ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ウクレレの木に花咲く

2006-11-04 02:06:17 | 太平洋地域


 ”OHANA - Ukulele Duo - ”by Ohta-san & Herb Ohta,Jr

 これは良いものを聴いてしまったなあと嬉しくなってしまったんで、季節外れもかまわず話を始めてしまうけれど。

 ハワイの日系ウクレレ名人であるオータサンことハーブ・オオタが息子の、やはりウクレレ弾きとして名を成し、すでに何枚かのアルバムも公にしているハーブ・オオタjrと初の競演をしたアルバムである。他の楽器は使われておらず、ただ親子による2本のウクレレが響くのみ。これがなんともホッコリと良い雰囲気の微笑ましい音楽となっているのだ。

 タイトルの”オハナ”には”ファミリィ”という意味があるそうな。これは日本語の”お花”から来ているのか、ハワイのマウイ系の言葉なのかは浅学にして知らない。が、太陽の恵みを受けて健やかに咲き誇る花々のイメージで聞いてしまって、さほど不自然ではないと感じた。

 取り上げられているのは”可愛いフラの手””アカカの滝””サノエ”といったハワイアンの大スタンダードばかりである。それらを二人は、まったく何の邪念も持たずにただ美しいメロディに帰依する伝統音楽の信徒と化して、奏でて行く。

 父親がミュージシャン、その息子もミュージシャン、という人間関係がどのようなものなのか想像も付かないのだが、二人は一個のミュージシャンとして、音楽への帰依の前で、完全に平等の存在となっているようだ。

 片方がメロディを奏でれば片方がバッキングに回る。どちらがどちらなのか、聞き分けるのは難しい。それは二人が没個性なミュージシャンであるからではなく、個性が際立つようなプレイが行われていないからである。ただ素直に、美しいメロディの実現だけに自己を投影して行く、そんな作業だけが、ここでは行われている。

 結果、親子二人のウクレレ弾きはただハワイの土に育つ音楽の花々と化して、永遠の時を過ごすこととなった。その優しさ、温かさはすべての音楽を愛する人々への天の賜物としてここにある。