然っぽい美。若い頃から今に至るまで、巨匠名匠や気鋭の若手監督に作品を捧げられる存在であり続けるランプリングおばさまは、まさに女優の理想形ではないでしょうか。

 ジェフ役の名優トム・コートネイも好演。優しく穏やかで、おっとりのんびりしたジェフは、一緒にいたら気疲れしない、癒される存在だろうな~と思わせる好々爺なのですが、どうしてどうして、なかなか難しい、めんどくさい爺さんなのが怖くて笑えた。昔の女>妻、ということを、イヤというほどケイトに思い知らすのですよ。でも、ケイトへの愛の問題ではなく、元カノのことで心が少年返りしてしまい、それが老いた現在の自分と突然折り合いがつかなくなって、なすすべもなく狼狽えてしまう…というように私には見受けられました。そういう気持ちは、私にも何となく理解できます。フワフワと浮世離れした天然キャラが残酷なジェフを、トム・コートネイが可愛いボケ爺さんみたいに演じてました。
 結婚記念パーティでも、キメキメにキメた気合いの入りすぎなドレスアップではなく、シンプルかつエレガントなケイトのファッションセンス、見習いたいです。あと、寂寥感がありつつ静謐な田舎の風景が美しかったです。早朝の散歩が気持ち良さそうでした。夫婦の飼ってた大型犬が可愛かった!何かブラッドリー・クーパーに似てた。ブラパってやっぱ犬顔だよな~と、あらためて思った。
 イギリスの俊英アンドリュー・ヘイ監督が、まだ40そこそこの年齢だからか、熟年夫婦の話なのにどこか瑞々しい感性も映像や演出に感じられました。カミングアウトしているヘイ監督の「ウィークエンド」というBL映画も、ぜひ観たいものです。

ヴァージンクイーン秘話

2016-05-24 | イギリス、アイルランド映画
 ヤマモトさん、という女性から電話がありました。
 ヤマモトさん?ぜんぜん心当たりがない。
私『もしもし…お電話かわりました』
ヤマモトさん『松ちゃ~ん?!うち、うち!』
私『え…あ、あの…すみません、あの、どちらのヤマモトさんでしょうか』
ヤマモトさん『何ようるんね~。うちよ!うち!』
 オレオレ詐欺ならぬ、ウチウチ詐欺?!不安に襲われ、狼狽するばかりの私。
ヤマモトさん『○○小学校で同級生じゃったヤマモトよね!』
 え!小学校の同級生?!えらい遠い昔じゃのお~。三日前のことさえよく思い出せない私なのに…
私『え、あの、すみません…あの…』
ヤマモトさん『去年ゆめタウンで会うたじゃろうが!』
私『え、そうなんですか?すみません…』
ヤマモトさん『こないだAちゃんと話しょうって、松ちゃんに会いたいね~とかAちゃんもよおったけん、今度ごはん食べん?動物病院のO川くん覚えとる?O川くんも松ちゃんに会いたいよおったよ~。じゃけえ、明日!明日ヒマ?』
私『え?あ、あの…明日はちょっと…』
ヤマモト『じゃあいつヒマなんね!』
私『さ、さあ、ちょっと分からないです、まだ予定が…』
ヤマモト『ほいじゃあ、分かったら電話してや!』
 と、ほぼ一方的にヤマモトさんは喋って電話を切ったのでした。
 当惑、困惑するばかりの私。ヤマモトさんもAさんもO川くんも、覚えてない(汗)。仲が良かった子たちからの連絡ならともかく、記憶にない遠い昔の人たちから急に誘われて、ホイホイと乗れないです。何で私?!何で今頃?!ひょっとして…?!と、用心深すぎる私はあらぬ疑惑まで抱いてしまいます。私はヤマモトさんたちに会うべきなのでしょうか…

