ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ポップ・インドネシア、潮風に吹かれて

2006-07-29 02:06:35 | アジア


 ”15 Best Slow ”by KIREY

 ジャケ写真を見ると、これがなかなかきれいな女性歌手で、が、アーティスト名も「キレイ」となるとギャグみたいに思えてくるなあ。本名ではないらしいんだけど、日本語の”キレイ”から取った名なのか、それともインドネシア語で何か意味がある言葉なのだろうか?

 実際、1990年代の半ばに女優としてデビューしていて、歌はその後。まあ、いわゆる”歌う映画スター”ってやつなんでしょうか。でも、なかなか素直な歌唱が好印象を残します。

 ポップスというと泥臭いダンドウットが知られるインドネシアなんだけど、これはそれとは別種の世界、爽やかなフォークロックっぽい音楽性で、ちょっと聞いたらインドネシアという国名は浮かんでこないだろう。
 おそらくは赤道直下のかの国でも、冷房の効いている環境で聞かれている音楽じゃないだろうか、なんてのはいい加減な考察だろうなあ。

 これは”ポップ・インドネシア”と呼ばれるジャンルの音楽らしいけど、その中にもいろいろややこしいサブ・ジャンル名があるんで、たまに気が向いたら聞いてみる、なんていい加減なファンには対応不能です。いや、結構な音楽大国ですからね、インドネシア。とか、詳細な説明が出来ない言い訳をしてみる(笑)

 日本で言えば、そうだなあ、若き日の加山雄三がギター片手に海辺で歌いそうな曲想が続いて収められていて、不思議に甘酸っぱい感傷に誘われる。加えて漂う、ほんのり潮の香り(しかも太平洋とインド洋、混合)もエキゾチックで、この季節に聞くのは快感です。

 しかもその奥の奥、音楽の芯が鎮座ましますあたりに、ラテン音楽のセンティメントの気配がする。おそらくは昔、インドネシアの地を支配していたポルトガルの置き忘れたラテンのタマシイが息ついているんじゃないでしょうか。
 こんな音楽、日本人も簡単に作れそうに思えるけど、実際にやってみると味が出せないであろうのは、おそらくその辺に秘密があるのではないか。

 一見、美人女優が歌う軽いリゾート音楽と思える代物にも、そんな具合に人間の歴史は影を落としているってね、この辺もワールドミュージック探求の醍醐味でしょうね。

 以前から疑問に思っていること。この種のポップインドネシアのアルバムって、まあ、おおむね、上に述べたような軽い曲調のものが大半を占めているんだけど、アルバムの冒頭の2~3曲は多くの場合、軽いもの好きな私からすると結構重苦しいマレー歌謡っぽいマイナー・キーのバラード、まあなんと申しましょうか、熱帯版の”津軽海峡冬景色”みたいな歌が収められている。これが不思議なのです。私、いつもこの冒頭の数曲は飛ばして聞いちゃうんだけどね。

 実は、この疑問を書きたくて、この文章をはじめた次第で。どなたか有識者の方、2ちゃんねる風に言えば「教えて、エロい人」ってなるのかな、ご存知でしたらご教示いただけたら幸いです。

 この冒頭に収められている重いバラードが、実はインドネシアのお洒落な人々の本音で、大部分を占める洋風の軽いポップスは本当は見栄で聞いていたりするんでしょうか?それとも、それはそれで普通に楽しんでいるんでしょうか?そういうのもダブル・スタンダードと呼んでいいのかどうか分かりませんが。

 ともかく、なんでこんな2重構造のアルバム構成になっているんでしょう、ポップ・インドネシア。と、まあ、まるで分かっていないくせに紹介文めいたものを平気で書く私なのであった。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。