”2nd”by Lee Jung Hyun
イ・ジョンヒョン嬢の登場でございます。韓国の女性アイドル歌手の中では異常に濃厚な個性を持ってる子、として私は評価してるんだけど、そんなこと言ったら叱られるかも知れない。
なにしろ我が国では”韓流”の流れで映画女優としても人気のあるジョンヒョンちゃんであり、歌手として日本版のCDも出しているし紅白歌合戦にも出たそうな。映画の美しいイメージのまま、美少女歌手としてイ・ジョンヒョンを認識している人が大半かもしれない。
それにしてもその当時、私は韓国方面にはあまり興味がなく、彼女の日本での活躍を完璧に05逃しているのが今となっては残念でならないのだが。、
それはともかく。そんなジュンヒョンちゃんの、もう10年も前に出たアルバムを突然引っ張り出してきたのは、某MM誌のパフューム特集を読み返していて、おかしくなってしまったから。
そもそもが、かってはエレクトリック・サウンドを”売り”とし、”韓国のテクノの女王”なる異名までとっていたジョンヒョンちゃんは、パフュームの3人組の、いわばテクノの先輩なのであり、ここは両者の比較があってもいいはずだ。
とはいえ。その姿勢の違いは笑っちゃうほどなのである。パフュームの3人はパワフルな、というか生気のある歌い方をしてしまわないように、レコーディングの際には椅子に腰掛け、いかにもロボットかカラクリ人形らしい無表情な歌い方を求められた。
ところがわがジョンヒョンちゃんは正反対、炸裂するテクノサウンドに乗り叫ぶ、吠える、感情のおもむくままと言うか、ともかくリミットいっぱいのシャウトを聞かせ、あるいは無理やり搾り出した低音の濁声による凄みの効いたラップを唸る。
彼女の歌声の後ろで蠢く、こいつが”エジプト風”なのだろうか、おどおどしく土俗的に迫る男たちのコーラスなどは、日本の60年代末期のアングラ演劇やら暗黒舞踏を思わせたりする。どこがテクノだ。いや、この身もふたもなさが楽しいのですねえ、私には。
あ、全体を貫く、ややゲテモノっぽいエキゾティックな演出は、今回のアルバムのテーマが”エジプト”だからだそうです。なんでここでエジプトが出てこなければならないのかはよく分からないが、そんな異化作用をカタパルトに、彼女の奇天烈な個性が炸裂するのなら、聴いてる側としては大いにありがたいのですねえ。
この絢爛豪華な見せ物性、しかもそれを揺らぐことなく演じきってしまうジョンヒョンちゃんのパワフルなパフォーマー根性、私は支持したいです。
とはいえ、これは10年前のアルバム、いつまでも無茶してられないかと思います、彼女も。せめて、入手困難となっている彼女の過去のアルバムがもう少し手に入れやすくなるようにレコード会社にお願いいたしまして、締めの言葉といたしたく思います。
ほかの韓国人アイドル歌手は、誰もかしこも ”似たりよったり” なのがやたら多いですから、イ・ジョンヒョンほど強烈な個性を持ったアイドルって、ほかにいなかったと思います。
でも、その個性を発揮していたのは、2集までじゃないですか。
それ以降は、”ただのアイドル歌手” に成り下がってしまいましたが、4集『I ♥ Natural』は万人向けなので2集と並んで傑作だと思うし、
いちばん衝撃的だったのはやはり、マニア向けの1集『Let's go to My Star』でした。
アレを買った当時はわけのわからん曲が多かったですが、今頃になって改めて聴くと面白いです。
下のビデオクリップでは一部「クレオパトラ」に扮しているそうですが、まるで引田天功(2代目)みたいに見えるんですよね。(笑)
>某MM誌のパフューム特集を読み返していて、おかしくなってしまった
テクノ~エレクトロ・ポップとは言っても、”YMO を代表とする80年代のテクノ・ポップを継承” とか言われてるパフュームとは全然ジャンルが違うし、
ジョンヒョンは、90年代のヨーロッパのダンスミュージック(ユーロダンス)を継承した音ですよ。
以前に、ジョンヒョンがNHK-FMの番組にゲスト出演したときに、「歌手デビュー前にヨーロッパへ旅行に行き、当時流行っていたヨーロッパのダンスミュージックにインスピレーションを受けた」と確かに発言してましたから。
その某MM誌の韓国アイドル特集で、ジョンヒョンは紹介されなかったんですか?
それから、昔からずっと、ジョンヒョンの映画デビュー作「コンニプ」(つぼみ)が観てみたいのですが、
近所のツタヤはおろか、ネットのDVD宅配レンタルにも置いてないんですね・・・。
http://cinemakorea.org/korean_movie/movie/hanabira.htm
それにしても、彼女がいた痕跡さえも残っていないのは、どういうことなのか。日本版のCDが出て紅白まで出たというのに。不思議です。