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医療観察法上の保護者とは

2021年08月10日 | 刑事関係の話題
 医療観察法の「保護者」について整理してみました。

(医療観察法での保護者とはどのような者か)
 医療観察法には、「保護者」についての規定があり、次の順番で上位の者が「保護者」となります(同法23条の2)。
一 後見人又は保佐人
二 配偶者
三 親権を行う者
四 前二号に掲げる者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者
 この四者が不存在の場合には、規定(23条の3)により市町村長が自動的に保護者となります。
 刑事事件から医療観察法上の入院申立てがされるケースでは、市長を保護者として、対象者○○さんが医療観察法上の入院申立てをされました、つきましては付添人を選任するか否かについて回答くださいというような文書が地方裁判所の刑事部から送られてくるのは、この条文によります。
この裁判所からの通知は、役所の社会福祉担当の方のところに届くことになりましょうが、担当者の方からすると、そのような方について市長が「保護者」になったことなんてないのにと思われるはずです。それもそのはず、保護者という決定などなくても、後見人・保佐人・配偶者又は親権者がいない場合は、市長が保護者になるという規定によって通知が送られてくるからです。
 わかってしまえばなんということもないのですが、裁判所からの通知はこの点について全然説明してくれていないので、医療観察法等にあまり触れたことのない役所の担当者としてはびっくりしてしまうのも無理はありません。
 なお、医療観察法というのは、通称でして、正式名称は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」といいます。裁判所からの通知は、この正式名称しか書いておらず、医療観察法とは書いていませんので、その点も注意が必要です。

(保護者は何ができるのか)
 保護者には、付添人の選任権があります(30条1項)。医療観察法に詳しくない方は、この付添人というのは、刑事事件の弁護人のようなものと認識していただければ十分です。
 保護者は、対象者のために意見陳述をしたり、資料提出をすることができます(25条2項)。
 また、審判期日に出席することも可能です。審判期日には、市長が指定すれば職員も出席可能です(31条6項)。

対象者に入院等の決定がでれば保護者には通知されますし(43条3項等)、対象者のために退院許可の申立てや処遇終了申立てをすることもできます(50、55条)。

(保護者の選任)
 このように保護者には様々な権限が与えられています。
 しかし、先ほど述べたように自動的に保護者となるのは、後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者だけで、それ以外の者(兄弟姉妹や対象者が成人となっている場合の両親)は、自動的には保護者として扱われません。
 そこで、このような方が保護者となることを希望する場合は、裁判所に選任してもらって保護者となります。
 この手続きが、保護者選任の申立てです。
 この選任の申立ては、「家庭裁判所」で行わなければならず、医療観察法の事件が継続する地方裁判所刑事部ではありませんので、注意が必要です。

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