南斗屋のブログ

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実刑と執行猶予付き判決

2007年11月05日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回、判決言い渡しの風景ということで、民事事件と刑事事件とに共通の風景である公開の法廷のことについて書きました。

 今回は、刑事事件の判決について見てみます。

 刑事事件の判決は、裁判官がそのほとんどを読み上げる形で言い渡されます。
 言い渡されるのは
1 刑の内容(主文)
2 被告人がどのような犯罪行為をしたか
3 言い渡した刑の内容をどのような事情(情状)を考慮したか
というようなことです。

 まず、刑の内容ですが、大きく分けると
  「実刑」と「執行猶予付き判決」
に分かれます。
 「実刑」は、言葉どおり、”実際に刑務所に行きなさい”ということで、例えば、既に勾留(身体拘束をうけてること)されている被告人には、

「被告人を懲役1年に処する
 未決勾留日数中20日をその刑に算入する」

というように宣告されます。

 通常の報道では、この、「被告人を懲役1年に処する」の部分だけ報道され、「未決勾留日数中20日をその刑に算入する」というのは報道されません。

 未決勾留日数(みけつ こうりゅう にっすう)というのは、判決がでるまでの間に勾留されている日数です。
 その間の何日を実刑から差し引くのかを裁判所が決めるわけです。

 たとえば、2月1日から勾留されて、4月1日に判決があった場合、2月1日から4月1日まで勾留されているのですから、未決勾留日数は60日になります。
 この60日を全部算入するということは通常はありません。
 通常は3分の1から2分の1くらいのところです。

 この未決勾留日数の算入があるはずなので、「懲役1年の実刑」と報道されていても、そこから引かれる日数がありますので、1年間懲役に服するわけではないということになります。

 「執行猶予付き判決」は、”今後、一定期間犯罪を行わなければ刑務所に行かなくてもいいですよ”というものです。
 例えば、このような形で宣告されます。

「被告人を懲役1年に処する
 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する
 訴訟費用は、被告人の負担とする」

「被告人を懲役1年に処する」というところまでは、実刑判決と同じですが、その後に

”この裁判確定の日から3年間、その刑の執行を猶予する”

という言葉が続くかどうかが実刑と執行猶予付がつくかどうかの分かれ目です。
 先ほど、「執行猶予付き判決」は、”今後、一定期間犯罪を行わなければ・・・”と説明しましたが、この判決例では”3年”というのがその期間にあたります。
 これを執行猶予期間といいますが、この期間の間、他の犯罪を行わなければ、実際には刑務所にいかないということです。

 逆に、この期間中に犯罪を行ってしまうと、執行猶予が取り消しになりますので、
 「懲役1年」
というのが実際に効力をもってきますし、プラス、次に行った犯罪の分まで刑務所に行くということになります。

 

 

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