ITSを疑う

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電技審答申「108兆円」の問題点

2004年10月25日 | ITS
先週書いた朝日新聞の記事、経済波及効果108兆円っていうのか何だったのかと、気になったので再び電技審答申をチェックしてみた。

これは1999年2月に出された物で、もう5年以上前の資料だが、不思議な事にITSの市場規模というと未だに引き合いに出されている。

結論から言うと、2015年までの累計ITS関連市場規模は60兆円、経済波及効果を含めて108兆円ということである。

経済波及効果というのは、ある事業が行われる事でそれに関連する業界が活性化し、雇用を創造することでさらに需要が生まれることをいい、産業連関分析手法で算出する。
通常は使わないが、その効果に世論が疑問を抱く可能性がある公共事業(博覧会や箱物)の企画書には何故か必ず登場する指標だ。

とりあえず経済波及効果の妥当性は無視するとしても、純粋に市場規模といっている60兆円自体あやしい。
実は60兆円のうちの約半分は高速料金、ガソリン購入代金など、単純に従来の現金などによる決済からETC等での支払いに移行する金額であり、全く市場を創造しない金額なのだ。

ETCがあるから一つ先の出口まで高速にのろうとか、キャッシュレス決済ができるから沢山ガソリンを入れようなんて事が起きるはずはない。市場規模は支払い方法にかかわらず不変である。

60兆円のうち30兆円の市場は創造されないし、経済波及効果も生まない金額なのである。
これは市場規模という観点からはあきらかに含めてはいけない数字であり、これを含めて算出する事に恣意的な物すら感じる。残りの30兆円についても、かなり楽観的に数字が作られていると思う。

この化け物のような数字に沢山の企業が踊らされているのだ。

参考:同諮問より
「ITS情報通信システムの社会・経済波及効果を明確化することにより、ITSの早期実現・普及に向けた投資・起業の呼び水効果が期待される」

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