 「エリザベス」
 16世紀のイギリス。姉であるメアリー女王に謀反の嫌疑をかけられ、ロンドン塔で処刑を待つ身となってしまうエリザベス。しかし、女王が急死したため、混乱の中エリザベスが王座に就く。宮廷内の権力闘争と諸外国との国際問題に、エリザベスは敢然と立ち向かうが…
 TVシリーズ「THE TUDORS 背徳の王冠」の続きっぽい(同じ脚本家?)な内容で、TUDORSファンには嬉しい映画。陰謀渦巻く宮廷時代劇、大好物なんですよ。中世イギリス王室の、血で血を洗う血なまぐささ、荒々しい権力闘争が好き。tudorsほどナンデモアリ、お色気満載ではありませんが、お花畑な日本の大河ドラマとは違って、色と欲がほどよく絡んだ大人も楽しめる時代劇です。
 きらびやか、ゴージャス、とはちょっと違う、質実剛健ながらも美しいドレスや室内装飾とかも目に楽しい。王位をめぐって百鬼夜行な陰謀策謀、暗闘が繰り広げられるのですが、この時代のイギリス王室といえばの宗教問題が、やはり日本人には不可解で怖いです。宗教とか信仰の名のもとに、神も仏もない陰惨無残な殺し合い。暗殺者になる僧侶とか、暗殺命令をくだすローマ法王とか、真っ黒すぎる聖職者たち。おなじみの斬首や火あぶりも怖すぎる。汚い手段で強引に勝ち取った権力の脆さも、一寸先は闇すぎ。栄耀栄華と紙一重な破滅が怖いです。あの時代の王室に生まれなくてよかった!と心の底から思います。
 数々の危機を乗り越えて女王の座につき、大英帝国を統べるエリザベスですが、ちっとも幸せじゃないところが哀れ。一瞬も心安らぐことなく、常に死と隣り合わせ、信じられる者よりも疑わしい者のほうが多い王族や臣下、押し付けられる政略結婚etc.鋼のような精神じゃないと、とても勤まりません。暗殺されたり処刑されたりする前に、ストレスでボロボロ、ノイローゼになって狂死しちゃいますよ、フツーの女なら。その聡慧さ、剛毅さで敵や問題に打ち克ち、世界最強の女帝として燦然と歴史に名を残したエリザベス1世ですが、運もかなり彼女の味方をしたのでは。際どい所で助かったり、良き参謀にも恵まれたり。でも彼女の生涯は、果たして神の祝福を受けたものなのでしょうか。大きすぎる犠牲を払っての栄光、その重苦しさと虚しさが、女として、人間としての普遍的な生き方、幸福を捨てて、国家との結婚宣言をする悲壮な白塗りメイクに、不気味に悲壮に表れていたように思われます。ある意味、乞食に生まれるよりも、女王に生まれるほうが悲惨で不幸。
 エリザベス1世役は、2度のオスカーに輝く当代一の大女優、「キャロル」での好演も記憶に新しいケイト・ブランシェット。

 この頃からすでに、貫禄と威厳ありすぎなブランシェット姐さん。生半可な男など勝ち目なしな男っぽさです。怒鳴ったり決然と奮い立つ時の表情は、まさに鬼女の迫力。不屈の女帝役だなんて、まさに彼女のためにあるような役。見た目も役も男らしすぎて、恋人とのロマンチックなラブシーンとか悲痛な決別シーンとか、ぜんぜん甘美さや切なさがないです。男に甘えたり頼ったりする姿など、まったく想像できないブランシェット姐さんです。
 エリザベス女王の恋人ロバート・ダドリー役、ジョゼフ・ファインズが男前!

 兄レイフは薄口で乾いた冷徹な感じですが、弟ジョゼフは濃いめでウェットで色っぽい。愛人とか男妾って役にピッタリな風貌。フェロモンだだ漏れな貴公子ぶりに、女王じゃなくても危険なアヴァンチュールしたくなります。情熱的でワイルドな風貌ですが、宮廷での所作やダンスなど優雅で気品があって、さすが英国俳優。同年の映画「恋に落ちたシェイクスピア」での好演も忘れがたいジョゼフ、最近お見かけしないのが残念です。
 その他の出演者も、シブい実力派のメンツがそろってます。女王の辣腕参謀ウォルシンガム役は、パイレーツシリーズなどの名優ジェフリー・ラッシュ。すごくカッコいい役で、そのせいか見た目もカッコよく見えた。女王の政敵ノーフォーク卿役、クリストファー・エクルストンも好きな俳優。彼も最近とんと見なくなったな~。 エリザベスと婚約するフランスの王子アンジュー公役のヴァンサン・カッセルが、ハイテンションな怪演。クスリやってんの?なラリパッパ言動や、変態な女装!とか笑えた。スコットランドを支配しエリザベスと対立するメアリー・オブ・ギース役は、フランスの大女優ファニー・アルダン。威風堂々でクールな悪女っぽさがカッコよかったけど、あっけない最期!
 あと、007前のダニエル・クレイグも出演してます。

