ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

黒海あたりで

2006-11-01 04:30:15 | イスラム世界


 トルコのポップスといえば、ヨーロッパ側と言いますが、インスタンブール方面発の華麗で濃厚なアラビック・ポップスの世界をまず思い出してしまいますが(つーか、何も思い浮かばない、ターキッシュ・ポップスなどは知らん、という人が普通なんだけど^o^;)ここに紹介いたしまするは、トルコでも黒海に面する方面のローカル・ポップスであります。

 EMINE ; Nazli Yar

 何年か前に知人に、「こんな音楽、聴いた事ない!」と教えてもらった盤なのですが、実際、飛び出してきた音に私ものけぞった。東洋風の奇妙な音階と、それに絡むひなびた味のヴァイオリン、エミネ女史の、アジア的でもありヨーロッパ的でもある、熱情のこもったボーカル、揺れ動く変拍子。いやしかし、私は聞いたことがあるぞ、こんな音楽。

 こ、これはハンガリーのトラッドじゃないか!

 実際、その歌やヴァイオリンの漂わせる荘重でもあり哀切でもある感触は、70年代中頃にハンガリーのトラッドバンド、”コリンダ”あたりが出していたそれに極似しているのです。
 でもこれはローカルながらも”ポップス”ですからね、バックに響くのはナウいクラブで流しても恥ずかしくないような打ち込みのリズム。ジャケ写真では豊満な肉体を誇示するように綺麗なおねーさんが艶然と微笑む。地味やら派手やら。アジアやらヨーロッパやら。

 うわあ、こんな不思議な音楽が「流行歌」として機能しているのか!と世界地図を広げては見るものの、トルコの黒海沿岸地帯なんて閑散とした感じで、何のイメージも浮かばず。ただもうその、近いような遠いような微妙な地理的関係にあるハンガリーと黒海の岸辺を結び、繰り広げられた歴史のドラマを空想してみるのみ、の私だったのであります。