南斗屋のブログ

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地方自治体が財産を無償譲渡する場合の問題点

2022年03月04日 | 地方自治体と法律
(はじめに)
 私人が財産を無償で譲ったり、相場よりも安く譲渡することは自由です(契約自由の原則)。
 しかし、地方自治体では、そのような譲渡には法律上の規制があります。
 自治体が財産を無償譲渡する場合の問題点をみていきます。

(「公益上必要がある場合」)
 地方自治法は、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定しており(地方自治法232条の2)、無償譲渡も「寄附又は補助」にあたると解されていることから(裁判例1)、無償譲渡には公益上の必要性がなければなりません。
 裁判例1は、町内会が地域集会所を建設するため、自治体が建設用地となる土地を無償譲渡したことが問題となりました。
 最高裁は、諸事情を考慮して公益上の必要性を認め、この無償譲渡は適法であるとしました。
 本件では、無償譲渡は、マンションの建設に伴って自治会の会員数が急増し、地域集会所を建設することを助成するために行われて、その目的には一定の公共性、公益性が認められ、また実質的に市の財産が減少してはいないという事情が考慮されたものと思われます(業者からの施設協力金を原資として土地を自治体が購入したという事情があります)。

(議決)
 無償譲渡をする場合は、条例に則って行うか又は議会の議決を得る必要があります。
 地方自治法237条2項には、次のように規定されているからです。
「第238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。」
 ここにいう「議会の議決」には、最高裁判例があり、形式的な議決ではダメで、実質的な審議が必要だとしています(裁判例2)。
「地方自治法237条2項等の規定の趣旨にかんがみれば、同項の議会の議決があったというためには、当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上、当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたことを要するというべきである。」

裁判例1:最高裁平成23年1月14日判決(最高裁判所裁判集民事236号1頁)
裁判例2:最高裁平成17年11月17日判決(最高裁判所裁判集民事218号459頁)

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