 さすがに若い!可愛い!ローマ法王の命を受けて、エリザベスを亡き者にしようとする僧侶役。the tudorsでも、暗殺僧侶って出てきましたね。都合の悪い者は殺してもOK!なところが、宗教って怖いな~と思います。坊さんにしては屈強そう強靭そうですが、地味でストイックな雰囲気は役に合ってました。裏切り者を撲殺するシーンとか、狂気じみてて宗教き○がいのヤバさが出てました。007のように、拷問シーンもあり。
 あと、スペイン大使役で、the tudorsでクロムウェルを好演したジェームズ・フレインが出てるのも、the tudorsファンには嬉しい。フランス大使役のエリック・カントナは、ゴツすぎてマフィアの用心棒にしか見えません。でもカッコいい!
 続編の「エリザベス:ゴールデンエイジ」も観ねば♫

どうぶつ奇想天外!

2016-04-29 | イギリス、アイルランド映画
 「ロブスター」
 独身者は身柄を確保されホテルへ送られ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ動物に変えられてしまう世界。デヴィッドはホテルを脱出し、独身者が潜伏する森へと逃走するが…
 何だろう、すご~く独特というか、ヘンな映画でした。いちおう近未来もの?人間が動物に変えられてしまうというSF?なのですが、ファンタジックなシーンは皆無。どうしてこんな世界になってしまったのか、いったいどういう社会システムなのか、詳しい説明もほとんどなし。え?はあ?な設定、展開。いわゆる不条理もので、納得のいく筋の通ったストーリーやキャラじゃないとダメな人には、受け入れることができない意味不明映画かもしれません。かくいう私も、どちらかといえばワケワカメ系映画は苦手なのですが、この映画は不思議なテンポとムード、そこはかとなく笑えるシーンの多さで、かなり楽しめました。大真面目にトンデモないことしたり、深刻なのに滑稽な雰囲気が流れたり。非道いイタいシーンが笑えるようになってたのが、結構ツボだったかも。ホテルのメイドがデヴィッドのズボンを脱がして下着越しに性器グリグリとか。マスタベーション禁止令を破った男が、罰としてトースターの中に手を入れられてギャー!とか。飛び降り自殺した女が断末魔のうめき声をあげてるそばで、デヴィッドが女にモーションかけてたりとか。シュールなシチュエーションや間の取り方が、笑いを誘いました。犬が蹴り殺されたり、ウサギが皮剥されたり、動物好きな人には正視に耐えぬ残忍シーンが。かなり毒と闇があるブラックコメディです。

 舞台となるホテルと森が印象的。あんな優雅なホテルで、リッチに過ごしてみたいものです(おかしなルールがあるのはイヤだけど)。森や湖など、自然が美しかった。ロケはすべてアイルランドなんだとか。
 独り身でいると、動物に変えられてしまう社会。いったいどうやって変えるのか、そこんとこも詳細不明で変換シーンもなし。いい年して独りだなんて、人間以下!と言われてるようで肩身が狭い私です私なんか確実に動物化ですよ。でもよく考えたら、もう充分生きたし、この先どうせ待ち受けてるのは孤独死だし、もういっそのこと動物でいいや!なんて思ってしまいました可愛いカワウソさんにしてほしいナ
 主人公のデヴィッド役は、大好きなコリン・ファレル

