文政11年4月上旬・色川三中「家事志」
土浦市史史料『家事志 色川三中日記』第二巻をもとに、気になった一部の大意を現代語にしたものです。
文政11年4月1日(朔)(1828年)
玉造(行方市)の佐野本益様から『東国闘戦私記』(全7巻)を借りた。読んで初めて自分の先祖の功績がわかった。この書の校合をしてみたいが、多忙ですぐにはできそうにない。
#色川三中 #家事志
(コメント)
『東国闘戦私記』は、正確には『東国闘戦見聞私記』。著者は 皆川広照、 大道寺重祐 という現代風の名前ですが、皆川広照は 1548-1627、大道寺重祐は1639-1730とかなり昔の人。この本、茨城県の常野文献社から1997年に復刻販売されており、現代でも図書館に行けば、手に取ることができそうです。
文政11年4月2日(1828年)
(編集より)色川三中先生、本日は休筆です。
#色川三中 #家事志
文政11年4月3日(1828年)
雨
#色川三中 #家事志
(コメント)
昨日は休筆からのお天気だけ。長い年月日記をつけていれば、こんな日もあります。
文政11年4月4日(1828年)晴
母は利助と共に江戸に旅に行っていたが、本日夜に帰宅。
#色川三中 #家事志
(コメント)
三中の母親が従業員の利助同行で江戸に向けて出立したのは、3月19日のことでしたから、江戸を満喫されたのでしょう。旅から無事帰ってきた母親を見て、三中もホッとしたことと思います。
文政11年3月19日(1828年)
— 断感ろーれんす (@tk23956) March 18, 2023
母が江戸に向けて出立。利助が同行。今回の小遣いは金2両・銭800文とのこと。母親は以前は毎日芝居を見て、歌舞音曲を楽しみ、江戸から籠を乗り継いで土浦まで帰ってきたらしい。今回は慎ましい江戸行にならざるを得まい。#色川三中 #家事志
文政11年4月5日(1828年)
母の江戸土産
・隣り主人には、花かつみ。楊の枝を刺して遣わした。
・伊勢屋には菓子。
・間原には風呂敷紬。
・向かいのおふみさんにはタバコ入れ。
#色川三中 #家事志
(コメント)
昨日江戸旅行から帰ってきた三中の母の江戸土産リストです。
「花かつみ」という言葉は初めて聞きましたが、調べてみると『万葉集』を始め、古くから和歌などに多く詠まれた花だけれども、古来どの植物を指しているのか不明とのこと。それぞれの想いをこめて「花かつみ」の言葉が使われてきたようです。
文政11年4月6日(1828年)曇
清蔵のために与市を惣代との交渉役として遣わした。清蔵は惣代から12両借りて、返せなくなってトラブルになっている。
#色川三中 #家事志
(コメント)
他人の法律上のトラブルに三中が介入しています。好意で無料でやっているのかなと思っていましたが、当時は弁護士法もないので、こういう案件に介入してお金をもらってもよいので、人への奉仕の気持ちもありつつ、金銭的な利得もあるという可能性もあるかなと。日記にはこの点は何も書いていないので、あくまで可能性があるというだけですが。
文政11年4月7日(1828年)雨
井の口屋から屋敷を借りて、井戸を掘ったことがある。井戸かいが残ったため、たたりがあり、病人が絶えなかった。井の口屋からは井戸かいを掘りだすよういわれたが、同意を得て掘ったのだから、そんなことをする理由はない。が、あまりにもうらみがましくいうので、いうとおり掘ることにした。
#色川三中 #家事志
(コメント)
ここでの「井戸かい」が何を意味するのかよくわかりませんが、それによって「たたり」があったと言われては穏やかな話ではなくなります。現代では「たたり」という言葉は聞かなくなりましたが、江戸時代にの人々にリアルに聞こえたのでしょうか。
文政11年4月8日(1828年)雨
せい(妻)が谷田部の実家に行く予定だったが、本日雨のため延期。付き添いのために来た小白村の惣兵衛には、家に泊まっていってもらった。
#色川三中 #家事志
(コメント)
三中の妻せいは実家に帰る予定でしたが、雨のため延期。荷物があるからでしょうか、小白村の惣兵衛さんが付き添いできています。土浦ー谷田部間は、約14キロ。歩けば3時間ほどです。小白村は谷田部村の近く。現在のつくば市小白硲(こじらはざま)と思われます。
文政11年4月9日(1828年)
雨があがり、せい(妻)は谷田部の実家に出立。今月、妻の父親の七年忌があるため。小白村の惣兵衛が付き添い。荷物は従業員の徳兵衛に持っていかせた(徳兵衛は少し先に出発)。
#色川三中 #家事志
(コメント)
妻の里帰りは昨年6月ぶり。今回の里帰りは父親の七年忌が理由になっていますので、なかなか里帰りできなかったのですね。
前回の里帰り
1827年6月22日(文政10年)
— 断感ろーれんす (@tk23956) June 10, 2022
・徳川式部卿ご逝去に伴う鳴物停止は、昨夜限りで解除。延期していた祇園祭は今月24、25日に行われる。
・早朝、せい(妻)里帰り。土産としてくわし(菓子)150文。隣から馬を頼み、店の者が同道。#色川三中 #家事志
文政11年4月10日(1828年)晴
体調不良のため、仕事を休んで家で静かに過ごす。
#色川三中 #家事志
(コメント)
色川三中はまだ20代ですが、体調を崩してこのように一日静養していることがあります。結構、あれこれとやってしまうので過労になりやすい方ですね。