ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

中華ガムランの駄菓子屋美

2006-11-27 01:38:42 | アジア


 ”Degung Bali・Top Hits Mandarin & Taiwanese Songs”

 以前、この”Degung Bali”シリーズでは、バリ+スンダ風のガムラン・サウンドでコテコテの日本の歌謡曲を演奏した盤を「何をやりたいんだ?」との疑問符つきで話題にしましたが、これもそのシリーズの新作。今回は中国のヒット曲をガムラン・サウンドで聴かせる趣向のようです。

 一聴、”日本篇”のように異様な感触はありません。ガムランの音の中に中華ポップスのメロディは無理なく溶け込み、スムーズに流れて行く。元々、中華方面と東南アジア、文化の基盤にかなり共通するものがあるってことなんでしょう。爽やか、爽やか。

 今回はともかく、ジャケにすべて、”この作品が何であるか、どう受け取ればよいのか”が明記されているんで、分かりやすいです。まずタイトル、”Degung Bali”の上に”ラウンジミュージック”と記されているし、内ジャケには”リラクゼーションのための音楽”とあり、つまりは「なんじゃこれは!」なんて野暮な疑問符は放り出して、昼寝気分で聴いていれば良いわけであります。

 で、「スンダのデグンとバリのガムランの美しいメロディとエキゾティックなリズムを、そして優しい鳥たちの声の響きを、昔々の中国皇帝が後宮の庭でそうしたようにお楽しみください」なんて事も書いてありますな。そういうイメージで作られた盤である、と。なるほどね。そんな甘美な幻想世界は、確かに構築されていると感じます。

 そうそう、ジャケの隅に”Feat;Birdsong”とあり、実際、盤のあちこちに鳥のさえずりの声が収められているんでした。現実世界の鳥たちが盛んに鳴き始める早朝などに聴いていると、CDの中の鳥の声と区別が付かなくなり、ますます不思議な感触にとらわれますな。というか、聴き終えて記憶に残っているのは、その鳥たちの鳴き声ばかりだったりもします。アルバムの本当の主人公は、この鳥たちだったのだろうか?

 それにしても良いジャケ画だなあ。赤を基調とした、昔のメンコとかに描かれていたようなカラフルな駄菓子屋美(?)が嬉しくて、これだけでも持っていたくなるのでありました。