 え!これがコリン!?と、ファン驚愕のメタボおやじなコリン。特殊メイク?!かと見紛うばかりのデップリんこぶりです。何かサダム・フセインに似て見えたり。役作りで太ったみたいですね。顔もお腹もダボダボなコリンですが、ワタシ的には全然イケてます。顔じたいはやっぱ可愛いイケメンだし、黒々とした瞳の相変わらず美しいこと。松じゅんとメタボコリンだったら、躊躇なく後者選びます。今回のコリンは、すごく静かで抑え気味。紳士的なコリンが新鮮。でも、すごく内気で悲しそうな雰囲気は不変。不幸、不運が似合うコリンが好きです。ラスト、愛のためにトンデモないことをするコリンが、ウゲゲゲ!で悲しいです。
 ホテルの滞在者役で、売れっ子ベン・ウィショーも登場。

 「白鯨との闘い」「リリーのすべて」とこれで、今年もう3本目(「パディントン」での声優を含めば4本目)のベン子さんです。またチョイ役なのかなと思ってたら、白鯨とリリーよりは出番も見せ場もあったので嬉しかったです。彼も大真面目に奇妙で笑えます。すわった目つきのヤバさ、鼻血を強引に出すところが珍妙かつキモい。プールのシーンで、水着姿になるベン。無駄な肉のない、まるで少年のようなほっそりしなやかな肢体は、鍛えまくった筋肉マッチョとは違う自然な美しさ。BL漫画に出てくる男の子の裸みたいでした。コリンとベンの絡みにも、ちょっと萌えました。映画の冒頭、カップルは異性でも同性でもOKなので、どっちにしますかと訊かれたデヴィッドが返答に悩んだり、若い頃に同性とのセックス経験があるとか答えたりしてたので、ちょっと期待しちゃいました

 その他のキャストも国際的で豪華、というよりシブいメンツ。デヴィッドと愛し合うようになる女役は、「ナイロビの蜂」でオスカーを受賞した英国女優レイチェル・ワイズ。森の反逆グループのリーダー役は、働き者なフランス女優レア・セドゥ。007のリアル嫁と、ボンドガールの共演ですね。名バイプレイヤーのジョン・C・ライリーも、滞在者役を好演。ライリーおじさんとベン子のケンカシーンも笑えた。

 コリン~コリ吉やっぱええわ~コリ吉の新作の中では、やはりハリー・ポッターのスピンオフ?映画「ファンタスティック・ビースト」に注目が集まってますね。

 ベン子さんの新作は、トム・ハンクス主演の“A Hologram for the King”です。TVシリーズの“London Spy”日本上陸はまだ?!

プリズンボーイ☆

2016-04-08 | イギリス、アイルランド映画
 「名もなき堀の中の王」
 あまりの凶暴さゆえに、未成年でありながら成人刑務所に収監されたエリックは、すぐに刑務官や囚人たちとトラブルを起こす。そんなエリックを守ろうとする囚人ネヴィル。彼はエリックの実父だった…
 引き続きジャック・オコンネル主演作。この映画のオコンネルくんも、ズタボロ満身創痍、非道い目に遭いまくる可哀想な男の子役です。もう不幸で不運な役しかできないオコンネルくんです。顔と雰囲気が薄幸なので、悲しい役が似合うんですよね。たまにはハッピーな役やらせてあげたいです。
 札つきのワルの悪名通り、ナイフみたいに尖っては~触る者みな傷つけた~♪なギザギザハートで傍若無人に暴れ狂うエリック、ヤバすぎ!あんな恐ろしいガキと関わらねばならない刑務官、ほんと大変!刑務官の股間に噛みついて食いちぎろうとするエリック、まさに狂犬!シャワー室での全裸死闘など、オコンネルくん文字通り体を張った迫真の熱演です。日本の若手男優には、ちょっと無理かもしれない捨て身の演技が圧巻。

 不幸で不運な若者役ばかりなオコンネルくんですが。私は彼みたいな暗くて悲しい薄幸系、好きなんですよね~。チャラチャラしてなくて硬派な感じが好き。孤独で薄幸だけど、ジメジメ湿っぽくなくて、雑草魂なたくましさ、ピュアで素朴そうなところも魅力的。小柄で童顔なので、子どもみたいな可愛さも、痛々しくて切ない。脱ぐシーンが多く、かなり鍛えてるのが判りますが、小柄で細いのであんまりセクシーではありません。

