ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

宇宙のゆりかご

2011-11-06 04:39:03 | ヨーロッパ

 ”Biophilia”by Björk

 え~、今、ビョークの新作、Biophiliabyを聴いてたんですが。面白くてね、何度も続けて聴いちゃった。民族楽器を、音色もフレージングも摸した電子音と絡み合うように、心に湧き上がった気ままなメロディを軽々と発しながら漆黒の宇宙空間を駈けて行くビョークの姿が心地良いんだ。
 この盤のレコーディングのために開発されたと言うさまざま奇妙な楽器がキラキラとさざめき、彩を添える。ビョークの口ずさむあるいは民俗音楽、あるいは現代音楽風の呪文のようなメロディは、むしろここでは”メロディから自由になったメロディ”と聴こえて来る。すべての価値観がその意味を剥がれて空間に漂い出すみたいな、ビョークの幻想宇宙では。

 こうして音を聴きながら「2001年宇宙の旅」あたりをやっぱり連想させるジャケ写真を眺めてると、アイスランド人であるビョークとなにか血縁関係があるのか知らないけど、サーミ民族、あの北極圏に住むスカンジナヴィア半島先住民族の末裔のことを考えてしまう。
 彼らが伝える、古代の祭祀が今日に蘇ったみたいな響きの、歌詞を持たない不思議なボーカリゼーション、”ヨイク”など想起してしまうのだ。朗々と極北の山野に木霊する吼え声は、まさに神々と対話しているみたいな響きを持っている。
 雪と氷に閉ざされた極北の人々は実は、あのくらいに声を張れば時に神々に話の通ずる低い空をこっそり持っているのではないか。

 そしてビョークも、そのような神呼ばいのパワーを、音楽のうちに呼び覚ます術を知っているのではないか。
 なんてヨタを飛ばしたくなるくらい今回、彼女は大宇宙と自由に戯れている。そりゃまあ、彼女らしく、素っ頓狂な音がとんでもないところで鳴ったりはするんだが、それはもう、もともとの個性だから仕方がないね。




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