今日の日記は、今札幌別宅で読んでいる辻和子・絵と文『歌舞伎の101演目解剖図鑑・イラストで知る見るわかる歌舞伎名場面』(株式会社エクスナレッジ2020年4月刊)に登場する明智光秀を題材にした『絵本太功記』・『時今也桔梗旗揚』のとても共感した著者のコメントです。添付した写真は、その著書の表紙です。
この著者は、私の大好きな歌舞伎俳優・二代目中村吉右衛門を【深化し続ける最高峰】とその芸風を絶賛しており、私はとても嬉しかったです。そして、紹介している46演目の時代物の中で、明智光秀を題材にした演目(実名の実演は公儀に憚れるので時代や人名を変えている)が、2演目もありわかりやすく紹介しています。以下に、その演目紹介文の一部を引用・掲載します。
(1)光秀の信念に翻弄される家族『絵本太功記』「太十」「太功記」作者・近松柳他合作 初演・1799年:尾田春長(織田信長)を討った武智光秀は、主君への謀反を快く思わない光秀の母・皐月を、偽装し館にやって来た真柴久吉(羽柴秀吉)と勘違いし、思わず槍で刺してしまいます。そして、深手を負って合戦から戻ってきた息子・十次郎は、父を案じながら絶命します、これを見た皐月も、光秀を非難しながら絶命。さすがの光秀も、その場で男泣きします。
(2)パワハラに反旗を翻す明智光秀『時今也桔梗旗揚』「馬盥の光秀」作者・鶴屋南北(四代目) 初演・1808年:本能寺で馬盥(馬を洗う盥)で酒を呑ませるなど光秀をいじめ続けた小田春永(織田信長)が見せたのは、箱入りの切髪。それは昔貧しかった光秀が売った妻の髪で、買ったのは春永の家来。「お前の境遇をあわれんで、臣下に取り立てた恩を忘れるな」という暗示でした。満座の中で屈辱を受けた光秀は謀反を決意します。
歌舞伎の演目は、時代物ではその当時の社会世相を色濃く反映しています。光秀を題材する演目では、その人物を戯作者はあまり好意的に描いていません。母や息子までも、彼の謀反には協力ではなかったのです。また、光秀が妻の髪を売った行為(O・ヘンリー短編「賢者の贈り物」のように妻自身が自ら売ったなら美談になるが、貧困を理由に女性の命と言うべき「黒髪」を無理やり拠出させる)は、他人から冷笑されるべき事です。それを屈辱と感じてしまう光秀は、劇中の人間としてでも、私は全く共感できません。
やはり、伊達騒動を題材にした『伽羅先代萩』「先代萩」の悪役・原田甲斐を主人公にした時代小説を上梓した文豪・山本周五郎が、決してこの謀反人・明智光秀だけは自身の小説テーマにしなかった過去の事実は、とても重いものがあります。
この著書は、とても分かりやすく歌舞伎の世界を紹介(絵と文)しています。歌舞伎座も、来月からようやく再開できそうです。歌舞伎に興味がある方は、是非ご一読を!
この著者は、私の大好きな歌舞伎俳優・二代目中村吉右衛門を【深化し続ける最高峰】とその芸風を絶賛しており、私はとても嬉しかったです。そして、紹介している46演目の時代物の中で、明智光秀を題材にした演目(実名の実演は公儀に憚れるので時代や人名を変えている)が、2演目もありわかりやすく紹介しています。以下に、その演目紹介文の一部を引用・掲載します。
(1)光秀の信念に翻弄される家族『絵本太功記』「太十」「太功記」作者・近松柳他合作 初演・1799年:尾田春長(織田信長)を討った武智光秀は、主君への謀反を快く思わない光秀の母・皐月を、偽装し館にやって来た真柴久吉(羽柴秀吉)と勘違いし、思わず槍で刺してしまいます。そして、深手を負って合戦から戻ってきた息子・十次郎は、父を案じながら絶命します、これを見た皐月も、光秀を非難しながら絶命。さすがの光秀も、その場で男泣きします。
(2)パワハラに反旗を翻す明智光秀『時今也桔梗旗揚』「馬盥の光秀」作者・鶴屋南北(四代目) 初演・1808年:本能寺で馬盥(馬を洗う盥)で酒を呑ませるなど光秀をいじめ続けた小田春永(織田信長)が見せたのは、箱入りの切髪。それは昔貧しかった光秀が売った妻の髪で、買ったのは春永の家来。「お前の境遇をあわれんで、臣下に取り立てた恩を忘れるな」という暗示でした。満座の中で屈辱を受けた光秀は謀反を決意します。
歌舞伎の演目は、時代物ではその当時の社会世相を色濃く反映しています。光秀を題材する演目では、その人物を戯作者はあまり好意的に描いていません。母や息子までも、彼の謀反には協力ではなかったのです。また、光秀が妻の髪を売った行為(O・ヘンリー短編「賢者の贈り物」のように妻自身が自ら売ったなら美談になるが、貧困を理由に女性の命と言うべき「黒髪」を無理やり拠出させる)は、他人から冷笑されるべき事です。それを屈辱と感じてしまう光秀は、劇中の人間としてでも、私は全く共感できません。
やはり、伊達騒動を題材にした『伽羅先代萩』「先代萩」の悪役・原田甲斐を主人公にした時代小説を上梓した文豪・山本周五郎が、決してこの謀反人・明智光秀だけは自身の小説テーマにしなかった過去の事実は、とても重いものがあります。
この著書は、とても分かりやすく歌舞伎の世界を紹介(絵と文)しています。歌舞伎座も、来月からようやく再開できそうです。歌舞伎に興味がある方は、是非ご一読を!