 暴れ狂う姿はヤバいけど、おとなしい時のエリックは純朴で気さくな男の子で、すごく可愛いんですよ。その2重人格っぽさが面白かったです。裏切ったり騙したり怒らせたら命の保障はないけど、手なずけたら、じゃない、友だちになったら誠実で一途な味方なってくれそう。エリックが黒人の囚人たちやセラピストと不器用に仲良くなっていく姿が、微笑ましく温かい気持ちさせてくれます。オコンネルくんの、ちょっと人恋しそうな、寂しそうな表情とか、無邪気な笑顔が、エリックを憎めない可愛い男の子にしていました。

 同じ刑務所にいるエリックの父ちゃんネヴィルが、これまた息子以上の凶暴さ。父子で刑務所だなんて、おいおい~な人たちですが…狂犬エリックも一目置いてる父ちゃんの、息子への愛情がエキセントリックで笑えます。息子のことを愛してる、息子だけはまともになってもらいたい、という気持ちはあふれんばかりなのですが、それがなかなか伝わらない、伝える方法が間違ってる、のが悲しくも珍妙。お父ちゃんも息子同様、悪人ではないけど、荒ぶる激情が病的すぎるというか。エリックが黒人グループやセラピストと仲良くなるのを目の当たりにして、大人げなく嫉妬したり。父ちゃんに愛人(もちろん♂!美青年の囚人)がいることを知って、ショックを受けるエリックも可愛かったです。エリックも父ちゃんも囚人たちも、フツーの会話でもいちいち口汚いのが笑えます。

 セラピスト役は、え?ルーク・エヴァンズ?かと思ったら、キーラ・ナイトレイの元カレとして知られるルパート・フレンドだった。ちょっとシブくなって、昔よりイケてるかも。ワケアリっぽいキャラだったので、オコンネルくんと意味深な萌える絡みとかが欲しかった。せっかく男だらけ、男だけの男まつり映画なのに、基本的には少年ジャンプとかのヤンキー漫画のノリで、腐がニンマリなシーンや設定がほとんどなかったのが残念。
 それにしても。あんな刑務所、絶対イヤだ~!面倒な囚人は、自殺に見せかけて殺そうとしたり。刑務官が非道すぎる!あんなところ、1日も無理!と思いつつ、反抗的にならず秩序を守り、長いものに巻かれておとなしくしてたら、住めば都かも?とも思えたりした堀の中の生活。わりと自由に過ごしてるし(ジムとかあったり、いろんなもの外から手軽に入手してるし)、寒さ暑さや飢えとは無縁だし、孤独じゃないし、ホームレスになるよりは…と、故意に罪を犯す不届き者も多いとか。

 ↑上品で優雅で知的な英国男優ばかりじゃない!庶民派オコンネルくんも好き!

北は無法地帯!

2016-04-03 | イギリス、アイルランド映画
 「ベルファスト71」
 カトリック派とプロテスタント派の対立が激化する北アイルランドのベルファスト。治安維持のために派遣されたイギリス兵のゲイリーは、暴動の中で独り取り残されてしまう。IRAのメンバーたちに命を狙われ、ゲイリーは決死のサバイバルを余儀なくされるが…
 「ブラディ・サンデー」などでも描かれていた、北アイルランドでの暴動市民VSイギリス軍。その激突は、とても現実とは思えない、思いたくない悲惨さ過酷さで慄然、茫然とならずにはいられません。血で血を洗う宗教対立や国際紛争とは縁遠い日本に生まれて、本当に幸せだと心の底から思います。長い歴史の中で培われた敵意や憎悪は、アイルランド人の生活や人生に深く沁み込んでいて、ちょっとやそっとじゃ拭いとれないだろうな~。彼らの怨念や執念、闘志はもはや、生きる糧にもなっているみたい…
 今までたくさん、アイルランドを舞台にした映画を観ましたが…アイルランド=貧乏、というイメージは定着するばかりです。この映画でも、住宅や団地、食事や衣服など、生活水準の低さが否が応でも気にかかります。豊かな国にあるような華やかさ、楽しみが何もないところも、過激な抗争につながっているのでは。鬱屈した不平不満のはけ口として、人々は暴れてるようにも思えて。

