天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

『偉大な生涯の物語』で”自分にして欲しい事を他人にしなさい”は孔子”己望まぬ事は他人にしない”と同値

2011-06-07 21:43:36 | 日記
今日の日記は、映画『偉大な生涯の物語』(1965年製作 ジョージ・スティーヴンス監督 マックス・フォン・シドー主演)でユダヤ教の集会所を訪れたイエスが、集った村人に語った言葉『自分にして欲しい事を他の人にもしなさい』のことです。
映画では、聖書に書かれているイエスの布教エピソードを、自らの宗教的な思いを持ったジョージ・スティーヴンス監督が丁寧に判りやすく描いています。
この有名なイエスの言葉は、新約聖書「マタイの福音書7章12節」に書かれています。教条的にイエスの言葉を羅列した聖書では、私は何度読んでみても、彼の真の肉声が伝わってきません。しかし、このようにイエスの言動を正しく映像化することで、キリスト教徒でもない私にも、イエスの宗教的思想をよく理解できました。
以下に、その集会所でのユダヤ教司祭とイエスの宗教を巡る問答を映画から抜粋します。
・司祭『正しい者は悪から離れる 弱い者の道は悪に導く』
・イエス『違う!』
・司祭『誰だね?』
・イエス『ナザレのイエスだ!聖書にこうあるー”我が求めるのは慈悲である 犠牲にあらず”私は言う 仲間が罪を犯したら しかれ!だが悔い改めたら許すのだ!』
・集会の人『善良な人への勧めは?』
・イエス『自分にしてほしい事を他の人にもしなさい!我々の神は救いの神で復讐の神ではない!救いは信仰のみによる 希望は愛からのみ生まれる 叩け!すると門は開く 求めよ!与えられる 信仰を持て!癒されるぞ!信じよ!そうすれば永遠に生きる 心ある神の栄光と共に歩け!』
このイエスの言葉”自分にして欲しい事を他の人にもしなさい”は、約5世紀前古代中国の偉大な思想家・孔子が残した言葉『論語』にも、同じ意味合いの故事があります。
それは、孔子が、弟子の子貢から「何か一言、終身努めねばならぬような言葉はないでしょうか?」と尋ねらた際に語ったとても有名な言葉です。
『其恕乎。己所不欲、勿施於人。(それ恕か。己の欲せざる所は人に施す勿れ)』<論語・衛霊公篇より>
イエスが善行的な意味で「して欲しい」と表現した事を、孔子は悪行的な意味で「欲せざる」と考えて、”それは、思いやりだろう。自分の望まぬことは、他人にしないことだ”と弟子に諭したのです。生きていた時代も場所も大きく違っていても、偉大な思想家の二人は、お互いに人生の生き方に関してまったく同じことを語っていたのです。
しかし、イエスは唯一絶対の神を信奉する高邁な宗教家であり、孔子は「怪力乱神を語らず」と言われた厳格な思想家でした。そして、その違いが二人の最後を迎える死で、はっきりと私達には判ります。
イエスは、ユダヤ教から人心を惑わす異端者とされ、ゴルゴダの丘で磔の刑に処せられてしまいます。添付した写真は、映画で十字架を肩にして刑場に向かうイエスです。
今、この映画を鑑賞して、このイエスと孔子の言葉を、理不尽にも私を劇場から排除した独善的な教義を信奉する応援客に、私は衷心より捧げます。
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