ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

エデンの創造

2009-12-09 04:39:05 | ヨーロッパ
 ”Irfan”

 このようなバンドを、どう紹介したら良いのだろうな?ブルガリア発の、風変わりな音を出すバンドなのだが。民俗音楽系プログレとでも呼べば良いのか?2003年作の、これがデビュー作のようだ。

 まずシンセによる重苦しい低音の音像がその場に渦巻く。その中から響いてくる重々しいグレゴリオ聖歌風の詠唱。そして、非常にエモーショナルな響きの女声ボーカルが、イスラミックなコブシを前回にして、グネグネとそれに絡みつくように歌い上げられる。この女声ボーカルの迫力が凄い。ヨーロッパの歌い手とはとても思えない深い土俗性を感じさせて。

 サントゥールの金属的な弦の響きがこれも東方の音階で装飾音をまき散らす。民族打楽器群が乾き切った音で官能的なアラブのリズムを送り出す。砂漠の砂嵐やらラクダにオアシス、などというイメージが目の前を行過ぎる。
 バンドの視線は完全にオリエントの方角に向いているようだ。素朴な民俗楽器と最先端の電子楽器の巧妙な融合。イスラム音楽の大胆な導入。あのマウロ・パガーニの傑作、”地中海の伝説”なども想起させるものがある。

 いかにも東洋と西洋、イスラム教とキリスト教のせめぎ合う歴史の繰り返しだったバルカン半島の国、ブルガリアらしい音楽と思えるが、イギリスにかって、このようなサウンドを志向したバンドが存在していて、彼らはその影響下にあるとの情報も伝わって来ていて、それほど簡単な話でもなさそうだ。どこかに他者の視線を持たねば、このような堅牢な音楽世界を作り上げるのは難しい、との考えもあるようだ。

 ともあれ。この、音楽による架空世界の創造は非常に刺激的な結果を生み出していて、何度も聴き返さずにはいられないのである。




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