 それにしても。アイルランド人って老若男女、ほんと血の気が多い人たちですよね~。すぐプッツンして暴れるし。暴動も、まさにマジで殺す気的。何かに憑かれたようで狂気的。最も怖い、つらいのは、若者、子どもまでも恨みや憎しみに染まって、暴力を正義として肯定するようになってしまってる気風、土壌。ゲイリーと仲良くなるプロテスタント派の男の子(ガキんちょなのに、男気があってカッコいい)や、IRAメンバーの青年ショーン(顔が怖い!)など、狂信的な思想信条ゆえに悲劇的な末路を迎えてしまう。最近のアルカイダにしてもイスラム国にしても。年端もゆかぬ若者たちがテロの被害者、加害者になってしまう悲劇には、ただもう暗澹となってしまうばかりです。
 独り取り残され、阿鼻叫喚の無法地帯から脱出するために戦うゲイリーの悲壮なサバイバルが、サスペンスフルに描かれています。乱闘、銃撃戦、火炎瓶、爆破etc.もうほとんど戦場なベルファスト。ゲイリーが逃げ迷う狭い夜の小路や荒廃した団地は、まるで悪夢の迷宮。71年頃は、実際にもあんな風だったんですね。あんなアナーキーな町、とてもじゃないけど住めない!命がいくらあっても足りんわ。イギリス軍もIRAも一枚岩ではなく、主導権をめぐって錯綜する裏切りと陰謀の複雑さも物語を面白くしています。とにかく、解かり合うとか許し合うという生ぬるさのない、ひたすら傷つけ合い潰し合うことしか頭にないような地獄のエンドレスゲームを、映画だからと気楽にスルーできない今の世の中が悲しいです。
 主人公ゲイリー役は、最近躍進著しい要注目の英国男優ジャック・オコンネル。

 いま大人気のブリティッシュ男子、主流である優美で知的で紳士的なイケメンや男前とは違って、オコンネルくんは庶民的な下町系。貴族社会を舞台にした映画やドラマに出ても、ぜったい小作人や使用人の役です。素朴で少年っぽい風貌、寡黙で内気だけど、内には荒々しさと繊細を秘めた感じが好きです。某事務所のタレントとか、チャラチャラ軽薄で派手な、調子がいい世渡り上手そうな若い男ばかり目にしてるので、オコンネルくんみたいな不器用に一生懸命な、非道い目に遭うのが似合う不幸顔の青年は、返って新鮮で魅力的。心身ともに傷だらけになって戦う姿が、悲壮ながらも躍動感ある若々しさにあふれています。痛めつけられても必死にガマンしてる悲しそうな顔が、何だか虐待されてる子犬みたいで痛々しくも可愛いです。それにしても。あんな壮絶な地獄、サバイバルできても相当なトラウマになるだろうな~。ラスト近く、弟を迎えに施設に来たゲイリーが、対応が悪い職員にドスがききすぎな悪態をつくのですが、ああ心が荒んじゃってるな~そうもなるよな~と同情を禁じ得なかった。でも、あのシーンのオコンネルくん、何かすごくキュンときちゃったわ。

 ゲイリーが施設に預けている弟が、すごく可愛いです。大人にやらされてる感ありすぎな、不自然に演技が上手い子役じゃなくて、自然な素人っぽさに好感。不幸そうな兄弟の、この世ではお互いしかいないみたいな仲の良さが、微笑ましくも哀切で。薄幸で可愛らしい兄弟、ピッタリと寄り添って生きてるだろう数年後の二人を想像し、ちょっと萌えてしまった私は重症な腐です…

 ジャック・オコンネルくんは、アンジェリーナ・ジョリー監督の「不屈の男」や、ジョディ・フォスター監督の「マネーモンスター」など、ハリウッドの大物女傑たちにも人気みたいです

