ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

イエイエなる歌謡曲の畔

2009-11-02 03:42:43 | ヨーロッパ
 ”ゲンスブールを歌う女たち”

 まあ、心酔しておられる方も多いんじゃないかと思います、フランスの無頼派シンガー・ソングライター、セルジュ・ゲンスブール。無精ヒゲにちびたタバコをくゆらしながらヤバい詞をぶちまけるのが、彼の公式イメージ。彼はまあ、普通に見たら貧相でだらしないブ男だったんですが、たいそう女にはもてたんだそうで。
 特に、彼の作った曲は女たちが競って歌いたがったようですな。これは、そんな逸話からゲンスブールの表現者としての側面に明かりをあてようなんて企画盤です。

 有名歌手や女優が、まさにそうそうたるメンバーが顔をそろえ、ゲンスブール作品をそれぞれの歌唱で聞かせてくれます。ミレイユ・ダルク, カトリーヌ・ドヌーブ, バンブー, イザベル・アジャーニ, ブリジット・バルドー, ジェーン・バーキン・・・いちいち挙げて行くのもアホらしいんですが、そんなきれいどころが総出演。アルバム終盤には愛娘のシャルロット・ゲンスブールとのデュエットまで聴かせます。

 まあ、なんともお洒落であでやかな一枚と申せましょうか。プッツン女優としてその名も高いアジャーニの、勝手にあっちの世界に飛んでいってしまいそうなテンションの高さが妙に可笑しい歌もあれば、実にあっけらかんとすべてを歌い飛ばしてしまうバルドーなど、それぞれの個性も楽しめる仕組み。ゲンスブールの提供した曲とアレンジもカラフルにそれらの個性を演出しています。

 とか言ってますが、私はたいしてゲンスブールに詳しいわけじゃない。そもそもフランスの音楽にあんまり興味がもてなくてろくに聴いてないんだから。(その理由は何度が言って来てますね、”フランス音楽を紹介しようとする日本人の権威者連中の態度が胡散臭い”から、興味を持ちかけても、なんか白けちゃうんです)

 そんな話は今回はいいや。

 先に書いたように、自作自演歌手のゲンスブールの過激な表現に心酔しておられる方々も多かろうと思うんですが、ワールドミュージック裏町派の私としてはむしろ彼を、”優秀な歌謡曲作家”として評価したい気持ちがある。このアルバムで言えば中盤、フランソワーズ・アルディの”さよならを教えて”のアダプトからフランス・ギャルの”夢見るシャンソン人形”の作曲へ流れて行くあたりにそれが最高潮に溢れかえります。

 こんな、大衆の下司な本音の水脈のド真ん中を掘り当てるみたいなメロディ創作能力。ある意味下世話な歌謡曲としてのフレンチ・ポップスの優秀な作り手であり、それゆえに私は彼を評価する、と。

 どこまでポーズだったんだか、”次から次にいい女をモノにするブサイクでむさい助平オヤジ”って私生活がついに女房子供に愛想をつかされ見捨てられ、晩年は肺ガンを病み(タバコを片手に、がトレードマークだったからねえ・・・)病院に収容されてもタバコ吸い始めの中学生みたいに医者に隠れて吸い続け、孤独のうちに死んでしまった。考えて見りゃそんな人生も昔ながらの裏町歌謡詩人の伝統にこそ連なるものであったのであろう。

 それにしても・・・今回、この文章を書くために久しぶりにこれを聴いたんだけど、”神様はハバナタバコが大好き”ってのは、こんなに泣ける曲だったっけ?
 あっと、でも下に貼ったのはフランソワーズ・アルディの唄(笑)




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