夫が女になりました

2016-03-27 | イギリス、アイルランド映画
 「リリーのすべて」
 20世紀初頭のデンマーク、コペンハーゲン。画家のアイナーは、同じく画家の妻ゲルダに絵のモデルを頼まれる。女性の衣装を身につけたアイナーは、今まで気づかなかった本当の自分に目覚めて…
 世界で初めて性転換手術を受けた画家の実話の映画化。評判通りの佳作でしたが…涙の感動作!とか、腐的な萌え~とは、ちょっと違うんですよね~。触れてはいけない、できれば触れたくないタブーのような性の問題や苦悩を、目の前に突き付けられたかのようで困惑、狼狽してしまう…ワタシ的には、そんな映画でした。日本人って、性的なことに立ち入りすぎることを忌避しがちじゃないですか。なので、性同一性障害の苦悩や苦痛をかなりリアルに描写しているこの映画を観たら、ショックでドン引きする人って結構いるのではないかと…
 昔に比べたら、社会的認知度も高まり、権利も保障されつつあるLGBTですが、実際問題まだまだ道は険しい。特に私が住んでるようなド田舎では、アイナーのように堂々とカミングアウトしたり性転換したりして権利や自由を主張することは、まず無理ですし。劇中のように、LGBTは性的倒錯か精神病と断定され、差別偏見迫害でフルボッコにされますよ。今より理解がなく狭量な価値観や道徳観の中で、苦悩と苦痛を味わいながらも自分に正直に生きたアイナーは、すごく勇敢で幸せな人だな~と感嘆せずにはいられませんでした。

 しかしながら…アイナーって、ものすごく自分勝手で冷酷でもあるよな~と反感も覚えました。私は女なの!女にならなきゃ!と、ほぼ自分のことしか考えてないし、自分のしたいようにするだけだし。偽らず生きるため、生まれ変わるためには、何をしてもいいのかよ。彼に翻弄され傷つけられるゲルダが、可哀想すぎる!目覚めてしまったアイナーはゲルダに対して、おいおい~それはないだろ!?ひどい!な言動しまくるんですよ。特に非道いな~と呆れるやらムカつくやらだったのは、性転換手術を終えてコペンハーゲンに戻ってからのアイナー。ちょっとルンルンすぎ、ウキウキすぎじゃね?と、女になれて浮足立って調子ぶっこきすぎ。ヘンリクとデートしたりゲルダの目の前で彼と堂々イチャついたり、心配するゲルダをウザがる態度など、ふざけんな!と殴ってやりたくなった。思いやりなさすぎだろ。自分本位なのに、いざという時はゲルダに甘えて頼ってばかりな甘さ、弱さにもイラっ!身も心も女になっても、あの甘さと弱さは男のままだなと思いました。
 女のほうが、やっぱ強い。ゲルダを見ていて、心底そう思いました。ゲルダの強さは、超人的ですが。あそこまで気丈に寛容になれる女は、そうそういないでしょうし。夫が突然、女になっちゃうんですよ。想像しただけでも戦慄。フツーなら、即離婚。でも、ゲルダは女になってゆく夫を、献身的に支え守るんだから、頭が下がるどころの話じゃないです。男女の愛を超越した、まるで聖女、聖母のようなゲルダの愛は、悲しくも美しく崇高。アイナーの苦悩よりも、ゲルダの苦悩のほうが痛ましくて。ゲルダが芸術家で、ちょっと男っぽい性格だったのも、二人の関係にはよかったのかもしれません。それにしてもゲルダ…ちょっとした悪ふざけ、軽い変態プレイが、よもや夫の中に隠されてた変なスウィッチを押すことになるとは。彼女は全然悪くないけど、私のせいでと自責に陥る気持ちは、痛いほど解かってほんと可哀想だった。夫の女性化を戸惑いながらも応援しつつ、心のどこかで男の夫を求めてる、忘れられない彼女も、すごく切なかったです。

 この映画、深刻でデリケートなテーマを扱ってるのですが…私だけでしょうか?何か笑えるシーンが多かった。笑っちゃいけないはず、なのに、ここは笑いを狙ってるのかもしれない、と当惑しつつ内心クスっみたいな。アイナーの女物のドレスや下着、化粧に対する恍惚&ハっと我に返る焦りの表情は、リアクション芸人も真っ青の面白さ。夜メイクラブしようとゲルダがアイナーの服を脱がせたら、彼が女物の下着着てたり。さっきまでアイナーだったのに、知らん間にリリーになってたり。変身早っ!で笑えた。あと、女装してるアイナーに男たちが色目使ってくるところ。どっからどー見ても女装オカマかニューハーフなのに、美女と思い込むなんてありえない~。 舞踏会で出会ったヘンリクが、自分が男だと知ってて求愛してきたことにショックを受けるアイナーも、かなり笑止でした。バレてないと思ってたなんて。どんだけ自信あったんだよ。でもまあ、あんな風貌の女性、いないこともないですけど。ジェシカ・チャステインとか
 アイナー/リリーを熱演、いや、怪演したのは、ホーキング博士を演じた「博士と彼女とセオリー」でオスカーを受賞、今年もこの作品で2年連続ノミネートされた、今や英国映画界のホープとなったエディ・レッドメイン。

 いや~エディ、スゴいですわ。堂々たるヒロインっぷりが、チャーミングかつグロテスクで強烈です。もうノリノリで女になりきってましたね。過剰すぎて、女はそこまでしないよ!と笑えるぐらい女でした。やっぱ女じゃないよな~という未完成っぽさが、悲しくも不気味。全裸シーンも多く、鏡の前でポーズをとりながらアソコ(結構デカかった)を…のシーンも、悲壮なはずなのに笑えたわ~。とにかく、日本の男優には絶対できない衝撃的な演技でした。女房に苦労をかける純真な自分勝手夫って、ホーキング博士もそんなキャラでしたよね。
 ゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルは、今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞しました

 最近メキメキ頭角をあらわしているスウェーデン女優のアリシア。すごい美人じゃないけど、親しみのもてる可愛さ、素朴さに好感。苦悩する妻役を、暑苦しい大熱演ではなく、自然に爽やかに演じてた彼女の存在が、一歩間違えたらグロくてエグくなるところだった物語を救っていたように思われます。ラストの、悲しみや苦しみから解き放たれたような、恨みも後悔もなく誰かを愛しきった充足感あふれる彼女の笑顔が感動的でした。彼女の脱ぎっぷりも見事でした。それにしても…この映画の主役は、どちらかといえばアイナーよりもゲルダだったような。「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズは主演女優賞候補で、この映画のアリシアが助演女優賞、というのは???大人の事情?
 リリーに一目ぼれしてアプローチしてくるヘンリク役は、売れっ子のベン・ウィショー。

 ゲイ役でこの安定感、今やベンの右に出る者なしです。舞踏会でリリーをロックオンするヘンリクの熱く静かな視線、知的に詩的なヘンリクの口説き文句、リリーの唇の奪い方が情熱的でロマンティック、なんだけど、相手が女装オカマ、ニューハーフにしか見えないエディなので、かなり滑稽なんですよエディにブチューっとするベンですが。ラブシーンは女優と女装男優とどっちがキツいか、ちょっと訊いてみたいです『どっちもキツいよ!フツーの男がいい』と答えそうですね女として見てほしいリリーと、あくまでリリーが男だから惹かれるヘンリク。性同一性障害と同性愛は違うことを、二人は教えてくれます。ゲイ役を避けずに、むしろ積極的に演じてるベンが好きです。出番が少ないのが残念。
 アイナーの幼馴染の画商ハンス役を、ベルギーの男前ゴリマッチョ、マティアス・スーナールツが好演。

 ゴツっ!デカっ!相変わらずヌオオオ~と偉容なマティアス。とても画商には見えません。リリーとゲルダを見守る善い人役なのですが、ちょっともったいないような気もした。別にマティアスじゃなくても、イギリスあたりのイケメン俳優(マシュー・グードとかサム・クラフリンとか)でよかった役だし。フツーに善い人役にそぐわない、あのメガトン級の重量感と冷酷な目を活かした役を演じてほしいです。
 デンマークの街並みや当時の衣装、インテリアなども、美しく趣があって目に楽しいです。デンマーク行きたい!リリーとゲルダのファッション、例えばスカーフとか、今してもオシャレかも。